今日も,大学病院から熱傷患者さんが逃げてこられました。乳児の臀部熱傷で,2日前に杏林大学皮膚科を受診し,そこでは「これは白くなっているからV度熱傷だ。皮膚移植しないと治らない」と説明されたそうです。どんなにひどいヤケドなのかと思ったら,これがもわず失笑しちゃうくらいちっちゃくて浅いヤケドなんですよ。だって,女性の小指くらいの幅で,長さも2.5センチくらいというミニサイズ。
 杏林大学皮膚科では,このミニサイズの浅いヤケドに植皮するんですね。そりゃあ,儲かるだろうなぁ。いやはや,大学病院というところはすごいところです。
 大学病院はいつも,このサイトにお笑いネタを提供してくれるんで助かってます。これからも「お笑いネタの治療」をお願いします。

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 低温熱傷を自力で治した素人さんからのメールです。
 6月に低温熱傷でメールさせていただきましたが、先日無事、上皮化しました!本当にうれしくて、メールしました。
 6月に植皮か切除縫縮しましょうと言った病院は、やっぱり切らずに湿潤療法でと申し出ましたらOKしてはくれましたが、じゃ後は経過は見るからにすきにして、という感じでしたので、その後は一度も受診せず、夏井先生のサイトで毎日勉強しながら治しました!私はリンデロンV軟膏がよく効きました。約2ヶ月かかりました(受傷からはトータル6ヶ月)が何十年がぶりに夏休みの自由研究した気分でした。
 最初は忌々しかったヤケドですが、先生のサイトをいつでも見られるように、携帯をスマホに買い代え、ついでに私もシャンプーレスに糖質制限を始め、基礎化粧品もやめ、とっても楽しい毎日を送っています。最近スマホ画面の新しい創傷治療のアイコンの“新しい“という文字が“楽しい“に見えてます(^_^)。

 糖質制限は最初の10日くらいが劇的でした。体重5キロ減って、いままでは体重減ってもどうやったって減らなかったウエストも5センチくらい減りました。
 低温熱傷は手術なんてしなくても治るんですよ。手術して治したがるのは医者ですが,患者さんの大多数は手術なんてしてほしくないのです。こういうギャップがあることに,医者は気がついていません。だから,「手術して治しましょう」と言い出した途端に,患者が逃げ出すんですね。

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 Yahoo!の知恵袋で獅子奮迅の活躍をなさっている,【火傷の治療日記】の管理人,鶴田さんからのメールです。彼に救われた人はとても多いと想います。
 昨日の更新履歴で紹介されていた、千葉県の病院で「これは皮膚移植しないと治らない」と言われて逃げて来た19歳の女性とは、こちらのyahoo知恵袋での連続質問をされている方では無いでしょうか?
 
 後の質問で、植皮のための東大病院での治療を勧める回答がベストアンサーになったので、、これはまずいと思って、前の質問に回答を入れさせて頂きましたが、その後すぐにベストアンサーを頂いた上、こんなコメントが入っていましたので、そうではないかと思いました。
「本当に、本当にありがとうございます!植皮のリスクや体験談など、病院では教えてもらえなかったので危うくしかけるところでした。私も母も、今の治療には不安があったため、転院することになりました。大学病院で考えていたのですが、夏井先生の病院に行ってみようと思います!早まらなくて本当に良かったです。心から感謝申し上げます。」
 
 こういうコメントを頂くと本当に知恵袋で回答していて良かったと思います。

 ちなみに先日のこちらのV度熱傷レベルの質問者さんも、私の回答でご自分での治療は無理と判ってそこら辺の皮膚科を受診された様ですが、さっそく植皮と言われた様です。

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 今日の朝書いた「熱傷水疱」についてですが,なぜ水疱膜を取らないといけないかはここに書いたとおりです

 実は,初期の頃は「熱傷水疱はなるべく破らないで,水疱液のみ注射器で吸えばいい」と書いていました。9割の症例はそれで問題なく治ってよかったのですが,1割前後の患者で創感染と高熱が見られました。そこで,感染症例の創部を徹底的に観察したら,全例で「水疱膜の下に濁った水疱液が溜まっていて,その部位に一致して発赤と腫脹があり,圧痛もある」ことがわかりました。一度水疱液を抜いても,また溜まるんですね。そして,溜まった水疱液はタンパク質の塊ですから,細菌にとっては絶好の培地になっていたわけです。そのため感染が起きたことがわかりました。

 となれば,このような感染を防ぐためには,感染源である水疱液の貯留を防ぐしかありません。そのためには水疱膜を全て除去するしかない,という結論になり,水疱膜を残しつつ治療をするという選択肢はありません。だから,水疱膜は残してはダメなのです。実際,水疱膜を全て除去するように方針転換してから,過去5年間で熱傷症例の感染は1例か2例です。

 なぜそこまで徹底するかというと,「従来の熱傷治療での感染例は起きて当然と考えるが,新しい治療での感染は100例に1例でも大騒ぎされる」からです。つまり,従来の治療で5例中1例感染してもそれは普通であり異常事態ではありませんが,新しい治療では100例中1例の感染でも異常事態で,鬼の首でも取ったように大騒ぎされるのです。実際,そのように大騒ぎしている連中はたくさんいます。だから,新しい治療を提唱するなら100例でも1000例でもトラブルゼロにしなければいけないのです。そこまで世の中は要求してくるからです。

 すでに湿潤治療に慣れている先生だったら,治療中に感染が起きてもうまく対処できますが,医者になって初めて湿潤治療を行った熱傷症例が運悪く感染を起こしてしまったら,その医者は恐怖でもう二度と湿潤治療に手を出せなくなります。
 私はそういう医者を一人でも作りたくないし,私を信じてついて来てくれている医者には誰一人,怖い思いをさせたくないのです。私が先頭を歩いている以上,後ろを歩いている多くの医者たちの風よけにならなければいけないし,皆が安全に歩ける道を作らなければいけないのです。それが私の仕事だと思っています。

 繰り返しになりますが,水疱膜を残して治療をしても10例中9例はうまくいきます。しかし,そういう治療をしていると,いつか必ず痛い目にあいます。感染が起きた患者さんには「今まで感染は起きていないのに」という言い訳は通用しないということを肝に銘じて治療にあたってください。

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 大阪で湿潤治療をしているこおりた ひろ整形形成外科クリニックの郡田先生から,熱傷治療について連絡をいただきました。
 患者自身が本年5月に先生に直接電話をして、先生から当院を御紹介して頂いた患者の経過です。治癒致しました。
 昨年12月に受傷だったので、9ヶ月かかりましたがご本人は大満足でした。
 当院に来られるまでは、大量の抗生剤を投与され、結果創部からMRSAが検出され、植皮が必要と言われの負のスパイラル真っ只中でしたので。

 しかし、M3の湿潤療法反対派の方々が可愛そうでなりません。正しい湿潤療法をしてみて、それでも関節拘縮があれば植皮も一考なのでしょうが、最初から植皮をする事になぜそこまでこだわられるのか、全く理解不能です。
正しい湿潤療法を知らない植皮推進派 VS 正しい湿潤療法をしている先生方
 
では、きっと結論はでないんでしょうね。ベースが違うので、討論になりませんので。
 正しい湿潤療法を知っている植皮推進派の先生方が討論に加わって下さると良いのですが。しかし、正しい湿潤療法を知ってしまうと、植皮が必要なくなることに気づかれるでしょうから、正しい湿潤療法を知っている植皮推進派という先生方は永遠に出てこられないのでしょうが。
 つまり、永遠に討論にはならないという事なのでしょうか。
 大学に長くいると世の中の熱傷は重症熱傷ばかりで,それ以外の熱傷を目にすることはなくなります。だから,そういう重症・広範囲熱傷をどうしたらいいのか,という話ばかりしています。当然,興味が有るのは救命できるかできないかです。
 以前,ある大学の救急部で講演したことがありますが,その時ある先生は「この治療は広範囲V度熱傷でも使えるのか。そうでなければ意味が無い」の一点張りでした。

 しかし,大学病院を離れてわかるのは,世の中の熱傷の大多数は「重症でも広範囲でもない熱傷」であり,それらの症例に「救命できるかできないか」という基準を持ち込んでもナンセンスだということがわかってきます。
 これを呼吸器疾患に例を取ると,大学病院の患者は肺癌ばかりで,大学以外の病院の外来の大半は急性上気道炎である,という状況と同じです。大学病院の先生は「急性上気道炎に対しても肺癌の治療をしないといけない」と考えているわけです。肺癌患者しか見たことがないので,世の中に急性上気道炎という疾患があることを忘れてしまっていて,肺疾患といえば肺癌しか思い浮かばなくなってしまったからです。
 世の中に呼吸器疾患といえば肺癌しかないと考えている先生と,世の中の呼吸器疾患の大多数は上気道炎であることを知っている先生では,そもそも討論になりません。

 つまり,これは一種の宗教論そうなんですよ。「皮膚移植という神様を信じている信者の一派」 vs 「皮膚移植という神様を信じなくても熱傷が治ることを知っている一派」 の間の論争ですね。つまり,「イスラムの神様を信じないと人は生きていけないと信じる一派」 vs 「そもそも神を信じなくても人は生きていけると考えている一派」の構図と同じです。

 大学病院で皮膚移植を毎日している医者だって,外の世界では「皮膚移植なしの治療」が広まっていることは知っています。ネット接続すればわかりますから。でも,「植皮(神様)を信じているなんて馬鹿じゃね」と言われると頭に血が上ってしまい,激しく反発します。愛と信仰は本来,不合理なものだからです。理不尽な対象を不合理に信じ,愛するのが人間です。
 不合理な愛に生きている人に,その対象を愛するなと議論をふっかけても意味がありません。イスラム教徒に仏教の素晴らしさを説いたって状況は変わらないのと同じです。

 では,私たちはどうしたら良いのか。
 それは,まだ信仰する神を決めていない若い世代に,信仰する神は一つでなく選択肢があること,そもそも信仰する神がなくても何も困らないことを示すことです。

 ちなみに,宗教サイドとすると,信仰する神様に選択肢が存在することを知られるのは非常にまずいので,イスラム教もキリスト教もユダヤ教も,子供が幼い頃から信仰心を叩き込むわけですね。選択肢があると気付く前に,選択肢を奪ってしまえ,という一種の「囲い込み」作戦です。宗教とは本来不合理で非論理的なものですから,このような囲い込みは往々にして非常に効果的です。逆に言えば,宗教という本来不合理なものだからこそ,この作戦はうまくいっているわけです。

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 8月25,26日に横浜で開催された「外来小児科学会」に出席しました。25日のワークショップにも参加しましたが,そこで「ティファールの電気ポットは危険」という発表があったことを知りました。皆様ご存知の,格好いい電気ポットですね。しかし,これが子どものいる家庭では凶器に変身します。本体と電気コードが一体になっているからです。
 普通の電気ポットでは本体と電気コードは磁石で連結されているだけなので,コードを引っ掛けても磁石が外れて電気ポット自体が倒れることはありませんが,ティファールはコードが固定されているため,電気ポットが倒れて中の熱湯が飛び散ってしまうのです。しかもティファール本体にも「倒れた時に中身が零れないような工夫」は一切なされていないため,通常の電気ポットより危険なのです。これは日本のメーカーでは絶対に考えられない仕様です。
 小さな子供さんがいる家庭では,ティファールの電気ポットは使わないほうがよろしいようです。

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 三重県から手のヤケドの赤ちゃんが受診されました。5月初旬に炊飯器の蒸気で受傷され,三重県内の病院,後に愛知県の病院(熱傷治療といえばこの病院ですね)で治療を受け,5月下旬に皮膚移植を受けています。診察してみると,手掌〜手指にかけて高度の瘢痕拘縮があり,MP関節は60°より伸展できない状態で,既に2度目の手術が必要な状態です。
 ご両親は最近になって湿潤治療について知り,移植された皮膚を剥ぎとって湿潤治療できないか,ということで受診されました。
それは不可能ということを説明しましたが,説明する方も辛いものです。

 仕方ないので,今後,どのような治療(手術)をすればいいのか,それでどの程度の手の機能が回復するのか,何度くらい手術が必要か・・・ということについてご両親に説明しましたが,手術を行った病院の主治医(形成外科医)はそのあたりについてほとんど説明していないようです。
 初対面の私が時間をかけて丁寧に説明し,いつも診察しているはずの主治医がほとんど説明してくれないなんて,ちょっと変ですよね。

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 低温やけどを【火傷の治療日記】管理人のアドバイスで自力で治しちゃいました,というメールをいただきました。いつもながら,【火傷の治療日記】の鶴田さん,グッジョブ!
 初めまして。私は、今年の3月27日に低温火傷を負い「火傷の治療日記」の方にアドバイスを受けながら、病院へは行かず、自分で治療をしていました。
 夏井先生のサイトも散々読みまくり、参考にさせて頂いておりましたので、お礼とご報告にまいりました。お陰様で受傷112日目(7/16)に、全て上皮化完了致しました。
 受傷14日目に創面が壊死組織で覆われ、滲出液があまり出てこなくなり、変化がなくてつまらなかったのもありますが、デブリードマンもしました。後半は、周囲の肌荒れに少し悩まされましたが、普段の生活を送りながら楽しく治療してまいりました。これも、湿潤療法により、殆ど痛みがなかったためですね。

 今は、糖質制限やシャンプー石鹸レスにもハマっています。それらの事をブログで全て公開しておりますので、よろしければ見て頂けると嬉しいです。
   ⇒http://profile.ameba.jp/mamo-ken-8080/
 近々、糖質制限やシャンプー石鹸レスについて、私の身体の変化もメールさせていただきますね。
 「楽しく低温熱傷の治療」というのがすごいです。世の中には「低温熱傷をゲーベンクリームで悪化させて皮膚移植で治す」皮膚科医・形成外科医がはびこっていますから,素人のほうが的確な治療ができています。

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 アメリカ在住の方から「ラップでヤケドを治しました」というメールが届きました。
 このサイトのおかげでやけどを治すことができました。
 6月30日の深夜に、熱湯で左の足背と、左太もも半分、右の太ももに10センチ前後のやけどを負いました。夜中じゅう、水と、冷凍庫で冷やしたタオルを患部に当てて、朝を迎えました。足は、皮がむけたところと、大きいものは4センチくらいの水ぶくれが患部全体にありました。
 現在私はアメリカ住まいで、どんな処置が一般的なのか知らないので、病院へ行く前に治療法を調べておこうとサーチしていた時に、先生のサイトを見つけました。

 今思えばむちゃをしましたが、感染症さえ起こさなければ自分で治せるんじゃないかと思い、焼いた針で水ぶくれをつぶして、取り除ける皮は除去しました。そして、ぬるま湯と洗顔料(石鹸よりしみなかったので)で1日2回患部の周りを洗ってラップを巻き、ペーパータオルで足を分厚く包んで、梱包用テープで巻いた後、レギンズを履いて、仕事に行ってました(デスクワークなのでなんとか乗り切れました)。幸運にもやけど2日目に先生のサイトの手順をフォローしたので、消毒液も最初の夜以外は使わず、ラップのおかげで疼痛以外の痛みもなく、夜もちゃんと眠れました。途中、左太ももを覆っていた3ミリくらいのゼリー状の膜が20センチ近くべろっとはがれた時や、健康な皮膚とやけどのあいだあたりに5ミリくらいのちいさな膿のできものができた時は、もうだめかと思いましたが、そのできものもつぶしながらひたすら洗って、乾かさないようにラップを巻いてました。薬は、以前、漢方のお医者さんから処方されたアトピー性皮膚炎用の漢方薬があったので、それを飲みながら、ビタミンC1000mgの粉末を毎日飲んでました。
 8日目までは傷が乾いてないので、ラップを巻いていましたが、9日目から上皮化が一気に進み、10日目で両もものラップがはずせました。足背も、明日あたりにははずせそうです。

 いちおう、9日目にお医者さんへ行ったのですが、体表6パーセントのやけどのわりには感染もしていず、処置はパーフェクトとほめられました。

 正直恐怖のどん底だったのですが、先生のサイト内にある、患者のみなさんの傷が治っていく写真を見て、自分を励ましていました。
 恐怖のどん底というと、まだ傷が乾いてない時に、会社で
例の朝日新聞の記事を見て、見出しで心がさすがにゆれました。大新聞の一面トップですし。ただよく読んでみると、悪くなった例が糖尿病のお年寄りの傷に2〜3日ラップを巻きっぱなしにしてたから感染、と書いてあるので、それは指示したお医者さんの責任で、療法自体には問題がないと思い直しました。

 なんだかまとまりのない文章で申し訳ありません。医療費がおそろしく高額なアメリカで、最小限の出費で済みました。ありがとうございます

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 例の朝日新聞の記事問題,まだまだ続きます。
 フリー編集者をしております。
 今回の朝日の記事は本当にひどいと思います。

 軽度のやけどに対して素人が行うラップ療法が「要注意」なのか、正しい知識のない医師によるラップ療法が「要注意」なのか。それすら、何回読んでも理解できません。
 トラブルが48例、うち10例が敗血症。一方、54例ではやけどが治る効果が確認された、と。なのに、母数はどこにも書いてないのです(笑)。

 2年前、朝日が似たようなミスをしたことを思い出しました。それは、がんワクチンの研究に対する糾弾記事でした。このときも、あれこれ重箱の隅をつついた挙句、当該研究には無関係の医師個人を名指しで非難しました。
 この件はご存じかと思いますが、経緯を検証した小松秀樹医師の文章が読めます。

 話は変わりますが、こんなエピソードがあります。
 一昨年のハイチ大地震の後、私の知人の医師たちが現地医療支援に行きました。外傷患者がとても多かったため、ラップを巻きまくったそうです。
 あるとき、ある場所で白人の医師団(国籍不明)と協力することになりました。彼らは日本人医師がラップを巻いている姿を見るなり、「何やってんだ!」と怒鳴り込んできたそうです。
 医療資源に乏しい災害時こそ、ラップ療法の特性が生きる場なのに……、

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 新聞業界についての疑問メールです。
 札幌美容形成外科も「行列のできる病院」に仲間入りしたようで何よりです。

 さて、私も
例の朝日新聞の記事に対する疑問をどこかにぶつけたいと思っています。しかし、朝日に送っても握り潰されるだけだと思って新聞業界共通の苦情窓口を探したのですが、見当りません。例えば新聞協会のページも、倫理綱領や声明のような文章や調査データを一方的に掲載しているだけで、記事に関する意見の窓口はありません。知恵袋やOKWaveでも新聞記事への苦情は「2ちゃんねる」にぶちまけろ、といった回答しか無いのを見ると、業界としての公式な窓口が無いのでしょう。

 ところで、同じ内容が記事ではなくて広告として掲載されたら、どうだったでしょうか?
 疑問をJAROに通報すれば、広告主は回答しなければなりません。更に不服があればJAROに第三者機関としての対応を求めることも出来ます。それに比べると記事に対するチェックは甘いと思います。更に、同じマスコミの放送業界にBPOがあるのと比べても、新聞の独善ぶりは際立っています。
 考えてみたら,今時,「苦情窓口」がないのは新聞くらいですね。その意味では極めて特異な業界です。
 でも,新聞業界内部にどっぷり漬かってしまうとそれが「常識」になってしまうのでしょう。まさに,「常識は非常識」です。

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 まだまだまだまだ,札幌美容形成外科の院長ブログ関連のメールが舞い込んできます。
 例の札幌形成外科院長のブログですが、返事は来ないと思うので、朝日新聞にこの様な問い合わせをして見ました。
朝日デジタル7月8日の「やけどに「ラップ療法」要注意 効果の一方、重症例も」の記事について

 7月8日にこの様な見出しの記事が朝日デジタルに掲載されていました。
 私は3年前に、医師には植皮しかないと言われたガソリンの引火による両手の深い火傷を、ここで取り上げられている「ラップ療法=湿潤療法」の病院をネットで見つけて受診して簡単に治療して頂いた経験者です。
 この記事の「ラップ療法」で悪化した症例は、はたして通常の治療では起きない筈が「ラップ療法」が原因で起きてしまったのか、通常の治療でも起きていたのかの検証をされた上で掲載されたのでしょうか?

 この記事を大きく取り上げている、札幌美容形成外科の本間賢一院長のブログによると、このラップ療法を嫌う院長の、同級生である石塚氏が朝日新聞社に勤務されており、その石塚氏にメールしたところ、科学医療部の阿部様へ転送され、この院長に朝日新聞社から連絡が有り、日本熱傷学会「ラップ療法対策特別委員会」での取材がすすめられたとされています。

 朝日新聞社はその子会社である、朝日新聞出版社が発行した「週刊朝日増刊新「名医」の最新治療 2012 2011年 12/10号」のp116には、創傷の治療(湿潤療法)の名医として茨城県の石岡第一病院の傷の治療センター長(現在練馬光が丘病院 傷の治療センター長)である夏井睦医師と、川崎協同病院外科長の和田浄史医師のお二人を紹介する記事を載せて見えますが、ここでは植皮が必要と言われた火傷の患者さんに夏井先生がラップでの治療で綺麗に治った症例が紹介されています。
 また、この記事では「痛みの少ない熱傷治療で5年間の感染率ほぼゼロ」とされていますが、前記「ラップ療法」要注意の記事とは全く逆の内容となっていますね。
 新聞社なのですから、まさしく新しい事を記事にするのが本質だと思いますが、一方的に偏った偏向報道とも受け取られかねない様な記事はいかがな物かと思います。

私も湿潤療法で綺麗に治して頂いた火傷経験者として、札幌美容形成外科院長のブログにも何度も書き込みしていますが、現在炎上中の様で、他の多くの方のコメントと同様、全て管理者の承認待ちになったままです。
 参考までに私の火傷治療経過のブログを「こちらに非公開で良いので返事を下さい」とリンクさせていますが、現在こちらにも返事コメントはありません。

 ちなみに私の火傷の湿潤療法での治療経過のブログです。
 最初の総合病院の皮膚科ではガーゼとクリーム軟膏の治療で、左手は浅達性U度、右手は深達性U度〜V度としてもっと大きな病院の形成外科宛てに植皮のための紹介状を書いてもらいましたが、5日目に夏井先生のサイトを見つけてそこのリストにあった市立恵那病院の太田博彰外科医師の湿潤療法を受けて、23日で簡単に治りました。

 「不確かなラップ療法の危険率」は記事になるのに、こういった事は記事にならないのですね。朝日新聞は変わった新聞社さんですね。
 ちなみに他の新聞社は以前にこれらの様な記事を載せていますので参考にされると良いですね。
 こういった時代を先取りしている新聞は安心して読めますね。
 宜しければ納得出来るご返事を頂けると有難いです。
 きっと返事は来ないと思いますが、こればまたご報告致します。

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札幌美容形成外科の院長ブログに書き込んでも返事が返ってこないため,こちらで掲載して下さい」というメールをいただきましたので,掲載させて頂きます。
 「きっと日本全国に数十人規模で行列を作って承認を待ってる方がいらっしゃるのでしょう」との投稿がありましたが、私もone of them です。このままだと、「投稿番号6番」は永久欠番になってしまうかもしれませんね(笑)
場末の臨床医 より:
あなたのコメントは管理者の承認待ちです。
2012年7月11日 1:22 PM

>傷の痛み、膿(うみ)が出たり、赤くなったりするなど感染の兆候があれば
>他の治療法を考える

 これは、従来通りの治療(例:ガーゼ+軟膏・クリーム)を行ったとしても全く同じことではなかろうかと思います。

 例えば、熱傷の治療中に感染が起きたとします(それまでの治療方法は問いません)。当然のことながら、壊死組織があればデブリドマンを行い、適切なドレナージを行うことが必要です。この場合、「感染の徴候に気づくか気づかないか」「デブリドマンの時期、範囲を誤っていないか」「ドレナージが十分に行えているか」が悪化させないための条件であって、ラップであるかガーゼであるかは本質的な問題ではありません。

 私見ですが、ガーゼ治療で起きる感染は、乾燥によって生じてしまった壊死組織の下層で感染を起こすケースが多いため、デブリドマンが必要な場合が多いように思います。
 また、ラップで起きる感染は、ラップによって密閉が過度に行われてしまい、滲出液が患部で滞留してしまうために起きる感染が多いように思います。

 すなわち、ガーゼだろうがラップだろうが、wetな環境下で壊死組織を作らず、滲出液が適切にドレナージできることが重要ではないかということです。
 ただし、正直申し上げて、ガーゼでwetな環境を作り、壊死組織を作らず治癒させるのは至難の業だと思われます。
 また、ラップで治療する場合には、ラップに切れ目や穴を入れて周囲にドレナージさせることで感染を防ぐことができると考えます。
 もちろん、従来法でも適切な治療が可能なのかもしれませんので、先生のご経験はいかがかとおうかがいしたいところです。

 あとは、治療を担当する医師にとって、どちらの治療法が経過を見やすいのかにかかってくるでしょう。また、治癒するまでの期間や、治癒後の痕が綺麗かどうかという患者の満足度も考慮しなければならない要素です。これに関しては、医師の経験や美意識が関わってきますから、一概に判断はできないかと存じます。

 以上、「ラップだから悪者」「ガーゼだから悪者」なのではなく、どの手段であれば、どんな方法が適切なのかをちゃんと議論する必要があると私は思います。
 先生のご意見を賜りたいと存じます。

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 札幌美容形成外科の院長ブログ関連のメール,まだまだ続きます。
 ラップ療法を叩くお医者さんの話を読むにつけ、夫の母親のことを連想しました。

 夫の母は、論理性や科学性よりも自分の感覚を重視する人です。「清潔好き」と自称し、食器棚の食器も「埃が付く。ゴキブリが這うてるかも」と、使う前に必ず水洗いし、私たちにもそれを強要します。そのたびに食器を拭く布巾は、おかげでいつも湿っています。それで食器を拭く方が不潔ではないかと思うので、やらされるたびにげんなりします。
 テーブルも神経質にしょっちゅう拭くのですが、使うたびに台拭きを干すわけでも洗うわけでもなく(たまに水でもみ洗いして絞って流しの上に置く)その辺に置いたままなので、たぶん雑菌が繁殖しまくりです。
 薄黒く不潔そうな台拭きが気になり、洗って、塩素系漂白剤を探して(トイレの近くにあった)つけ置きしてたら、彼女に怒られました。「トイレの洗剤を台所で使うなんて汚い」「漂白剤は毒だ、台所のものに使うなんて」だそうです。そういう理屈もあるのかと、腹が立つよりも新鮮な驚きを感じました。

 で、本題なのですが、きれいな食器を洗い直すという、無意味である上に事態を悪化させる本末転倒な行為は、なんだか「消毒」に似ているなあと連想してしまいました。
 また、「トイレに使う塩素系漂白剤は汚いので台所で使うものではない」という論理は、「食品用ラップは医療用じゃないから医療用に使うべきでない」(今回の札幌美容形成外科の先生のコメントも去年の日本褥創学会の見解も、そうとしか読めないです)という論理と同じ構造だよね、と思いました。

 田舎のおばあちゃんが非論理的非科学的なのはまあやむを得ないと思いますが、お医者様の思考が同じレベルというのはいかがなものかと思いました。
 本間先生や日本熱傷学会の偉い先生と田舎のばあちゃんが同じ論理構造だと見抜いたあなた,鋭いです。世の中にはこういう「鋭い素人」がたくさんいて頼もしいです。

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 札幌美容形成外科の院長ブログ関連のメール,まだまだまだまだ続きます。
 例の札幌形成外科院長のブログですが、、昨日の「火に油は危険です」の更新記事にも以下の様なコメントを入れさせて頂きましたが、やはり承認待ちになりました。
湿潤療法経験者より
あなたのコメントは管理者の承認待ちです。
2012年7月10日11:15PM

 火に油を注いで火傷をされたのは先生ご本人ではないでしょうか?
 昨日の私のコメントに返事を頂けるととても有難いのですが。

 そしてまた今夜もシャアシャアと新しい記事を更新されていましたが、私のコメントは承認しない癖に、いつもの常連さんのコメントは承認されていましたのでこんなコメントを入れておきました。

湿潤療法経験者より
あなたのコメントは管理者の承認待ちです。
2012年7月11日 10:49 PM

 さくらんぼさんの今日のコメントでは、妹さんの旦那さんのお父さんは敗血症で無くなったそうですが、やはり危険な「ラップ療法」だったのでしょうか?
 そうであればまさしく「ラップ療法要注意」ですよね。

 でも夏井先生の所へ受診されれば夏井Dr信者さんが紹介していた同じゴミ焼きで受傷された「78歳30%V度熱傷の症例」の方の様に、ゴミ用穴あきポリ袋でちゃんと治癒されたかも知れませんね。

 でも今更ですのでさくらんぼさんにはお教えしない方が良いかも知れません。既にこのブログも炎上中だと思いますが、以前紹介した私のブログ以外にも参考になるブログを貼って置きますね。 出来れば早めに私のコメントを承認して頂いてご返事を頂けると有難いです。
 もちろんこれも現在承認待ちです。

 さくらんぼさんもこの私のコメントが夏井先生のサイトで紹介されたのを見て、正しい治療を受ければ良かったなどと後悔されない事を祈ります。
 私の外来には毎日のように熱傷の新患さんが受診されますが,一番つらいのは既に皮膚移植されてどうしようもない患者さんに,「この状態からあなたが望むようなきれいな皮膚にすることは不可能です。皮膚移植する前なら何とかできたのですが」と説明する時です。
 皆さん,「皮膚移植するときれいに治る」という医者の説明を信用して皮膚移植を受け,手術後,こんなはずではと愕然とし,それを医者に行っても「こんなにきれいに皮膚移植してやったのに,何が不満なんだ」と一蹴され,一縷の望みを持って私の外来を受診されているのです。そういう患者さんに「治療法はない。手後れだ」と宣告するのは宣告する側も辛いし,それを聞いて泣き出す患者さんを見ると,こちらも一緒に泣くしかありません。

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 ここ数日,札幌美容形成外科の本間先生だけ槍玉に上がっていますが,実は産業医大の安田先生はそれどころでないクズ医者ですよ,という告発メールをいただきました。
 「このメール,転載していいです」と許可はもらっていますが,あまりに生々しい話なので,情報源が特定できないように固有名詞を伏字にして転載します。
 さて、ここ数日、更新履歴を賑わせている本間賢一先生ですが、医師としては、いいところも知っているだけに、例のブログの記事は、とても残念です。腕がいいのに、もったいないなあと、思います。
 さて、安田先生という名前が出てきて、去年のことを思い出しました。怒りの気持ちを誰かにぶつけたく、メールします。

 〇〇年の〇〇学会での出来事です。〇〇医大形成外科の〇〇医師による「ラップ療法後感染をきたし、治癒に至らなかった仙骨部褥瘡の一例」という発表がありました。
 発表後、すかさず私は、
「opeが成功しなかったのは、ラップ療法が悪いのではなく、創の状態を的確に判断せず、除圧対策も徹底せず、植皮だの、皮弁だのしたからではないか?」
と質問しました。更に、
「確かに、前医で行った褥瘡の治療として、その壊死した褥瘡に、ラップを当てるのは間違いかもしれないと思います。でも、その患者さんのキズが治癒しなかったのは、ラップのせいじゃないと思います。」
会場は演者と私の一対一の応酬になってしまいましたが、当然、悪者はラップと信じている演者は、まるで聞く耳持たずでした。

 問題は、その後です。

 会場を出ると、座長の先生が私の方に来て、
「先生の言ってることは、確かでしょうね。あれは手術が、悪いよ。」
すると、例の安田先生も近寄って来ました。
(熱傷学会で、ラップ療法対策が取られることになった、すぐ後だったのでしょうね。)
〇〇先生
「安田先生も、熱傷のラップでは、これから大変ですね。」
安田先生
「先生みたいに(私のこと)、きちんと創を管理できる人がラップを使うことは、ありだとおもうけど、そうでない人が安易にラップを使って、全身に影響及ぼしている症例があるから、だめなんだよ」
と、ここまでは、黙ってました。

 ところが、
「実際熱傷処置の点数が、高く設定されているのは、いろんな良い材料を使うことを前提としているからで、ラップなんて使うのは、間違いじゃないか?」
 この発想には、開いた口がふさがりませんでした。
 その場で,「誰のための熱傷治療なんだ」と、言ってやればよかった・・・と、自分でものすごく後悔しました。

 市内の皮膚科開業医から時々、やけどの患者さんが当院へ逃げてきますが、聞くと、毎日通院して高価な被覆材を交換したり、でなければ、安い軟膏を塗って、ガーゼを当てていたり。どう見ても、熱傷処置代を稼ぎたいだけのように思える通院指示が多いです。

 私の治療法は、病院の収入には貢献してないかもしれませんが、逆に患者さんの数が増えてくれれば、それでよし!と思っています。違いますかね?
 このエピソードが事実だとすると,産業医科大学形成外科准教授の安田先生は熱傷患者を[金づる/メシの種]としか見ていないことになります。偉い人は発想が違うなぁ,と思います。
 もちろん,さもしいというか卑しいというかケチ臭いというかみみっちいというか・・・そういう気もしますけどね。

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 さらに札幌美容形成外科のブログについて「工学屋」さんからのメール。
 私も6番目投稿者で承認待ちです(笑)。きっと日本全国に数十人規模で行列を作って承認を待ってる方がいらっしゃるのでしょう。しかし思うに私の投稿も含めて皆さん、おそらくずっと承認待ちだと思いますよ。

 院長先生は当然このHPもご覧になったでしょう。祭り状態も把握されてらっしゃるでしょう。投稿を削除すると密告されるし、掲載するには科学的な反論が必要。いちいち反論するほど時間もなければ知識もない。となれば無視しかないでしょうね。
 別に無視されることは構わないのですが、間違った治療を続けることは問題です。形成外科医は火傷治療のスペシャリスト。ぜひ、この先生にも本物のスペシャリストになっていただきたいものです。

 私はお腹に大きな火傷の跡形があります。小さいときストーブで焼きました。幸いというかなんというか、両親はなんと幼児である我が子が大きなやけどをしたのにもかかわらず、病院に連れて行きませんでした。油紙か何かで覆って終わりだったと思います。従って植皮はされませんでした。多少ボコボコとして入るものの、目を背けるほどに醜くはありません。今となってはお父さんお母さん、GJ!です。

 私は男性ですし、すでに30代後半にさしかかりました。火傷の跡形などどうでもいいです。でもこれがうら若き乙女ならどうでしょうか。火傷を見るたびに自信をなくすかもしれません。命にかかわるわけでもない、たった一度の火傷でその後の人生が台無しになるなんて馬鹿馬鹿しいにもほどがあります。

 しかし今なら湿潤治療があります。私程度の火傷であればもしかすると跡形もなく治るかもしれません。たかが火傷の跡形、でも患者にとってはされど跡形。跡形なく治るのであればまさに人の人生まで救うかもしれない、そういうポテンシャルが湿潤治療にはあります。

どうですか?院長先生。先生もお医者様なら人の人生をも救う治療をしたくありませんか?それこそが美を追求する形成外科医の仕事ではありませんか?
というような投稿し、現在承認待ちです。6番目です(笑)

件の乳児の指尖部壊死症例、これがこのままうまく治癒すれば、この子は間違いなく人生を救われます。子供の人生が救われるということは不注意でわが子に大怪我を負わせてしまった・・・と悲痛な思いでいらっしゃるであろう親御さんの人生まで救うということ。
 そうなんですよ。肝臓に傷がついて変形しても腎臓の形が変でも誰も気付かれませんが,肌の小さな傷は人に見えます。だから,肌の小さな傷でもコンプレックスになります。ましてや,広い面積の傷では・・・。
 たかがヤケドの傷跡・手術痕で一生悩まなければいけないなんて,本当に馬鹿馬鹿しいです。

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 札幌美容形成外科院長ブログについて。
 新聞記事ですが、読むととても腹立たしくて、悲しくて、みなさんのメールのように頭のいいことは何ひとつ言えませんが、札幌美容外科の先生が憎くて、私もメールをしてしまいました。
あなたのコメントは管理者の承認待ちです。
2012年7月11日 11:20 AM

 はじめまして。2児の子供を持つ看護師をしているものです。
 私の子どもも手の甲に3度の火傷を負いました。患部はホワイトチョコをコーティングしたように真っ白に焼けてしました。もちろん総合病院での診断は「植皮しか道はない」でした。子どもが将来手が気持ち悪いといじめをうけたらどうしようと毎日泣きました。夏井先生をはじめ、たくさんの方から情報をいただき、湿潤療法を幸運にも受けることができました。
 すると,植皮しか方法がなかったはずの皮膚が1か月で上皮化しました。

 この安易な記事のせいで、同じ思いをしているお母さんが違う治療を信じてしまったらどうしようと涙がでてきました。植皮と同じ治療結果だったとしても(たぶん それはありません。)子供に何度もつらい思いをさせ、QOLを下げた治療を受けるようは比べものにならないくらい良かったと思っています。
 「もしもこれが自分の子供だったらどうしよう」という想像力に欠けた医者だけが,何も考えずに皮膚移植をするんですよ。熱傷なんて自分と無関係の出来事だと思っているから,植皮は簡単だと思うんですよ。
 馬鹿とは想像力が欠落した人間のことを言います。馬鹿医者と私が呼ぶのは,想像力の欠けた医者です。

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 情報がどんどん押し寄せてきます。次から次へと処理しないと,パンクしちゃいます。

 というわけで,
札幌美容形成外科院長ブログについてです。院長先生の嘘がどんどんバレていきます。
 獣医です。
 札幌美容の先生はほんとに医者ですか?

 犬がラップを食べてそれがトラウマというメールが紹介されてましたが、その元ブログ読みました。ラップを食べてしまって2日後に受診て、これじゃ一般の飼主と同じですよ。
 ラップ程度は食べた半日以内であれば催吐処置(犬の場合はトランサミンの静注)で一発です。もし吐けなくても内視鏡で引っ張り出せます。手術なんか必要ありません。医者なのにそんなことも気づかないなんて。

 話はそれますが、私たち東京城南地区の獣医師共同で夜間救急病院を設立しましたが、そこに来る犬の14%は誤食です。私が当番で入ったつい2週間前もまさにラップにくるんだ肉を食べたワンコが連れてこられました。食べて2〜3時間くらいだったのでトランサミン静注ですぐに全部吐きました。

 大分話はそれましたが、この先生は夏井先生のHPにある植皮後何年も経っているうろこ状の皮膚を見て、きれいに治ったと言い張るんでしょうね。普通の感覚でいえば、夏井先生の膨大な治療例や各種の説明を丹念に読み込めばおのずと方向が見えてくると思うんですがねー。はなから疑って色眼鏡をかけているから情報が読み込めない空頭ですね。
 患者さんがかわいそうです。気づいて逃げ出すことを願ってます。

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 さらに札幌美容形成外科の公式サイト自体にも疑惑あり・・・というメールをいただきました。
 ここのHPは厚生労働省の医療機関のホームページガイドラインに違反していますね。

ホームページに掲載すべきでない事項としては、
  1. 虚偽、客観的事実であると証明できない事項(加工・修正した術前・術後の写真や、「絶対安全な手術を提供する」旨の記述、根拠のない「満足度○%」などの記述)(p3-p4参照)
  2. 他との比較で優良性を示そうする事項(「○○治療では、日本有数の実績を有する」や、「著名人が○○医師を推薦」などの記述)(p4-p5参照)
  3. 誇大な内容や、医療機関にとって都合のよい情報の過度な強調(「知事の許可取得」など当然の事項の強調や、医療機関に便益を与える体験談の強調など)(p5-p7参照)
  4. 早急な受診を過度にあおる表現や、費用の過度な強調(「キャンペーン中」「期間限定○%オフ」などの記述)(p7参照)
  5. 科学的根拠の乏しい情報に基づき、国民・患者の不安を過度にあおり、不当な誘導を行うもの(「○○の症状のある2人に1人が、○○のリスクあり」や「○○手術は効果が乏しくリスクが高いので、新しい○○手術がおすすめ」などの記述)(p7参照)―などがあげられている。ガイドライン案では、禁止される記述の例や考え方、禁止の根拠などを詳説している(p3-p8参照)。
 すべてに該当していますね。ボトックス3カ所で20%オフって¨

 ご参考にどうぞ。⇒http://www.m3.com/tools/Document/WIC/pdf/201207_1/1810_1_1.pdf

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 さらに札幌美容形成外科院長ブログについて。
 三重で湿潤療法をしている医師です。〇〇県で外科部長と戦っているときに、先生にメールして力を頂いてからから十数年経ちますが、あのアホな外科部長が院長になり、今でもあの病院は消毒し続けていると思われます。

 夏井先生のように、熱い心は持ち合わせていないので、湿潤療法を否定する人と真っ向から喧嘩するのは苦手なのですが、さすがに今回の朝日新聞の記事にはいらだちを覚え、かつその経緯が、アホな札幌の美容外科医の差し金だったことを知り、月曜日には、朝日新聞にも美容外科医にも、苦情を入れました。私のような人間が動いたのですから、そりゃ、ブログも書き込み要求がたくさんあったでしょうし、朝日新聞も意見の多さに驚いていると思います。なんか、明治維新などだったら「アサヒ・サッポロ〇〇事変」とか名の付く、湿潤療法の歴史上大きな分岐点になりそうな気がします。あ、「アサヒ・サッポロ」ってビールみたいですね…。私は下戸です。

 ただ、確かに、熱傷をラップを覆うと一時的には良いのですが、3日目ぐらいに感染を来す症例は多いです。まあ、最近は被覆材を使うことがほとんどなので少なくなりましたが、先日もプラスモイストで治療していた下腿熱傷でもありました。これは、熱傷は他の外傷と違って、一度に広範囲の皮膚欠損とともに皮膚常在菌と白血球などが一度に死に、焼畑のような状態になったところに、最初に住み着いたのが常在菌ではなく、病原菌だった場合に感染が成立しているのだと解釈し、患者にもそのように説明しています。消毒で感染が悪化するのと同じ理論で、やっぱり消毒は化学熱傷の一つです。ですから、やっぱり、ラップと感染の因果関係より、熱傷と感染のほうが因果関係は強いのは明らかですが…。

 それにしても、サッポロの美容外科医は空気が読めない天才なのか、自己反省しているのか、昨日のブログの題が「火に油は危険です」というのは、ちょっと可笑しすぎて、朝5時に起きて二度寝しようと思ったところが、目が冴えて寝れ無くなってしまいました。あと、ここのクリニックは、保険の効く形成外科もやっているはずなのに、診療内容には「やけど」はないんですね。

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 さらに札幌美容形成外科院長ブログについて。
 さて、大人げないと思いましたが、標記のブログを読めば読む程腹立たしくなり、昨晩投稿してしまいました。普段投稿する事などないのですが、「こんなしょうもないブログに投稿してしまった」大人げなさが気恥ずかしく感じられ、また「大きな反響を得た」と思われてしまうのも癪なのですけど。ブログ上私が6番目の投稿者になっていますが、私のような「大人げない湿潤療法信奉者」は決して6人であるはずがないのですが。

 以下投稿文です。
 朝日新聞の記事及びブログを興味深く拝見しました。
 私は医師でも看護師でもありませんが、医療サービスを受ける消費者側の人間として(新聞・ブログで書かれている内容が真実であるならば)対策委員会を設置する暇があったら、厚生労働省なり日本熱傷学会なりがさっさと法的に禁止すべきだろう、という認識です。
 学会の共通認識であるならば「ラップを使うと敗血症になる」程度の、代表理事声明くらい造作もない筈ですし、影響力も小さくないでしょう。
 真に患者の側に立った行動であるならば、悠長に新聞で世論にアピールしている場合ではないと思うのですが…。
 今回紙面を読む限り、ラップが「食品用」であるという点で問題なのか、それともラップの素材自体に問題があるのか、判然としませんでしたが、
 結論としては「“正しい知識を持つ医師が医療用シートで”行われる湿潤療法においてのみ、治療効果のエビデンスがある」という見解であると理解いたしました。

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 私も、札幌美容形成外科の先生のブログに下記のようなコメントを残してみました。遠回しに『それってガーゼを使っても敗血症になる事例だべ。』と嫌味を込めて書いてみました。院長先生からどんな反応があるか楽しみです。
通りすがりの火傷した道産子 より:
あなたのコメントは管理者の承認待ちです。

2012年7月11日 7:12 AM

この事例は、どのような過程を経て敗血症になったのか記載されていませんのでラップと敗血症の因果関係が分かりません。また、従来の治療で敗血症が起きた事例は皆無なのでしょうか?従来の治療方法でも起きることなら、ラップを使ったことが悪なのではなく、敗血症になった要因は別にあると思うのです。
個人的には、一番の要因は医師にかかるべき怪我等を素人判断でかからなかったことが敗血症を引き起こした要因で、従来の治療法でもラップを使っても敗血症になっているような気がします。湿潤療法そのものが悪と読み手に誤解を与えかねない記事ですよね。

入院して火傷の治療をしていましたが、ガーゼが傷に張り付いたり、浸出液が漏れていても交換して貰えなかったこと、死んだ皮膚がパリッパリに乾燥して張り付いたことを思い出すと、本当に感染症を引き起こさなくてラッキーでした。その後、転院して湿潤療法を正しく指導してくれる病院にかかったので植皮することもなく、瘢痕拘縮がおこることなく治りました。やっぱり、適切な治療をしてくれる病院にかかることは大事ですよね。

ラップを巻いてそのまま日数を放置し、傷を洗うこともなければ、被覆材の交換もしていなかったなんて例を槍玉にあげているようなことはありませんよね?だとしてら、ガーゼを使おうが、絆創膏を使おうがって感じです。

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 さらにこんなメールもいただきました。なぜ,札幌美容形成外科の院長先生はラップを危険視するのか,その深層に迫っています。
 あれから、この院長先生のブログを良く読ませて頂いたのですが、こちらのページを見て、「被覆材による湿潤療法」ではなく「ラップ療法」だけをとても危険視する理由が良く判りました。

 実は昨年7月に、この方の愛犬が鶏肉を包んでいたラップを食べてしまって大変な手術をされた事から、ラップが個人的にとても大嫌いになったのではないかと私は思います。
   ⇒http://s-bi.com/wp_diary/kyu/2011/07/27/post-15974.html

 私も犬を飼っていますのでお気持ちは察しますが、この場合はラップでは無く、それを放置していた飼い主が悪いのは誰が見ても明らかで有り、これでラップ自体を恨むのは筋違いというものです。
 また、これで判るのは、食べると死に至る可能性が高いラップは、現在エル・ファーロを始めとする多くの動物病院でも行われている、傷や火傷に被覆材として使用する方がまだ安心であると言う事ですが、これはラップを見るのもいやなトラウマとなっているご本人には絶対に判らないでしょうね。

 既に昨日から恐ろしい程の大量なブログアクセスと書き込みに驚愕して見える事とは思います(決して煽っている訳ではありません)が、せめて私のコメントや既にお伝えしてある私のブログにでも、簡単で良いので素人にでも良く判る、医師らしい内容の返事をして頂きたい物です。
 なるほどね。そういう事情がありましたか。「坊主を憎んで袈裟まで毛嫌い」するタイプか。気持ちはわからんでもないけどね。

 それとは別に,札幌美容形成外科の院長先生には幾つかの計算違いがあったと思います。箇条書きにするとこのようになります。
  1. 以前は医者が「これはこうだ」と説明するとそれを鵜呑みにする患者ばかりだったが,現在は疑問に思ったらネットで調べるのが常識になっている。
  2. 既に多くの人が湿潤治療で熱傷治療御受けており,しかも大多数は劇的に治っている。しかも,治療をする医者から治療原理について詳しく説明を受けていることが多く,理論的なことも知っていたりする。だから,今回の新聞記事の間違いをすぐに見ぬいてしまった。
  3. これは「EBM ビフォー・アフター」の状況と似ている。昔は偉い先生が「これはこうだ」と説明すればそれが定説になったが,今ではまずエビデンスを提示しなければ信用されない。
  4. 多分この院長先生は,医者(=専門家)が「これはこうだ」といえば素人はたわいなく信じこむだろうと,根拠もないことを適当に新聞記事に書いちゃったんでしょうね。ところが,素人は院長が思っているほど馬鹿じゃなくて,「曖昧な根拠でこんなことが言えるの?」と鋭くツッコミを入れまくっているわけだ。
  5. 新聞自体が情報源として信用されなくなりかけている。特に朝日新聞の記事は眉唾が多いことはネット人間には常識となっている。
  6. 「偏向@朝日新聞に」,「院長先生が個人的なコネを使って」,「エビデンスに乏しい批判記事をかいた」という構図がバレてしまった。

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 札幌美容形成外科のブログに質問を書き込んだという他の人からのメールです。
 昨日に私も書き込みしましたが、管理者承認が成されていないか、削除された模様です。ちなみに書き込んだのは。
 ラップ療法が悪いのですか? 湿潤療法が悪いのですか? 認可された医療用シートならいいのですか? です。
 答えられないのでしょうね。
 医師のレベルがこんなだと、寒いものを感じてしまいます。
 まさか素人がこんな本質をついた質問をするとは思っていないでしょうね。要するに,「ラップで起きたトラブルは医療用シートを使っていれば起こらないのか?」,「医療用シートで起きたトラブルは不問に付していいのか?」ということです。

 ちなみに,このタイプの医者への質問として,「皮膚科ではODT療法が行われていてそれには食品用ラップが30年以上前から使われている。日本で売られている皮膚科の教科書にはラップを使う旨が明記されている。熱傷治療でのラップを問題にするなら,なぜ,全国の皮膚科医が治療に使っているラップを問題にしないのか? 皮膚科で使うラップは安全で,熱傷治療で使うラップは危険なのか?」という質問も面白いですよ。もちろん,札幌美容形成外科の院長先生,速攻で削除するでしょうが・・・。

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 ある麻酔科の先生からのメール。
 札幌美容形成外科院長があまりにもなので、朝日新聞に以下のお問い合わせをしてみました。(笑)
 朝日新聞ご担当者様  表題の記事を拝見しました。疑問に思うことがありましたので、可能であれば質問に回答していただきたいと思います。
  1. 今回の記事は熱傷学会側からの発表のみであり、「効果の一方」についての言及が少ないと思いました。このような治療法を記事にする場合には、双方に取材して両論併記で掲載されることが通常と思われますが、いかがでしょうか?今回の場合、ラップ療法以外での感染確率などの紹介があっても良いかと思います。
  2. 今回の記事掲載後、「札幌美容形成外科院長の日記」という7月7日付けブログに高校の同級生の石塚氏に連絡を取り、石塚氏経由で阿部氏から取材を受けた旨、また6月1日付けのブログに、「残念なことに…どこの新聞社もTV局も取り上げてくれませんでした。」との記載があります。この院長は日本熱傷学会側の医師であり、今回の記事掲載は利益相反行為になると考えますが、いかがでしょうか。
  3. また札幌美容形成外科院長の日記というブログに今回の記事が丸々掲載されていますが、これは引用許可があったと見なしてもよろしいでしょうか?無断引用は禁止されていたと思いますが、いかがでしょう。
 以上、ご多忙とは存じますがご回答いただきますと幸甚です。
さて、返信が来るかな?
 もちろん,返事は来ないでしょうね。その場合は,このサイトの読者だけでも朝日新聞不買運動だな。私は10年以上前に朝日新聞の購読を止めちゃったけどね。

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 札幌美容形成外科のブログに質問を書き込んだという人からのメールです。
 アホな医療素人なので我慢できずに昨日札幌美容整形外科さんのブログにカキコしてしまいました(笑
 「夏井Dr信者」として書き込みした1件目は無事承認されてコメントの返事がありました。調子に乗って(実はアルコールも入りながら)2件目を夜中に投稿しましたが、大やけどブログの管理人さん同様、削除されてしまったようです(^_^;)

 2件目の内容は1件目の返事を受けた内容で以下のようなものです。(削除されちゃいましたし、全く一緒ではありませんが)
「ラップ治療で敗血症なり感染例があることはきっちりと認識して正しい治療を行わないといけませんね。これは本当に大切なことだと思います。
 しかし、ラップでの治療が公表されてから10年近く経ちますが、その間、熱傷学会推奨の治療を行い、敗血症などの感染例、死亡例はどれほどあったのでしょうか?この記事はそれが提示されておらず、極めて不公平です。まさか、この10年間でまったくゼロ件と言いませんよね?ぜひそちらのエビデンスもきっちり検証し公表していただきたいものです。

 患者からしてみれば、ラップでの治療だろうが医療用被覆材での治療だろうが、より痛くなく、早く綺麗に、新しい傷を作ることなく、入院は出来るならせず、負担が軽く治癒させることができるなら、何だっていいんです。
 エビデンスや教科書にない症例に出会った時、今までの治療法より安価・簡便な方法で、今までと同様(かそれ以上)の治療成績を実現できる治療法があるなら、それを使えるように働くのが患者のためでしょう。

 それとも、熱傷学会は患者より、エビデンスや教科書を守る事のほうが大事ですか?」
 何も付け加えることのない,素晴らしい質問文です。札幌美容形成外科の院長先生は,気に食わない書き込み,困った書き込みがあったら削除すれば問題解決と思っているのでしょうが,どっこい,こちらで全て掲載します。
 ちなみに,この院長が以前書いた「ラップ療法批判」の文章ですが,こういう人間は都合が悪くなると「臭いものに蓋」と削除することが多いため,当方で勝手に保存させていただきました。

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 「火力発電所技術者」さんからのメールです。
 札幌美容形成外科のウェブを見ました。技術屋としての感想は「この院長は現場感覚が欠如している」です。

 現場と言っても症例を直接に見る事ではありません。現場で起こっている事象の本質を見抜き、基本的な法則に基づく推論によって因果関係を紐解く事です。いやしくも斯界のプロとしてラップ療法を批判するのなら、何が如何なるメカニズムで悪化の原因となっていて、そう考える根拠は何だという点まで踏込むべきだと思います。文献を検索してラップ療法の際に問題が発生した症例を拾っただけで安易な結論を出すのは、恰もグラフを描いただけで「テレビの普及台数は平均寿命の伸長に寄与する」と断ずる素人のようなものです。

 私の部下がこんな資料を持ってきたら半分まで読んで叩き返してますね

 ちなみに、この院長は「ネットの怖いところは…良いところばかりを強調していて、悪いところは書かれていない点です。素人は簡単にだまされてしまいます。」と書いてますが、この文言がそのまま院長自身の批判になっていて笑えます。これぞ典型的な自己言及文、クレタ人の逆理ですね。
 というわけで,札幌美容形成外科の院長先生の文章は,論理学的に不備があるようです。書き換えたほうがよろしいかと思われます。

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 この「札幌美容形成外科の院長ブログ」が面白いことになってきました。ある素人の方が次のようにコメントをブログに書き込んだそうです。
 熱傷学会は、湿潤療法でない治療での同様の症例数は調べられたのでしょうか。出来ればそれも発表して頂けると比較対象になって有難いのですが。
 またマスコミを使って発表されたのであれば、今度,夏井先生がテレビ出演される時には是非、ご一緒に出演されて公開討論されると、一般の方にもより一層理解して頂けるのでとても良いのではないかと思います。

 私をはじめ湿潤療法を受けた患者たちは笑ってこの記事とこのサイトを見ていますが、もしそのような番組を組まれて患者も出演して良いという事であれば私は喜んで出演させて頂きます。
 そんな患者が世の中に数多くいる事を頭の片隅にでも置いておかれると良いのではないかと思います。
 このように,7月9日 21:00ころに書き込んだそうです。そうしたら,
 私のコメントは先程まではブログ管理者の承認待ちでしたが、今見たら承認されずに消されている様です。
 つまり無知な医師が湿潤療法経験者から逃げたと言う事です。メールアドレスまでちゃんと入れたのに…
 とても残念?です。

 もちろんこれも全て公表して頂いても構いません。そのために私はブログを開設して、知恵袋で戦っているのですから。

 何となく今夜は気持ち良く眠れそうです。
 というわけで,札幌美容形成外科の院長先生は,逃げずに回答したほうがいいと思います。男なら(・・・院長が女性だったら謝る!)正々堂々と反論しなさい!

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 朝日新聞の記事を読んだ人からのメールです。
 朝日新聞の記事、下らないですね。

 こいつもいろいろやっている様です。本当にカスです。  経験者の私が正しい火傷治療を教えてあげたいくらいです。
 というわけで,素人が医者に医学を教える時代です。こういう時代では,勉強しない医者は素人以下になります。

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【やけどに「ラップ療法」要注意 効果の一方、重症例も】
 7月7日の朝日新聞の記事です。朝日新聞でない新聞の記者の方から,「こういう医療系の記事では両論併記の形にして,一方だけの意見のみ載せないのが常識だと思います。この朝日新聞の記事は一方の言い分だけ載せていて,これは単なる宣伝文であって記事ではありません」という指摘を頂いております。朝日新聞の阿部彰芳さんという記者の方に同業の方から警告的指導が出ておりますので,お伝えします。

 ちなみに,「熱傷のラップ療法」という言葉は私は一度も使ったことがなく,私は一貫して「熱傷の湿潤治療」という語句を使っています。「熱傷のラップ療法」は安田大先生の造語と思われます。あるいは,安田大先生は「湿潤治療とはラップで治療する方法」と誤解・曲解なさっていらっしゃるのかな?

 それはさておき,安田先生というか熱傷学会は,こういう記事を出さないといけないほど危機感を持っているんでしょうか? 熱傷学会は全国の大学をバックにする数千人規模の巨大組織です。一方,湿潤治療は全国でせいぜい100人,200人がしているだけの吹けば飛ぶような治療です。数千人 vs 200人ですから,熱傷学会を横綱とすれば湿潤治療は平幕どころか序二段クラスです。
 だから,熱傷学会は湿潤治療に対し,どっしりと構えて横綱相撲を取ればいいのです。慌てたり騒いだりする必要はありません。「消毒して軟膏ガーゼ,そして皮膚移植」という歴史と由緒ある治療を推奨している伝統のある巨大組織なのですから,ゆったりと構えていればいいのです。

 しかし,今回の新聞記事はいわば奇襲作戦です。横綱相撲ではありません。横綱が序二段に対し,けたぐりとか猫騙しを仕掛けたのが今回の朝日新聞の記事です。けたぐりは序二段が横綱に対して仕掛けるべき技であり,横綱が使う技ではありません。

 ちなみに,この記事を読んだ人の反応をパターン化してみると次のようになります。
  • 湿潤治療のことをよく知っている人が読んだら⇒⇒⇒しょうもない「マスゴミ」記事だなと一笑の付す
  • 湿潤治療のことをなんとなく聞いたことがある人なら⇒⇒⇒記事に疑問を感じてネットで真偽を調べる/ラップは危険だが,自分の治療はラップでない(=プラスモイストなど)ので安全だと思う。
  • 湿潤治療のことを全く知らない人なら⇒⇒⇒何が問題かよくわからない/ラップは危険だが,自分の治療はラップでない(=プラスモイストなど)ので安全だと思う。
 多分,こんなところじゃないでしょうか。

 実は,こういう単発の記事は実は全く怖くありません。もしも,毎日毎日,新聞に「ラップで熱傷治療するのは危険」というネガティブ・キャンペーン記事が出たらちょっとこたえますが,多分それは不可能でしょう。なぜかというと,トラブルが起きる例は最近ほとんどなくなっているからです。少なくとも,私の外来では過去8年間,感染が起きたのは数例で,残りの数百例はノートラブルです。だから,新聞に「湿潤治療@ネガティブ・キャンペーン」を張ろうとしてもすぐにネタ切れし,毎回同じ過去のトラブル例をコピペして記事を書くしかなくなるはずです。

 だから,私の方は慌てる必要もなければ焦る必要もありません。これまで通りに,一週間に一例ずつ治療例をHPに写真付きで追加していくだけです。そして,湿潤治療や熱傷治療についてネット検索している人の判断に委ねるだけです。

 熱傷学会で公開討論の場を作ってもらってもいいですね。湿潤治療側は私一人,熱傷学会側は教授100人くらい並べていただいて結構です。湿潤治療を叩き潰す絶好の機会ですから,熱傷学会で是非企画して下さい。私はいつでも受けて立ちます。
 安田先生,その他の熱傷学会理事の先生方,是非,公開討論しましょうよ。公開の場での討論,そちらもやりたいでしょう? でないと,こっちで勝手に企画して,産業医科大学准教授の安田先生とか某病院のK先生とかを公開討論の場に引っぱり出しちゃいますよ。

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西東京市から受診された2歳の熱傷患者さん。最初,近くの総合病院皮膚科を受診したそうですが,「消毒とガーゼの治療」に疑問を持ち,Yahoo!の知恵袋を見て湿潤治療のことを知ったそうです。

 と,ここまでは普通の経過なんですが,このお母さんは私のサイトを熟読し,「要するに水疱膜が取れてしまえばいいわけね。そうしたらラップで治療できるわけね。何かあったら練馬まで行けばいいだけのこと」と理解し,子供が寝ているときに眉毛きりのハサミで手背の水疱膜を綺麗に切り取り,ラップを当てておいたそうです。
 そして,受傷から8日目の今日,当科を受診されましたが,手背の熱傷創はものの見事にきれいに治っていました。汗疹一つできていません。お見事!
 というわけで,西東京市の某総合病院皮膚科より,このお母さんのほうが知識を持っていて,適切な治療ができていました。

 そういうわけなので,総合病院皮膚科や形成外科では,従来通りの熱傷治療を続けていて下さい。患者が当科に逃げてくるので,当科としては大助かりです。

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 6月14日のこのコーナーで
「頭部から採取した皮膚を手背に植皮する手術を受けた。主治医(形成外科医)は絶対に頭が禿になることはないと断言したのに,しっかりと禿になった」
という可哀想な患者さんのことを書きましたが,どうやらこの主治医はこの手術ミスを更なる手術で覆い隠そうとして,ご両親にとんでもない提案をしているそうです。
 6月14日の状態を提示します。見事な「医原性禿髪」です。また,恐れていたように,手背の移植皮膚からは毛が生えてきているようです。
 この主治医の提案はご両親によると次のようなものだったようです。
  1. 手に移植した皮膚を剥ぎとって頭のハゲの部分に移植します。そうすれば,手に生えた毛が頭に移動するので,ハゲは治せます。
  2. 手の皮膚を剥ぎとったところには,別の部分から剥ぎ取った皮膚を移植します。
  3. 皮膚を剥ぎとったところは自然に皮膚が再生するのを待ちます。
 
 まともな知識のある形成外科医ならこんなアホな提案をしますか? このバカ医者,患者のことをオモチャだと思っているのでしょうか? この手術が絶対に失敗することに,なぜ気が付かないのでしょうか?

 手背に移植した「毛の生えた皮膚」を頭に移植するとどうなるか。毛は正常な頭髪の密度でなく,非常に薄い密度でしか生えて来ません。移植操作により,一部の毛根は必ず死ぬからです。その証拠に,「現在手背の移植皮膚から生えている毛」はチョボチョボ状態ということですから,いわば準ハゲ状態です。その「準ハゲ」を頭部に移植すると,毛の密度は更に低くなります。私の予測では,ほとんど毛は生えてこないか,生えても「波平さんの頭」程度のはずです。
 しかも,手背に移植した「毛の生えてきた皮膚」は最初の状態より縮んでいますから,採取時の面積より小さくなっています。つまり,頭のハゲを覆う面積はありません。これは形成外科のイロハです。
 つまり,手背の毛を頭部に戻しても,ハゲの治療にはなりません。

 要するに,このお馬鹿さんは「ハゲを治さず,体の別の部分にさらに傷をつけましょうね」と提案しているのです。まともな知識と経験と判断力を持っている形成外科医とは思えません。

 ちなみに,このお医者さまは今回の手術が,「生まれて初めて行った頭皮からの採皮」だったそうです。

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 広島の湿潤治療のエキスパート,正岡クリニックの正岡先生から写真が送られてきました。
 私は医学部卒業後、一般外科に入局し、ず〜と外科医をやり、今は町医者で外科となんちゃって整形外科医をやっていますが、私の右手は添付写真の通りです。
 生後数か月で火傷、当時の広島大学病院に入院し、下腹部と右大腿から皮膚移植を受けています。幼稚園時代にも2回くらい入院して手術を受けた記憶があります。
 小学生時代はフォークダンスの時など、気持ち悪いと言われ女の子から手をつなぐのを嫌がられた記憶がありますが、現代のような執拗ないじめにあったことは無かったです(^^;)
 で、幼少期の写真を見たらたいてい右手には包帯がぐるぐる巻きになっています。
 自分は左利きですが、勤務医時代は右手で縫合したり開腹手術など完璧にできるようにトレーニングしました。小指と拇指は短いですが、はさみを使ったり手術器具を操作するのは支障ないです。ただし拇指の掌側が少し突っ張っているので完全伸展はできません、小指はいつもPIP関節が90度に屈曲していますが伸ばすこともできます。
 いまだに、初診の患者さんなどが私の右手を見て、ケガされたんですか!なんて言ったりします。

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 なんと今日は福岡県から患者さんが受診されました。主訴は「皮膚移植後の頭部のハゲ」,つまり,移植皮膚の恵皮部の傷が治らず禿になってしまったという患者さんです。6月初めに以下の様なメールを頂きました。
 今年5月21日早朝にアイロンつで息子に火傷をさせてしまいました。県内の聖○○○病院形成外科で頭皮から火傷した右手への移植をすすめられ、迷いながらも先生の自信に満ちた言葉を信じ、同意いたしました。
 5月14日に手術が終わりましたが、手術跡の頭皮がいまだジュクジュクとしていて、良くなる傾向が見えません。今自宅でバラマイシン軟膏をシャンプーで洗ったあとに塗り、滅菌ガーゼでおおい、包帯を巻くように指示が出ていますが、疑問を抱き、ネットで調べて新しい創傷治療に辿り着きました。
 直ちにワセリンとラップで創部を被覆する方法に切り替えるようにメールを出し,そして今日,当科を受診されました。創面はきれいに肉芽で覆われていますが,やはり毛根ごとすべて取られたようで,頭髪は生えてきそうにありません。
以前紹介したこの症例のように移植皮膚から毛が生えてこないか心配です。
 ちなみに,この形成外科では頭部のハゲに対し,Tissue Expander埋め込み手術をしましょうと提案したそうです。手術の失敗を追加手術で糊塗しようとするなんて,気が狂っているとしか思えません。多分,手術がしたくてしたくてたまらず,手術を受ける患者さんのことはこれっぽっちも考えてない医者なんでしょう。

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 「ある病院の形成外科の先生の独白」を伝えるメールです。
 もう自分はこの病院を辞めるから言っちゃうけど、救急科で創傷被覆材を使って良くした患者さんが、形成外科に転科してからゲーベンやカデックスが使われるせいでどんどん悪くなる。見ていて我慢できなかった。
 外来に紹介される患者も初診のときはくるけど、次から来なくなっちゃう患者が結構いる。きっとどっかに逃げ出しちゃうんだと思う。
 熱傷学会ご推奨の熱傷治療は「沈没寸前の泥船」ではないでしょうか。ネズミはとうの昔に逃げ出しています。そして,乗客が逃げだし,船員も脱出を考え始めたようです。

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 連日,いろいろな病院で治療を受けている熱傷患者さんが当科に逃げてこられますが,今日は慈恵医大病院からの脱走患者さんです。1歳の子供さんの顔面,上肢,胸部熱傷ですが,サトウザルベとガーゼという前時代的で悲惨な治療でした。
 患者さんのお母さんは「ガーゼ直接だとくっついて痛がっているし,医者の説明も態度も悪かった。これじゃダメだと思い,ネットで探してきました」とおっしゃられておりました。
 患者に見放されるような治療をしていては,患者に見放されると思います。

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 昨日深夜,メールで相談をいただきました。某県在住の7歳女児で,ヤカンのお湯で右足背に熱傷受賞。救急病院を受診した後,専門的治療が必要ということで大学病院や「日本最大の熱傷センターを有する東海地方の某病院」を受診し,深い熱傷で皮膚移植が必要と言われ,「指の神経まで熱傷が及んでいるため足の指の動きに障害が残るだろう」と説明を受け,1週間後に皮膚移植の予定とのこと。
 メールに添付された写真を見ると,笑っちゃうくらい軽い熱傷なんですよ。このサイトの読者なら,笑っちゃいますよね。

 本当の深い熱傷というのはこういう症例を言います(
症例1症例2)。もちろん,どちらも植皮なしで,機能障害なしに治っています。だから,今回の症例は深いヤケドではなく浅いヤケドなんですね。
 ちなみに「趾の神経が損傷されているので,趾の運動障害がおきる」という説明は嘘っぱちです。趾の神経は知覚神経であって運動神経でないからです。「趾の神経が・・・」と患者に説明した医者は解剖学の基本的な知識を欠いているようです。もう一度解剖学を勉強するように。

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[m3.com|カンファランス]によせられた典型的な「重箱の隅つつき」質問に「湿潤治療で内科医が熱傷を治せるのはいいが,3度90%の重症熱傷がそのクリニックに運ばれてきたら困るだろう」というのがあったな。あまりにバカ丸出しのお馬鹿な質問なんで放っておいたけど,この質問がどれほどお馬鹿かはわかりますよね。
 そうです。「内科クリニックに3度90%熱傷を救急搬送するお馬鹿な救急車は存在しない」が回答です。

 大学病院とか熱傷センターに長年勤務していると,世の中の熱傷はすべて「3度90%」と考えちゃうんでしょうね。かわいそうな人達です。
 現実の世界を見るとわかるけど,熱傷の99%は熱傷面積数%程度の2度の浅井熱傷なんですよ。3度90%熱傷なんて焼身自殺か火事に巻き込まれたか,そのくらいでしか発生しない,極めて稀な熱傷です。そういう稀少例を基準に熱傷治療全体を捉えてはイカンよ,ということですね。
 3度90%熱傷を基準に熱傷治療を組み立てるのは,震度7の大地震は必ず起こりますが,だからといって,会社に行く時も学校に行く際も隣のコンビに行く時にも,「3日分の非常用飲料水と非常食,携帯トイレ,ラジオ,懐中電灯,寝袋などを持ち歩く」とするのはおかしいのです。「空から隕石が降ってきて頭にあたったら死ぬだろう」と考えて,毎日頑丈なヘルメットをかぶって歩いている人は,慎重な人なのか,可哀想な人なのか,というのと同じです。

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 ある先生から頂いたメール。
 大学の熱傷治療の崩壊は恐ろしく,半年ほど前に来た生保,精神疾患,焼身自殺の40%熱傷に,大量のペルナック人工真皮の使用,頻回のジェイス,自己培養表皮の使用,など,国民の税金が投入されていることを全く理解していない治療のオンパレード,どうゆう思考回路なのか全く理解不能です。おそらく,この患者に数億の税金が投入されていることでしょう。そして,半年以上も入院しているようですが,実際救命したとしても,その後のフォローは精神科医になるのでしょうし,形成外科は責任は全く取らないのでしょうね。
 こういう大学病院の熱傷治療はおかしい,と感じる方がまともだと思います。形成外科の先生からの反論はありますでしょうか?

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 先日,今月号の日経メディカルの熱傷治療の記事を紹介しましたが,ある先生から次のようなメールをいただきました。
 この記事に出てくる産業医大の安田浩先生は,数年前の日本褥瘡学における「褥瘡のラップ療法」の発表に対し,「様々な医療用の被覆材があるなかで,食品用のラップを創部にあてるなんてそのような治療をしている先生のモラルはどうなっているのですか?」と発言した先生です。
 今回の記事では,消毒やゲーベンクリームに対して否定的な見解を示しており,またラップに対してもそこまで絶対悪といったコメントではなく,あのときの発言は何だったんだと何とも微妙な感じです。
 多分,安田浩先生は数年前に自分が言ったことをすっかり忘れているんでしょうね。忘れているから,こんな恥知らずな発言ができるのでしょう。健忘症なのか,あるいは認知症が始まっているのかもしれません。安田先生の脳味噌がちょっと心配です。

 ロシアのことわざに「斧は切った木のことを覚えていない。しかし,切られた木は斧のことを忘れない」というのがあります。批判した本人は忘れても,批判された人間はずっと覚えているのです。

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 浜松市の聖隷三方原病院 白井先生(湿潤治療の弟子です)から,今月号の日経メディカルの記事を教えて頂きました。白井先生,ありがとうございます。
 特集のタイトルから,ちょっと期待して読んだのですが...
 まぁ,形成外科医の口から「消毒はダメ,ガーゼもダメ」「ゲーベンも良くない(←感染創を除く,という限定付きですが)」と言わせたことに意義がある,と生暖かく見てあげるべきかもしれません.ただ後半は従来通り,DDB〜V度熱傷には植皮が必要,専門医へ紹介を,で締めくくられ,片手落ちの記事でした.
 症例3は治療前の写真もなく年齢等詳細不明ですが,5ヶ月経っても感染もしてなさそうだし,坐位の写真のようなので患者も元気そうだし,「2週間経っても治らなければ植皮」を否定する立派な根拠になってると思うのですが(笑)...文脈から推測するに植皮されちゃったんでしょうね.やや創面が盛り上がって見える部位があるので,ステロイドを使うか,しばらくドライに持って行くとか,手を替え品を替えすれば上皮化が進みそうに見えますが.

 創は日々変化しているのに,「とりあえずソーブサン貼っとけばいいんですよね?」的な丸暗記研修医に手を焼く毎日です.
 「生暖かく見てあげるべき」という部分に大笑い! 熱傷専門医にとって「深いヤケドは植皮でないと治らない」というのが最後の砦です。ここを明け渡したら落城し,殿様(=専門家)でなくなります。植皮術は飯の種であり,熱傷専門医が専門家であるための必要条件ですから。だから彼らも必死なんです。

 それにしても「丸暗記研修医」,「マニュアル医者」も困りものですね。「治療の標準化とは,どんな患者にも十把一絡げに同じ処置を延々とすることだ」と思い込んでいる医者もいますよね。頭で考えるのが本当に苦手なんでしょう。白井先生,日々ご苦労さまです。

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 本日も,他県の某病院形成外科で皮膚移植を受けた悲惨な子供さんが受診されました。前胸部〜腋窩熱傷に左側頭部〜後頭部からの分層植皮を受けていますが,なんと移植皮膚に毛髪が生え,頭部の恵皮部には数センチ幅のハゲが3ヶ所も! 手術前に父親が何度も「ハゲにならないか。もしもハゲになるようだったらお尻などから皮膚を取って植皮してほしい」と申し入れたにもかかわらず,某病院の形成外科医は次のように言ったそうです。
  • 移植した皮膚に家が生えてくることは絶対にない
  • 頭部の皮膚を取った所がハゲになることも絶対にない
 この医者は「頭皮からの皮膚移植」を両親に納得させるために「絶対」という言葉を何度も使ったそうです。その結果が,移植皮膚から毛髪が生え,皮膚採取部はハゲです。両親が執刀医に抗議したところ,「頭部が禿げたのは感染が起きたためです。不可抗力です」と開き直ったそうです。ご両親はこの説明に納得できず,他の医者の説明を聞きたいと受診されました。

 この医者の「頭部の恵皮部が感染で毛根が壊死し,それで禿げた」とする説明を百歩譲って納得したとしても,それでは胸の移植皮膚の毛はどこから来たのでしょうか。頭皮が化膿したため,頭皮の毛根が胸に移動したとでも言うのでしょうか。
 これは間違いなく,頭部から採皮した皮膚に毛根が含まれていて(=間違って厚い皮膚を取ってしまった),そのために胸の移植皮膚からは頭髪が生え,頭皮は禿げたのです。これ以外の可能性はゼロです。この医者のしたことを擁護するお医者様もいらっしゃると思いますが,「なぜ胸の移植皮膚から毛髪が生えているのか」の理由を説明して下さい。素人にもわかる嘘をつく医者ってどうよ,と思います。

 私も大昔,頭皮からの植皮をやっていました。毛が生えてくれば傷跡が隠せる,と教科書に書いてあったからです。しかし,実際に手術をした医者ならご存知のように,頭部の恵皮部って時々ハゲになるし,ちょっとでも厚い皮膚だと移植皮膚から毛が生えてきます。これは形成外科医なら誰でも知っているはずです。だから,経験のある形成外科医なら「絶対にハゲになりません」なんてことは言わないはずです。

 ちなみにこの医者は,「ハゲを治すためにはハゲを切り取って縫い合わせれば治る」と,さらなる手術を提案したそうですが,どうやっても縫縮ぎりぎりのサイズなんですよ。しかも,1ヶ所を縫縮すれば残り2ヶ所のハゲ(瘢痕)の幅が広がってしまうはずです。この形成外科医はこのあたりをどうお考えなのか,聞いてみたいところです。
 ちなみに,この病院の同僚の医者は「縫い合わせるのは無理では・・・」と首をかしげたそうです。

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 ある小児科の先生からの鋭いツッコミ。  ちなみに,上記の「96歳の熱傷」については,MIMMS方面の先生は「熱傷面積は3%相当であり,「3+96=99」だから死なずに済んだ」と言い張ると思いますよ。

 この手の「なんちゃって基準」はいくらでも作れます。なぜかというと,人間の年齢は100〜110が上限だからです。
  • 「年齢と1日あたりの喫煙本数の合計が110を超えると救命率はゼロである」
  • 「年齢と1日あたりの移動距離(km)の合計が110を超えると救命率はゼロである」
  • 「年齢と1日あたりの書籍購読数の合計が110を超えると救命率はゼロである」

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【Dressings for superficial and partial thickness burns】
 ある先生から「こんな文献,見つけました」と教えて頂きました。「治癒までの日数,処置回数,痛みの点でハイドロコロイドやポリウレタンフィルムが有用であると示唆する結果があったが,ゲーベンクリームの使用を支持するようなエビデンスは無かった(There was no evidence to support the use of silver sulphadiazine.)」という結論を出しています。
 とは言っても,「ゲーベン大好き先生」はこんな論文,読まないだろうなあ。そして今日もまたゲーベンを塗りたくるんでしょう。

 ちなみに,われらが日本熱傷学会のガイドラインではゲーベン使用を推奨しております ⇒「日本熱傷学会 熱傷診療ガイドライン」

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 来週月曜日(28日),TV東京で12月17日放送予定の医療番組系特番の収録があり,私は「ヤケドは皮膚移植しないで治す」側で「ヤケドは皮膚移植をして治す(=日本熱傷学会のガイドライン治療)」側の先生とちょっと討論でも,という予定でしたが,ついに「ヤケドは植皮」側の先生は出演しないことが決まりました
 多数の大学病院形成外科の教授や熱傷治療で有名な先生方にかたっぱしから出演依頼したのですが,誰一人として「討論で湿潤治療をとっちめてやろう」という人はいません。ただ一人,最後まで出演に前向きだった茨城県の土浦協同病院皮膚科 盛山吉弘先生(いろんな所で「湿潤治療なんてダメだ」と悪口を言いふらしたり論文を投稿している御仁ですな)も今日になって「都合がわるいので出演できません」だってさ。まさに敵前逃亡! 文句があるなら面と向かって堂々と主張して欲しいっすね・・・男なんだから。今後は影でコソコソ悪口をいうような卑怯な態度は取らないように・・・男なら!

 ヤケドに対して皮膚移植で治すのが正しいとテレビ視聴者に主張できる絶好の場を私は提供しました。それなのに,日本熱傷学会の先生方も大学病院形成外科の教授たちもその機会を放棄しました。彼らはそんなに後ろめたい治療をしているのでしょうか? 正しい治療だと信じて行なっているのなら,それを堂々と主張したらいいじゃないですか。湿潤治療より植皮治療が優れているって主張すればいいじゃないですか。正々堂々と討論するのが苦手なんですか? そんなにしてまで隠しておきたい治療,治療結果を秘密にしたい治療をしているんですか?

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 中京病院(ご存知,熱傷治療の総本山)救急部の黒木先生から「熱傷後ヘルペスが多発しています。その原因として私はフィブラストスプレーを疑っています。フィブラストを使っている症例にしか発生していないからです」というメールをいただきました。ちょっと長文ですが,引用させて頂きます。
 この2年くらい,当熱傷センターで熱傷創へのヘルペス感染が相次いでいます。熱傷創へのヘルペス感染は過去に文献でも報告例がありますが,なぜ当熱傷センターにおいて最近増えたのか原因を考えてみました。
 これは,全くの思いつきなのですが,「フィブラストスプレー」が犯人ではないかという気がしてきたのです。
 ヘルペスのようなウィルスは,細胞分裂が盛んな細胞に好んで感染します。例えば,熱傷創であれば,浅在性2度熱傷や採皮創に感染します。3度熱傷のように完全に壊死した組織には感染しません。
 フィブラストスプレーは線維芽細胞増殖因子ですので,細胞分裂を活性化させ,ウィルスがより好む環境に組織を変化させるのではないかと思われるのです。時期的にフィブラストスプレーが盛んに使われるようになった時期とヘルペス感染が発生した時期とが一致していますし,フィブラストスプレーを好んで使う医者が主治医をする患者にやたらとヘルペスが発症しているのです。湿潤療法も細胞分裂を促進させますから容疑者といえば容疑者ですが,僕のように湿潤療法のみでフィブラストを使わない医者が主治医をしている患者にはヘルペスは発症していません。
 そもそも,もともと人間が合成する物質を補充するという治療コンセプトは今のところことごとく否定されています。例えば,アルブミンがそうです。アルブミンはいまや”killer fluid”と呼ばれ,重症患者の独立した死亡リスク因子となることが示されています。敗血症に対する免疫グロブリンやDICに対するアンチトロンビン製剤の効果も今のところ否定的な意見が優勢です。だから,フィブラストスプレーが発売された当初から僕は懐疑的でした。
 夏井先生も「フィブラストスプレーは使ったことがあったが,もう今は使っていない。そもそも臨床試験の対照群がユーパスタである時点で眉唾ものだ」ということをどこかで書いていたように記憶しています。
 僕は同薬を撲滅すべき薬だと思っています。効果があるかどうかわからないくせに高価だし,なにより噴霧すると患者さんがものすごく痛がるからです。さらにウィルス感染を助長するとなれば,もうこれは絶対に使ってはならないクスリということになるでしょう。

 ちなみに,熱傷に合併したヘルペス,私は10年間で一例も経験していないので,写真を送ってもらいました。非常に痛いそうです。
 他の病院,熱傷センターではどうでしょうか。同様の症例が発生していますか? 是非,ご教示ください。

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 昨日(11月23日)早朝,ある方から「子供がヤケドしまして入院しています。消毒と軟膏ガーゼの治療で,治療のたびに子供が泣き喚いていて可哀想で見ていられません。ネットで湿潤治療について知り,これで治療してくれないかと主治医に尋ねても《湿潤治療は軽症のヤケドにしか効かない。これは深いやけどなので湿潤治療では治らない。いずれ皮膚移植が必要だろう》と説明されました。何とか助けてください」とメールをいただきました。
 それで,何度かメールのやりとりをして,直接「近畿外来小児科研究会」講演会場(大阪医大)まで来られるということなので来ていただき,研究会に参加していた「通院可能な病院で湿潤治療をしている医師」を会場で見つけ,彼に紹介しました。関西在住の方だったことが幸いしましたが,最初のメールをいただいてから8時間ほどでの電光石火の早業でした。
 ちなみに,講演の冒頭で「この研究会はたった今,一人のヤケドの患者さんを救いました」と事の経緯を紹介しましたが,拍手喝采でした。そして講演終了後の懇親会でも「これからは軽いヤケドは小児科医がどんどん治す時代になるんでしょう。大学病院で植皮しないと治らないと言われた熱傷が,小児科クリニック
こことかこことかでどんどん治っているんですからね」と何人もの小児科の先生から話しかけられました。
 日本に熱傷学会があることすら知らない小児科の先生方が,どんどん熱傷を治療する時代がもうそこまで来ているようです。まさに,日本熱傷学会にとっては青天の霹靂,「そんなの聞いてないよ」という事態でしょうけどね。

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 「ヤケドで皮膚移植を受けたのですが,手術前はきれいに治ると言われたのに,全然きれいに治っていません。診察のたびに医者はきれいに治ったねと言いますがショックです。この移植した皮膚はきれいに治せますか?」という電話やメールでの相談を全国からいただきます。湿潤治療できれいに治った写真を見られて,最後の望みをかけて相談してきた方に,「皮膚移植されてしまうと,もうきれいにはできません。お力になれず申し訳ありません」と謝るしかないのは,とても残念です。と言うか,なぜ私が謝らないといけないのか,謝るべき医者は皮膚移植をした医者だろうと思ったりします。
 そこでふと思ったのですが,植皮術の同意書を取る際,主治医は患者さんや家族に「皮膚移植をするとこういうふうに治ります。皮膚を取ったところはこうなります。皮膚移植しますか?」と過去の植皮をした症例写真を提示しながら説明した上で,手術の同意書を取っているんでしょうか。これまで私は「きれいに治ると主治医の説明を受けて手術を受けましたが,結果に納得できません」という患者さんは多数見ていますが,「どういう結果になるか,主治医から写真を見せてもらって説明を受け,その上で手術を決断しました」という患者さんには出会ったことがないからです。皮膚移植についてのインフォームド・コンセントはどうなっているのでしょうか?
 ちなみに私は,
治療例の経過写真を見せて,「あなたのヤケドはこの症例と同じくらいです。だから,7日くらい経つとこのくらいに治り,更に1ヶ月くらいでこういう状態になります。この程度の治り方でよろしければ治療を開始しますけど」と説明しています。

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 今日も神奈川県から熱傷患者さんが受診されました。側胸部から上腕にかけてのDDB(U度深達性熱傷)〜DB(V度熱傷)で,湿潤治療をしている先生から「このくらいの熱傷でも湿潤治療で大丈夫でしょうか?」ということで紹介されました。
 先週の21日に受傷して近くの総合病院を受診し,翌日,同院形成外科医が診察し「これはV度熱傷で直ちに手術しないと感染が起こる。10月3日に手術しましょう」と説明したそうですが,家族の方は「直ちに手術が必要ならば直ぐに手術すべきだろう。10月3日までなにもしないというのは話が矛盾している。この病院の治療方針はおかしい」と直感し,ネットで探して湿潤治療をしているクリニックを受診されたのだそうです。
 確かに「すぐに手術しないと創感染で危ない」という説明をしているのに手術は10日以上先,というのは矛盾していますよね。家族の方,ナイス判断です。

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 先日,20代女性から次のようなメールを頂きました。
「腕から手にかけてのヤケドで某病院形成外科に入院しています。受傷から12日経っていますが,主治医からこれはV度熱傷で皮膚移植をしないと治らない。すぐ手術をしましょうといわれました。写真を添付しますが本当に手術しないといけないのでしょうか?」
 もちろん,
いつものように「写真を見るとV度熱傷ではなくU度熱傷です。手術しなくても簡単に治ります。そんな病院,さっさと逃げ出して近くの湿潤治療をしている病院に移られることをお勧めします」と返事を書きました。
 そして昨日この方から,「上富良野町立病院の兼古先生に見て頂きました。やはりU度熱傷で手術不要ということでした」という御返事をいただきました。「皮膚移植大好き医者」の魔の手かが逃げられて本当によかったです。ちなみに兼古先生は最も早い時期から湿潤治療を実践していて,私が最も信頼している医師の一人です。

 このようなメールを週に数通いただき,いずれも手術しなくて治っていますが,共通しているパターンは「受傷後12日目ころに主治医が植皮しないと治らないと説明した」という点にあります。なぜ「12日目」かというと,熱傷治療の教科書には「受傷後2週間で治らない熱傷はV度熱傷であり,植皮しないと治らない」と書いてあるからです。だから12日目ころに「すぐに手術しましょう」と説明するわけですね。逆に言うと,こういう説明をする医者は傷の状態を見て「これはV度熱傷で植皮が必要」と説明しているのでなく,カレンダーを見て「これはV度熱傷で植皮が必要」と判断しているのです。こういう診断法は「カレンダー診断法」,傷を見ずにカレンダーを見て手術を決める医者は「カレンダー医者」と呼ぶべきでしょう。
 ちなみに,熱傷学会とはこういう「カレンダー医者」を養成することを目的にしています。

 それと,植皮術をされた後に「湿潤治療で綺麗になりませんか?」というメールも時々いただきますが,さすがにこれは手遅れです。植皮されてしまっては打つ手がないからです。

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 本日も茨城隣県の●●県の●●大学病院形成外科から両側上肢の熱傷患者さん(1歳乳児)が逃げてこられました。手術をすぐにしないと感染を起こして大変なことになり,手も使えなくなるという説明を受けたそうですが,こんな小さな子供に手術なんて,ということでネット検索し,こちらを受診されたそうです。見ると,創部はゲーベンクリームガーゼでべっとりと覆われていました。いつもながらの前近代的治療で笑っちゃいました。
 親御さんには「時間は多少かかるけど,皮膚移植しなくても治るし,機能障害も起こらない。感染も起きないだろうし,たとえ感染が起きたとしても抗生物質ですぐに治るので怖くない」と説明しましたが,家族の方は「何で大学病院の先生はきちんと説明してくれないんでしょうか。皮膚移植以外に治療法があることを医者が知らないなんて不勉強にもほどがあります。医者ならもっと勉強して治療して欲しい」と憤慨なさっていました。
 というわけで,大学病院が「大学病院だから」という理由で患者が信用する時代でなくなりつつあるようです。●●大学病院形成外科が患者に信用されない治療をしている限り,今後も患者さんの流出は続くと思いますよ。

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 一昨日,神戸で開かれた【外来小児科学会 ワークショップ「熱傷の湿潤療法を学ぼう」】にオブザーバーとして参加しましたが,多くの小児科の先生方から「湿潤治療でこんなにひどいヤケドも外来通院でバシバシ治ってしまいました」と症例を提示していただきました。また,特に問題になるような合併症も起きていないようです。
 実際,小児科クリニックをちょっとした外傷やヤケドで受診する患者さんは少なくないと聞きますから,湿潤治療の知識のある小児科の先生方がチャチャッとヤケドを治せるようになると患者さんにとっても福音ですね。もちろん,小児科の先生にとってもメリットがありますしね。

 一方で,大学病院や総合病院,熱傷センターから患者さんが逃げ出して,「痛くなくて簡単に治る熱傷治療」を求めてこういう小児科や内科クリニックに逃げ込んでいるのも事実です。
 患者にとっては治療結果が全てです。患者さんにとっては熱傷学会も学会ガイドラインも知ったこっちゃないのです。熱傷専門医がガイドライン通りの治療をしていたとしても,全然治らないどころが日々悪化しているのを見たら患者さんは疑問に思うし,疑問に思ったらネットでもっと良い治療はないかと調べる時代です。要するに「患者にとって良い治療=ガイドライン治療」ではないのです。
 このあたりのことは熱傷学会内部にいたら絶対に気が付かないはずです。そしてこれは,他の学会(例:日本褥瘡学会)でも同じです。

 学会というのはタコ壺みたいなものです。タコ壺の中にいる限り安全だし,タコ壺の中ならお山の大将でいられます。しかし,時代が動いている時,タコ壺だけが時代の潮流に取り残され,タコ壺の中に安住していたらいつの間にか時代遅れになってしまいます。タコ壺の住人がそれに気付くのはタコ壺の外に出た時です。自分が時代に取り残されつつあるということに気が付きたくなければ,タコ壺の蓋を固く閉めて,外に出ないようにするしかありません。

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 1週間前に受診された下腿全周熱傷の患者さん,今日の診察でほぼ全て上皮化しました。普通に仕事もできているようでよかったです。
 「こんなにきれいに治るとは思わなかった。もうケロイドとかにはならないですよね?」というので,「どうしてケロイドになるって思うの?」と聞くと,「一番最初に見てもらった総合病院の医者が,この火傷は絶対にケロイドになり,きれいに治らない,って説明したから」だそうです。そして,自分の足を見て「これだとあと少しで痕も残らず治りますよね。なんであの医者,ケロイドって言ったんでしょうか? 自分の治療なら絶対にケロイドが残るから,という警告だったんでしょうか?」と笑っていました。
 ちなみにこの医者様は患者さんに,「この火傷は将来,皮膚がんになる」と断言したそうです。よほど,患者さんを脅すのがお好きなようです。

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 昨日また,ある病院の皮膚科から熱傷患者さんが逃げてきました。この病院からは毎週,数人の患者さんが逃げてきますが,今週はすでに3人目です。
 今回の患者さんはその病院での治療に怒り心頭で,「若い医者が何の説明もなしにいきなり水ぶくれの皮と取るんですよ。何かするんだったら説明するのが常識でしょう? 患者を人間扱いしていません。その後,軟膏ガーゼを当てるんだけど,それがすごく痛くて,居ても立ってもいられないくらい痛い。痛みで唸っていたら家族が,その病院じゃダメだ,全然痛くない治療をしている病院がある,って教えてくれて・・・」と憤慨していました。
 まぁ,毎度毎度,こういう話を患者さんから聞かされますが,気になったのはこの皮膚科の若い医者(研修医?)がどういう思いで治療をしているんだろうか,ということです。
 私は全国各地で研修医たちと話す機会がありますが,湿潤治療を知らない研修医はほとんどなく,全く知らないという研修医はごく稀です。ということは,上記の「若いお医者さん」も同じでしょう。湿潤治療について全く知らないという確率は極めて低いはずです。
 しかも,大学の同級生たちと連絡を取りあう機会もあるでしょうが,その際,「そっちの病院はまだ軟膏ガーゼで熱傷治療しているの? こっちは湿潤治療だけど,簡単に治るし痛みもないし,処置も簡単だよ。お前もやってみればいいのに」なんてやり取りだってあるはずです。そんな時,彼の心境はいかばかりだろうと思うのです。同じ研修医なのに,自分だけ取り残されているような寂しさは感じていないのでしょうか? そして翌日,受診予定の患者がいきなり来なくなったことをどう思っているのでしょうか?

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 [熱傷学会の小委員会のなかに『ラップ療法対策委員会』という委員会があるようだ]という話題にちょっと一言。
 規模と力から言えば,熱傷学会と湿潤治療はゾウとアリ,アメリカとアフリカの最貧国,横綱と序二段,スペースシャトルと竹とんぼくらいの違いがあります。横綱は弱い相手に対しては横綱相撲を取ればいいのです。泰然自若として慌てず騒がず,奇手に頼らず正攻法で相撲をとれば,相手は自然にこけます。それが横綱です。
 第一,熱傷学会の治療が正しければ,放っておいても医者も患者も熱傷学会の治療に戻ってきます。戻って来いと命令する必要はありませんし,湿潤治療をするなと規制する必要もありません。正しいことをしていれば,必ず理解してもらえるはずだと揺るがぬ自信を持っていることを相手に見せつければいいだけです。
 逆に,横綱が弱い相手に奇手を使って勝とうとしたら,かえって目立っちゃいます。それこそ,[もしかしたら熱傷学会の治療より湿潤治療のほうが優れているんじゃないの?]と痛くもない腹を探られます。だからこういう時は,下手に動かず,[正しい治療は強制しなくても広まっていく],[弱い犬ほどよく吠えるものよ]と腹の座った対応をすべきなんですね。横綱なんだから。

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 [このサイトの読者の一般人]さんから[熱傷学会の会長挨拶が面白いですよ]と教えていただきました。これを読むと色んなことが分かって面白いですよ。
 日本熱傷学会は日本形成外科学会の分家みたいな学会で,形成外科医が多数所属しています。だから,[形成外科医としての熱傷治療はどうあるべきか]について学会長が冒頭の挨拶で所信表明するわけです。それになんと書いてあるかというと,ぶっちゃけて言えば
  • 熱傷治療とは最初から[手術ありき]で考えるべきだ。
  • 手術以外の方法で熱傷が治るわけがない。手術以外の方法で熱傷を治すのは邪道である。
  • この学会は熱傷の手術治療だけ取り上げる学会である。手術以外の熱傷治療は存在しないのだから当然である。
 ということなんですよ。そういう本音を包み隠さず述べておられるわけです。ここには[手術しないで治るんだったら,患者にとってはそっちのほうがいいんじゃないの?]という視点は微塵もありません。要するに,患者さんを手術対象としてしか見ていないのです。そういうことがよくわかる挨拶文です。

 それにしても,医学学会の学会長がどんな挨拶をしていて,それは一般社会の常識とかなりズレていることが一般人にも分かってしまう時代になったということです。学会というタコ壺社会に隠れて安穏としていられると思っていたら,実はタコ壺は外から丸見えだった,という感じですね。(2011/06/03)

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 先日,教えていただいた日本皮膚科学会雑誌に掲載された九州大学皮膚科学教室の論文をゲットしました。読んでみると非常に面白いです。まず,治療方針としては
 患部の処置は微温湯による石鹸洗浄のみで消毒なし,フィブラストスプレーを散布してワセリン(炎症が強い場合はエキザルベ)を塗布したあと,穴あきポリエチレンビニールで覆い,ガーゼでその上を覆う。感染症状を認める場合にはゲーベン,カデックス,ユーパスタを使うが使用は最小限に止める。
という,大学病院では考えられない内容となっていて,フィブラストとエキザルベと石鹸洗浄を見なかったフリをすれば,極めて真っ当な治療となっています。まず何より,「傷を消毒して感染を予防し」という常套句がなく,「穴あきポリエチレンビニール」という非医療材料を使用していると明記している点にビックリします。というか,皮膚科学会雑誌の査読者はなぜ,「医療材料でないものを患者の治療に使うのはいかがなものか」と論文を突っ返さなかったのでしょうか。そちらのほうが不思議です。
 しかも,考察の中で
wet dressing法による有害事象は特に観察されなかった。(中略)V度熱傷と診断された例がDDBであった可能性は否定できない。 (V度熱傷は保存的に上皮化しないと言われていたが)V度熱傷は周囲から徐々に上皮化が見られた。従来は,消毒薬や抗菌外用剤を大量に使用するガーゼドレッシングを行っていたため,時に治療中に熱傷深度が深くなっていた可能性があると考えられた。
と,「従来の熱傷治療は間違っていたのではないか」と明確に言及しています。このあたりも,九州大学皮膚科学教室が日本熱傷学会治療ガイドラインに対して疑義を呈しているわけで,従来の「大学医局発の論文」としては異例のものではないかと思います。
 ちなみにこの論文によると,SDBは1週間前後で全例が完全上皮化し,DDBと判断された症例は12例中11例が3週間で90%以上上皮化し,外科的処置を要した症例は2例のみだったそうです。
 九州大学皮膚科学教室にアドバイスですが,石鹸洗浄をやめて微温湯洗浄だけにすれば,さらに患者さんに喜ばれると思います。界面活性剤って傷に付くと結構痛いんですよ。

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 10代の女性から4月中旬に次のような相談メールを頂きました。
 今年1月に湯たんぽでふくらはぎに低温火傷しました。近くの外科医院を受診し,「これは深くない低温火傷ですぐに治るよ」と説明を受けましたが,3ヶ月間通院しているのに治りません。毎日通院しては消毒してユーパスタという軟膏で治療を受けています。どうしたらいいでしょうか?
 それに対し,湿潤治療について説明したところ,2週間ぶりに返事を頂きました。
 あれから通院しているお医者さんに電話して聞いたら「ユーパスタは直接傷に塗る薬だから大丈夫だ!」と言われ,その答えを聞いて通院するのを止め,自分でワセリン+ラップで処置してみました。そうした,10日ほどで治っちゃいました。
 3ヶ月間毎日,ユーパスタぬって通院してたのが馬鹿みたいです。自分が無知だったのがいけないのかもしれませんが医療費も時間も返してほしいくらいです。
 何はともあれ,治ってよかったですね。ちなみにこういう場合,「ユーパスタは治療薬だ」と信じ込んでいる医者自身とユーパスタが治癒の阻害因子だったことがわかります。「ユーパスタは傷に塗る薬だから大丈夫」という医者の答えを聞いて,この医者じゃ駄目だ,と判断した10代女性はこの「ユーパスタ医者」より正しい知識と的確な判断力を持っていたわけで,頼もしい限りです。
 それにしても,患者に「この医者,駄目だわ」ってダメ出しされる外科医ってどうよ。

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 原発事故で東電や原子力保安院などの関係者に「それは本当に安全な状態なのですか?」と質問すれば,「安全です」とは絶対に言わないはずだ。100%安全な状態なんてあり得ないからだ。これを読んでいるあなたが今日,交通事故に遭う確率だってゼロではないし,直下型大地震があなたが住んでいる街を襲う確率だってゼロではない。それと同じである。
 では,東電や保安院の人にどう質問したらいいのだろうか? 私なら「あなたは福島県○○町に住もうと思いますか? あなたの家族を呼び寄せて住みますか?」と質問する。そうすれば「安全基準を上回っているが普通に生活できる程度なので,私なら住みますね」とか,「生まれたばかりの子供と嫁さんは実家に預けますが,自分はここで仕事を続けると思います。その程度には安全ですから」とか,「私は絶対に暮らしたくないです」というような答えが返ってくると思う。こういう答えなら危険性の度合いが誰にだってわかる。

 ちなみに,私は治療法を選択(保存的治療で引っ張るか手術に踏み切るのか,手術するとしたどの方法にするのか・・・など)する際には,「これが自分の家族・子供だったらどちらを選ぶか?」で決めることにしている。自分の家族にはとてもできない治療だな,と思ったら,その治療法は患者に適応してはいけないのだと考えるようにしている。
 だから,ヤケドをして主治医から「これは皮膚移植するしかないです」と説明を受けたら,是非その主治医に「では,先生のお子さんが同じ状態だったら,皮膚移植をご自分でしますか? それとも別の治療法を選びますか?」と質問してほしい。「自分の子どもならためらわずに植皮をします」と答えるだろうかとちょっと疑問である。

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 なんと昨日,鳥取県から3歳の熱傷患者さんが受診されました。先週,熱い味噌汁で前腕と大腿に熱傷。直ちに〇〇大学病院を受診し,皮膚科で治療を受けていたようです。しかし,処置のたびに我が子が泣き叫び,ガーゼを剥がすたびに出血する様子を見てご両親は,「こういう治療は間違っている。こんな治療が正しい訳がない。こんな治療から子どもを守らなければいけない!」と〇〇大学病院の治療に疑問を持ち,ネットで検索してはるばる当科を受診されたそうです。
 そして診察しましたが,ガーゼがベッタリとくっついていて剥がすだけでも大騒ぎだし,剥がすと出血します。これが自分の子どもなら泣くしかないです。
 で,いつものように
プラスモイストで被覆したら,ほどなく泣き止みました。「痛い?」と聞くと「痛くない」とのことで泣かずに答えてくれました。よかったです。
 それにしても,鳥取県の〇〇大学附属病院皮膚科のお医者様,こんな治療をしているとどんどん患者さんが逃げちゃうよ。お医者様の古い説明を鵜呑みにする無知な患者さんばかりでなくなったんだよ。患者さんは必死に勉強して,世の中にははるかに良い治療があることを知っているんだよ。

 な〜んて思っていたら,午後には福島県いわき市の〇〇病院形成外科から熱傷の乳児が逃げてきました。この病院からもよく患者さんが逃げて来ますね。案の定,軟膏ガーゼの治療でしたが,主治医はご両親に「ガーゼは死んだ皮膚がくっついて除去できるから早く治ります。湿潤療法では駄目!」と説明していたそうです。ご両親はこの説明を聞いて,「ガーゼに死んだ皮膚がくっつく? こいつ,アホか? こんなバカなことを言う医者は信用おけない!」と見切りをつけて,県境を越えて受診されたそうです。素人から「この医者,アホじゃないか?」と呆れられるお医者様,ご愁傷さまでございます。

 いずれにしても,お医者様が勉強をせずに古い知識にこだわっている隙に,素人がはるか先を走っている時代になりつつあります。時代の変化に気がついていないのは熱傷専門家を自認するお医者様だけです。 (2/22)

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 「気道熱傷」という言葉がある。もちろん,医学の専門用語だ。昔からこの言葉に違和感を感じてきた。だって,気道はヤケドしていないんだもの。
 気道熱傷とは通常,「火事の煙を吸い込む」=「気道熱傷」と診断される(少なくとも私はそう習ってきた)。だが,これまでそういう「気道熱傷」の患者さんを多数見てきたが,ほとんどは「顔にちょっと水ぶくれがあり,鼻毛の一部にススが付いている」程度の患者なのである。こういう状態の患者の「気道」はヤケドしているのだろうか?
 もしも本当に,気道(=上気道,中気道,下気道)に熱が及んでいるとしたら,顔も鼻も丸焼けになっているはずであり,「顔は水ぶくれ程度だが,中咽頭に熱が加わってヤケド」ということは,物理的に絶対にあり得ないはずなのだ。つまり,こういう顔面熱傷患者では,気道への熱による損傷は起きていないと考えるのが妥当だ。
 では「気道熱傷」とは一体何なのか。それは物体の燃焼によって発生する化学物質や有害ガス,ススによる気管支炎,肺炎である。つまり,熱による損傷ではなく,化学物質などにより起きた炎症であり,熱傷(=外科的外傷)ではなく気管支や肺の化学物質による炎症(=内科疾患)なのである。
 そういうわけで私は,
陥入爪(爪が湾曲しているから炎症が起こるのでなく,深爪するから炎症が起きている)と同様,気道熱傷という病名は医学界から追放すべきだと思う。ともすれば,病名は治療法や治療法の選択に強く影響を与え,場合によっては治療法の選択を誤る(例:陥入爪という病名だから,爪の湾曲を治療しなければいけないと考える原因となるからだ。(2/17)

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 世の中の「反湿潤治療」の形成外科の先生方,熱傷専門家の先生方に,患者さんが「自分のヤケドも同じ方法でなぜ治してくれないのか? なぜ治せないのか?」と質問すると,彼らは決まって「湿潤治療? 知っているけど,あれは軽いヤケドばかりだ。だから,あなたのような重傷のヤケドには効かない。あなたのヤケドは皮膚移植しないと治らない」と説明するのが通例のようだ(・・・ちなみに,こういう説明をした医者の個人名を把握しています)
 今回は,この「軽いヤケド」問題を取り上げることにしよう。

 このサイトで提示している熱傷症例は確かに軽いものが多い。それは二つの理由が考えられる。
  1. そもそも熱傷患者の大半は小範囲熱傷であり,15%以上の熱傷は実際はそれほど多くない。
  2. 熱傷センターでもなく,大学病院でもなく,形成外科医が一人しかいない病院にそもそも広範囲熱傷は運ばれない。
 大学病院や熱傷センターでだけ仕事をしていると,世の中の熱傷患者はすべて重傷熱傷,広範囲熱傷だけと錯覚してしまうが,市中病院の外来に出てみるとわかるが,熱傷患者のほとんどは熱傷面積2%以下であり,10%を越える熱傷は非常に少ないのだ。
 つまり,市中病院の医者は軽傷熱傷・小範囲熱傷が治療できれば,熱傷患者の9割以上(・・・というか恐らく95%以上)を治療できたことになるのだ。患者の9割以上が治療できるなら,常識的に意味合いでは「完璧な治療」の範疇にはいる。
 そして,小範囲の熱傷がきちんと治療できるようになれば,中範囲熱傷も広範囲熱傷もその延長線上に過ぎず,なにも特殊な知識も技術もいらない(それがなぜかは,近々出版予定の拙書『熱傷マニュアル(仮題)』で詳しく説明してある)。逆に言えば,小範囲の熱傷もろくに治療できない医者に,広範囲熱傷の治療ができるわけがないのである。要するに,熱傷治療の基本は「小範囲熱傷の局所治療がきちんとできる」ことであり,「広範囲重傷熱傷の全身管理ができる」ことではないのである。

 なぜこんなことを書くかというと,「広範囲熱傷,重傷熱傷」と騒いでいる先生ほど,小範囲熱傷の治療がまるでできていないからである。これはこのサイトの
「熱傷症例のすべて」を見るとよくわかるはずだ。大学病院や熱傷センターで「これはV度熱傷で植皮しないと治らない」と言われた症例に限って,小範囲でU度熱傷でない軽傷熱傷ばかりだからだ。こんな「小範囲・U度熱傷」もろくに治せない・診断もできていない医者に,広範囲熱傷を治せるはずはないと考える方が自然ではないだろうか。
 別にケンカを売るわけではないが,こういう「軽症熱傷の診断・治療はできないが,広範囲V度熱傷の治療はできている」と主張する医者は要するに,「足し算(=小範囲の軽傷熱傷の治療)はできないが,微積分(=広範囲重傷熱傷の治療)はできる」と言っているのと同じではないかと思うのだ。常識的に考えれば,「足し算ができないのに微積はできる? オイオイ,それってお笑いネタか?」と思わないだろうか? やはり,微積に挑戦する前に,まず足し算・引き算を間違いなくできるように勉強したほうがいいんじゃないか,と私は思うのだ。
 ・・・というわけで,「足し算や引き算はできないが,微積分の計算ならできるんだ!」という形成外科・熱傷治療専門の先生方からの反論,心からお待ち申し上げております。

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 『熱傷治療“裏”マニュアル』の校正が最終段階に入ったが,読み直してみて,今回は積み残した「熱傷についてのさまざまなこと」があることに気がつく。それについて,折を見て書き連ねていってみようと思う。

 従来の治療(=消毒と軟膏ガーゼで乾燥させる)で瘢痕治癒させた顔面熱傷,あるいは皮膚移植で治療した顔面熱傷は同じような顔になることをご存知だろうか。要するに,受傷前は別々の顔だったのに,瘢痕治癒させた顔面熱傷はどれも似たような顔になるのだ。どういう顔になるかというと,「口が小さい」+「鼻も小さく低い」+「下眼瞼が外反」+「硬く動かない皮膚」である。このため,どの患者さんも判で押したような顔になる。
 これを別の言い方をすると,「瘢痕治癒・皮膚移植した顔面熱傷では患者同士が似ている/それぞれの親兄弟とは似ていない顔になる」ということになる。
 「患者同士が似ていて,それぞれの親兄弟とは似ていない」というのは実は医学では珍しいことではない。その典型は体表先天異常症候群(Treacher Collins症候群,Oro-Facial Digital症候群など)だ。体表先天異常の多くは「特有な顔貌」が重要な症状であり,慣れた医者なら顔を一目見ただけで「この子は○○症候群じゃないか?」と見抜くはずだ。なぜ一目で診断できるかというと,症候群に特有の顔貌があり,患者同士がよく似ているからだ。逆の言い方をすると,患者同士は似ているのに,それぞれの親兄弟とは全く似ていないのである。

 これをさらに別の言い方をすれば,「(ある種の)病気は顔の個性を奪う」ということになりそうだ(そういえば,肥満者の顔はどれも似ているが,これも同じ?)。これからすると,「治療とは病気によって奪われた個性を取り戻すこと」と言うことになるはずだ。つまり,治療とは「(病気によって個性を奪われた)患者同士で似ている顔から,(本来の)それぞれの親兄弟に似ている個性豊かな顔にするの」行為だと言えないだろうか。
 これを踏まえて,「瘢痕治癒させたり皮膚移植した熱傷患者の顔は,どれも似たようになる」という現象をどう考えたらいいのだろうか。これは要するに,「受傷前の個性的な顔立ちを,治療により無個性な顔にした」ということにならないだろうか。これはつまり,「治療とは病気により個性が奪われた患者を元通りの個性を取り戻すもの」という私の定義の真逆である。熱傷受傷前の患者さんはもちろん,親や兄弟に似た顔立ちをしていたはずだ。しかし,顔面熱傷を受傷して「消毒して乾燥」という旧来の熱傷治療を受けると本来の顔立ちを失ってしまうのだ。

 このように考えると,「患者の個性を奪って無個性な顔にする旧来の熱傷治療」とは,本来の意味でも「治療」といえるのか,と思ってしまうのだ。一生懸命に治療をした結果が,「どれも似たような顔」というのは,治療として情けないと思うのだ。
 一生懸命に顔面熱傷を皮膚移植で治している熱傷専門医の先生方には悪いが,私は「努力して治療した結果がこの程度というのは,そもそも治療の方向性が最初から間違っていたからではないのか?」と思ってしまうのだ。

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 某医科大学救命センターの先生から熱傷治療について質問を受けたことがあります2010年8月30日の更新履歴参照)。なんとか湿潤治療を始め,それで上皮化が順調に進んだそうです。それで,そろそろ外来通院でもいいよね,ということで外来フォローのために同院形成外科を紹介したら,いきなり植皮をされちゃったそうです。その先生から,「形成外科に紹介なんかせずに,自分が最後まで見ていれば良かった。そう思うと悔しいです」とのメールを頂きました。

 だから,形成外科医に紹介しちゃ駄目なんですよ。形成外科というのは手術することでメシを食う職業ですから,皮膚移植が必要かどうかではなく,傷があるから皮膚移植をします。皮膚移植せずに治してしまったら形成外科はメシが食えません。だから,手当たりしだいに植皮をします。そのため,「もうちょっとで治りそうなヤケド」を形成外科に紹介すると,彼らは条件反射的に植皮をしちゃうのです。
 こういう悲劇を繰り返さないためにも,この某医科大学救命センターでは「熱傷患者は形成外科に紹介しない」というルールを作るしかないです。

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 『熱傷治療“裏”マニュアル(仮題)』の執筆を進めています。参考にするためにいろいろな熱傷治療の教科書やマニュアルを読んでいるのですが,日本熱傷学会の『熱傷診療ガイドライン(2009年)』を読んで愕然としたのは,このガイドラインに「疼痛治療」という項目が一切ないことでした。「熱傷では疼痛は大した症状ではない」というのならわかりますが,熱傷で疼痛はもっとも激烈な症状の一つです。「熱傷は人類最大のストレス」と表現する医者もいるくらいです。
 それなのになぜ,学会公認の「ガイドライン」に疼痛対策の指針が書かれていないかといえば,対策がないからです。例えば,2003年の雑誌「救急医学」の熱傷特集号には「創が閉鎖するまで疼痛が持続するのが特徴」,「NSAIDSは効果がない」と悲劇的な言葉で埋め尽くされています。要するに,打つ手なしです。これが現在にいたるまで熱傷治療専門医の共通認識です。だから,2009年の学会ガイドラインには疼痛対策という項目そのものがないのでしょう。
 しかし一方で,「熱傷は痛くない」ことを知っている医者はいます。湿潤治療をしている医者たちです。もちろん彼らは,熱傷治療の専門家ではなく,単に「ケガの湿潤治療」の延長として熱傷治療をしているだけです。彼らの治療を受けている熱傷患者は「痛みのない熱傷治療」を体験しているはずです。

 では,従来の熱傷治療をしている医者と湿潤治療をしている医者の間で,熱傷の疼痛治療について議論が成り立つでしょうか? もちろん,議論は成立しません。「痛みは熱傷に付き物で治療法がない」ことを前提に治療体系を組み立てている医者たちと「熱傷は痛くないのが当たり前。痛かったら異常事態」と考えている医者では,共通概念すらないからです。これは天動説の天文学者と地動説の天文学者の間では議論が成立しなかったのと同じです。
 同様に,「熱傷の創感染」,「熱傷創に対する消毒の必要性」という言葉でも議論は成立しません。同じ「創感染」「消毒」という言葉を使っていても,実はその中身はまるで違っていて共通概念がありません。これは天動説の天文学者のいう「星」という言葉と地動説の「星」という言葉は,言葉としては同じだが概念は全く違っているのと同じです。天動説側の人に「地動説の星」を理解しろと言っても通じません。
 こういう連中は死ぬまで「熱傷の痛みは治療法がないから諦めろ」と患者に言い,「熱傷に消毒は付き物だ」と消毒し続けます。要するに「生きているだけで患者に害悪」という医者です。

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 ヤケドといえば,先日も,茨城県内の某総合病院形成外科から逃げてきた熱傷患者さんが受診されましたが,創面はほとんど上皮化していて,潰瘍が散在している程度でした。

 この患者さんに対し,形成外科の先生は「皮膚移植しないと治らないので手術します」と説明したんだってさ。一体どこに皮膚移植するつもりだったのでしょうか。まさか,再生した皮膚を全て剥ぎ取って新たに皮膚移植でもしようとしていたんでしょうか。これが「形成外科の常識,熱傷治療の常識」とは信じたくないですが,このように患者に説明する形成外科医は少なくないのです。証拠写真ならいくらでもあります。
 はっきり言えるのは,この形成外科医はこれまで何度も,こういう熱傷患者に対し皮膚移植を行ってきた可能性が高い,ということです。

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 そういえば先日,患者さんからすごい話を聞きました。
 頚部,顔面,両側上肢の熱傷で,当初はIBRK県M市の某総合病院形成外科で
テラジアパスタで治療を受けていたそうです。患者さんが「湿潤治療でよくなったという話を聞いたので治療をしている病院で話を聞いてみたい」と話したところ,主治医の顔色が見る間に変わり,それまで皮膚移植のことなんて一言も話していなかったのに,「湿潤治療なんて駄目だ。直ちに手術しないといけない。すぐに皮膚移植をしないと感染で死んでしまう。湿潤治療なんて受けたら皮膚癌で死んでしまう。それでもいいのか!」と恫喝してきたんだとか。
 もちろん患者さんは医者より利口ですから,その医者の態度の豹変に胡散臭さを感じ,強引に湿潤治療をしている別の病院(私の病院じゃないです)を受診し,私も一度診察させていただきましたが,あと3週間で上皮化完了かな,という感じでした。
 それにしても,「湿潤治療と聞いた途端に形成外科医の顔色が変わり,突然,手術が必要とまくし立てた」というところがすごいですね。
 ちなみに,この患者さんによると,「テラジアパスタってすごく痛い軟膏なんですよ。テラジアパスタを止めたら痛みがなくなりました」と言っていました。

 というわけで,熱傷患者の最大の敵は「湿潤治療を知らない/湿潤治療を目の敵にしている形成外科医と熱傷専門医」です。こいつらに熱傷治療をさせるべきではありません。上記のようなバカ医者を撲滅するためには,形成外科医以外の医者が簡単に熱傷治療をして,「火傷をして総合病院にいくと治らないけど,あそこの内科クリニックに行くとすぐに治るよ」がその地域の常識となり,総合病院形成外科に熱傷患者が受診しなくなる世の中にするしかありません。

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 先日の私の講演の前にきよすクリニック伊藤喜亮先生にも話していただきましたが,もともと内科のクリニックなのに,昨年1年間で50人の熱傷患者と150人のトビヒ(伝染性膿痂疹)の患者さんが受診された,という話はとても面白かったです。特に,熱傷の新患が50人受診されたというのはすごいと思います。また,外傷や熱傷で受診された患者さんが,それまで高血圧や糖尿病で他院に通院していたのに,それを機に伊藤先生のクリニックに通うようになるという例もあって,湿潤治療の導入は経営的にもプラスになっているそうです。
 講演終了後の懇親会でも「熱傷治療の知識のない内科医でもかなりの受傷面積の熱傷が問題なく治療できるのであれば,熱傷学会も熱傷センターも不要になるんじゃないか?」と話題になりました。何しろ,熱傷面積の計算の仕方も知らない,2度熱傷と3度熱傷の違いもよくわからない医者でも簡単に熱傷が治せるのですから,そもそも熱傷治療の知識自体が不要なんですね。
 こういう話題を振ると,熱傷専門医や形成外科医からは必ず,「全身熱傷は別だろう,全身熱傷は内科医では治せない」と反論・反発をいただきます。こういう反論に対し私は,「では,全身熱傷は一年で何例あるのですか? 一年に数例の全身熱傷は先生方が治療してください。それ以外の熱傷は私たちが治療します。どうぞ,全身熱傷だけ治療してください。そして好きなだけ植皮をしてください」と回答します。

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 湿潤治療で熱傷治療をするようになった形成外科医から,「植皮が激減し,売り上げが落ちて困っている」と言われることが多い。実はこういうことは昔から何度もあったのだ。
 例えば,私が学生の頃にはまだ胃潰瘍は手術治療するのが常識だった。当時は恐らく,多くの外科医は胃潰瘍の手術で飯を食っていたはずだ。ところがH2ブロッカーなどの登場で胃潰瘍は外科的疾患から内科的疾患になってしまった。当然,胃潰瘍の手術で飯を食っていた外科医は困ったはずだ。収入が減った,どころではなかったはずだ。
 同じようなことは,虫垂炎の手術,胆石の手術にもあった。さらにその前の時代まで遡ると,20世紀初頭までは虫垂炎も胆石も内科疾患であり,アヘンと下剤が唯一の治療薬だった。そういえば,多くの精神疾患を脳外科が治療していた時代もそんなに昔ではない。御存知,ロボトミーである。向精神薬が開発され,一番困ったのはロボトミーで食っていた脳外科医だった。向精神薬の開発者に「お前のおかげで俺たちは喰えなくなった。どうしてくれるんだ」と,さぞかし食って掛かったことだろう。

 要するにある疾患をどの診療科が担当するかは,常に変化してきたのだ。そのたびに,担当部署から外れた医者は飯が食えなくなり,そのつど新しい飯の種を見つけた者のみが生き延びてきたのだ。
 そして,21世紀になり湿潤治療の出現で,熱傷治療が外科的疾患から内科的疾患に変わる番になっただけのことだと思う。だから,胃潰瘍手術で飯を食っている外科医が医者が困ったように,植皮術で飯を食っている医者が困る時代になるのだ。まさに,時代は繰り返す,である。

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 講演後の質疑応答で皮膚科や形成外科の先生から必ず出されるのが「広範囲熱傷をどう治療するか」という問題です。私は正直に,ここ数年間で治療しているのはせいぜい30%くらいまでで,それ以上の範囲のものは治療する機会がなかったのでよくわからない,経験がないことは話せない,と解答するのですが,するとその先生方はまるで鬼の首でも取ったみたいに「現在80%の熱傷を治療している」とか「60%を超えた場合には先生の説明のとおりの反応をするのか」というように反論があります。

 ごもっともなご意見なんですが,冷静に考えるとわかりますが,恐らく全熱傷患者の99%は5%以下の面積で,それらの大多数は1度から2度の浅い熱傷じゃないでしょうか(熱傷症例全体の統計を調べたわけではありませんが・・・)
 それ以上の面積のものは大学病院の救急室,熱傷センターに集められるため,それらで熱傷治療をしている先生方は,世の中の熱傷患者は広範囲熱傷だけ,と勘違いされているのではないでしょうか。だから,小範囲の熱傷なんて存在しないのも同然だし,広範囲熱傷を治療するのが熱傷専門医だと考えるし,広範囲熱傷を治療することが熱傷治療だと思ってしまう。

 でも,私は正直に言うと,広範囲熱傷なんてどうだっていいと考えています。広範囲熱傷以外の患者,つまり,全熱傷患者の99%が救えたらそれでいいかな,と思っています。99%が救えたらそれでいいじゃん,残りの1%にも満たない広範囲熱傷が救えなくてもそれは仕方ないじゃん,99%の熱傷患者が痛みから解放されたらそれで大満足なんですよ。
 一般市民に「お湯でやけどしたらとりあえず冷やして,そのあとはラップにワセリンを塗ってあてると,痛みがなくなるんだよ」という知識が普及したら,それで満足なんですよ。広範囲熱傷患者さんは熱傷センターや大学病院で従来どおりの治療を受け,痛みにのたうち回っているかもしれないけど,それは諦めてもらうしかない,と・・・。

 とは言っても,広範囲熱傷についてちょっと。
 広範囲熱傷の正確な統計を見たわけでありませんが,広範囲のやけどの受傷原因は熱湯によるものでしょう。熱いお風呂に慌てて飛び込んでしまったとか,シャワーを浴びようとしたら熱湯が出てきたとかです。だから,広範囲といってもその大部分は2度の浅い熱傷でしょう。最初から2度の深い熱傷になるためには,高温の熱源にある時間以上接し続けていることが絶対条件になりますから,それが広範囲に及ぶという常態は実はあまりないはずです。広範囲の「2度の深い熱傷〜3度熱傷」は火災現場で炎に包まれたとか,ガソリンをかぶっての自殺とか,非日常的な状況下ではないかと思います。
 だったら,とりあえずラップで覆って痛みをとってあげるだけでも全身状態の悪化はある程度食い止められるのではないでしょうか。痛みを放置すると,さまざまなケミカルメディエータの放出が続き,それがさらに全身状態を悪化させ,それがさらなるメディエータの放出を引き起こし・・・という連鎖に入り込んでしまうからです。なら,痛みをとってあげたら,と思うのです。要するに,その広範囲熱傷患者さんの状態悪化の原因の一つは痛みなんだから,まずその痛みをとってあげようよ,というわけです。だって,痛みをとるのは簡単なんだから・・・。
 逆に,痛みをとる処置をしないで,全身状態が悪化するのはある意味,当たり前ではないかと思うのです。

 というわけで,現時点では広範囲熱傷はどうでもいいから,まず私の身の回りにいる軽症熱傷患者を救ってあげるだけで満足です。それで大部分の熱傷患者さんが救われるからです。
 そして,現在,大学病院や熱傷センターで熱傷治療を牛耳っている医者(多分,私と同年齢でしょう)が死亡するか引退し,「熱傷ってラップとワセリンで痛みがなくなるんだよね」ということを最初から知っている若い世代がそれらの施設のトップに立った時にようやく,広範囲熱傷の新時代の治療への模索が始まるんじゃないかと思います。多分その頃には私も死ぬか引退していると思いますけどね。

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講演でいろいろな質問をいただいたのですが,そこで思ったのは,「熱傷治療には古くからの滓(おり)が積み重なっている部分が放置されていて,処置法や軟膏の選択が正しいかどうかがわかりにくくなっているのではないか」ということでした。

 これは高血圧の治療あたりと比べると一目瞭然です。高血圧の場合には,塩分を控えろ,あたりから始まり,薬剤は利尿剤やらβブロッカーやらカルシウム拮抗剤やらを使っていると思いますが,なぜその薬を使うのか,その薬剤はどういう風に作用するのか,なぜその薬剤が効くのかは論理が明白です。これは高脂血症の薬,痛風の薬についても同じです。原因があって結果(=病気)があって,その原因に対する対処法としての薬剤投与,という手順を踏んでいるため,論理が明白なんですね。

 ところが熱傷治療の場合,古くからの伝承的治療が残っている部分があり(例:軟膏の選択・・・そういえば,皮膚科学会宮城地方会で「ゲーベンクリームは絶対に必要です」とまくし立ててきた女医さんがいましたね),それを長年行ってきて体に馴染んでいるため,必要なものかどうかの判断しにくくなっているのですね。こういう部分が熱傷治療にはかなりあるため,新しい治療を提唱しようにもその古い「滓」が邪魔をする,という構図ではないかと思います。
 だから,現在の熱傷治療の論理をベースにして新しい治療法を模索するのは不可能なんですよ。新しい方法を構築しようとしても,古い「滓」が顔を出してしゃしゃり出てくるからです。

 では,どうしたらいいのか。私は,これまでの熱傷治療の論理をすべて捨て去り,「とりあえず最もシンプルな治療法をベースにしてそれのみを行い,それで何かトラブルがあったら古い時代の軟膏や薬剤でなく,病態から考えた新しい治療薬や治療法を加えていく」という方法しかないと思っています。つまり,これ以上シンプルにできないという基底状態をまず作り,そこから出発するわけです。
 また,このときに必要なのは「創感染が起きたからゲーベンクリームを使ってみよう」とか「アズノール軟膏はどうだ」というような古い「滓」を持ち出さないことです。それを許すと,「ソフラチュールも使っていいのでは」,「シリコンガーゼもいいはず」なんてなってしまい,結局,古い時代の熱傷治療の逆戻りになります。基底状態に付け加えるべきは,新しい治療法であり,論理的に考えて新たに開発した薬剤でなければいけないのです。

 熱傷治療についてこのように提案をしているつもりなのですが,どうも熱傷専門家の先生には通じていないようで残念です。

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 昨日,埼玉県の某病院で治療を受けていた下腿熱傷患者さんが当科を受診されました。傷は既に上皮化していましたが,左下腿外側から足関節にかけての肥厚性瘢痕と足関節部の軽度の瘢痕拘縮を認めました。しかし足関節の運動障害はなく,経過観察としました。どういう治療を受けていたかを訊ねたところ,「エルタシン軟膏(=ゲンタシン軟膏)とトレックスガーゼ,その上をガーゼで覆う」という治療だったようです。
 以前なら,「熱傷による肥厚性瘢痕と瘢痕拘縮,ふーん,それって当たり前じゃん」と考えていたところですが,「当たり前」じゃないんですよ。なぜって,過去5年間で,熱傷で肥厚性瘢痕と瘢痕拘縮をきたしたのは,乳児の手掌熱傷のみで,それ以外の熱傷患者さんで肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮が発生した症例はほとんどないからです。「熱傷の湿潤治療」に完全移行してからは,肥厚性瘢痕そのものがほとんど発生していません

 湿潤治療では早期に上皮化するということもありますが,面積が広い3度熱傷で保存的治療した症例で上皮化に半年以上要した場合(これはいずれ,写真つきで当サイトで公開します)でも,瘢痕拘縮も肥厚性瘢痕も起きていないのです。これは明らかに,従来の熱傷の教科書に書かれている事実に反しています。つまり,目の前の症例が正しいとしたら,間違っているのは熱傷治療の教科書です。

 もしかしたら,現在の熱傷治療の教科書に書かれている「肥厚性瘢痕」や「瘢痕拘縮」は,従来からの旧習的な「消毒して軟膏ガーゼ治療」そのものが発生原因,要するに医原性だったのではないかと思われます。なぜかというと,「湿潤治療で上皮化に数ヶ月かかっても,瘢痕拘縮はほとんどなく,肥厚性瘢痕もなく,1年くらい経過すると傷跡はほとんど残っていないし運動障害もない」という事実があるからです。

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 つい最近,某県某市の某総合病院形成外科で熱傷治療を受けていた患者さんがこちらの外来を受診されました。1歳くらいの男児で手の熱傷なんですが,その病院では「3度熱傷で植皮をしなければ手が使えなくなる。感染を起こして敗血症になることもある」といわれ,親御さんがどうにも納得できなくてインターネットで検索し・・・という患者さんです。受傷後,1週間くらいでの受診だったかな。
 で,患部を見るとゲーベンクリームがべっとり! それを洗い流してみると破れた水疱膜がそのまま放置されていて,それを取り除いてみたらきれいな創面が出現。どう見ても2度の浅い熱傷,部分的にちょっぴり2度の深い部分かな,という感じです。どう見ても3度ではありません。
 で,治療方法について詳しく説明し,プラスモイストを貼付してみました。翌日診察したら,もう既にうっすらと上皮が創面を覆い始め,それから1週間で完治しました。敗血症も起こさず,手が使えなくなることもなく,植皮もせずに治っちゃいました。

 さてこの症例ですが,幾つか教えられる点があります。
 まず,ゲーベンクリームを使っていたのに創面が深くなっていないこと。これは水疱膜を取らずにその上からゲーベンを塗りたくっていたため,水疱膜がゲーベンから守ってくれたんですね。水疱膜を除去するという手間すら惜しむ形成外科医でよかったです。
 それから,「この熱傷は3度熱傷か2度熱傷か」という熱傷治療の基本中の基本すらできていない「熱傷専門医」が世の中にゴロゴロいるかもしれない,ということです。要するに,碌に創面を見ていない熱傷専門医なんでしょう。ま,創面を見ていながら2度熱傷と3度熱傷の区別もつかない「熱傷専門医」ってのも見たことがあるけど・・・。

 そういえば,以前の講演会の懇親会で,「救急外来で研修医がラップで治療するとすぐに治るんだけど,そのあと形成外科に紹介すると,こんな治療は駄目だとラップを剥がしてベーゲンクリーム・ガーゼで傷を覆うんですよ。そうすると,みんな3度熱傷になっちゃって植皮術になっています。研修医がラップで治療した方がはるかに速く治っているんですが,これってどうしたらいいんでしょうか?」と質問されたこともあります。熱傷専門医って,それまでの熱傷治療に固執するから,こうなっちゃうんですね。専門医のプライド,ってやつです。でも,自分のプライドを守るんじゃなく,患者を守れよ,って言ってあげたくなります。

 そのうち,一般市民の間にも「ちょっとしたやけどはラップで治る」という知識が普及したら,熱傷専門医だけが一時代前の古臭い熱傷治療をしていることになるんじゃないでしょうか。このままじゃ,数年後には世間の笑いものになっちゃうよ,熱傷専門医。

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 昨日の昼食時,鳥谷部先生と雑談。その時にちょっと話題になったのが熱傷とその治療についてでした。なぜ熱傷創は他の外傷と違って感染が多いのか,いろいろな問題が生じるのか,というあたりの問題です。
 そこでの結論。「熱傷は人類(動物)創造の神様の想定外」

 野生動物が熱傷になるんだろうか,と考えて見ます。多分,熱傷になる機会は滅多にありません。山火事に遭遇するとか(・・・人類が火を使い始める前,火事ってあったんだろうか?),火山噴火したとか,極めて限られた状況しか思いつきません。つまり,熱傷という皮膚損傷は「本来起こりえない状況」ではないかと思われます。
 人間に熱傷が多いのは,熱源を日常的に使っているからです。火をプロメテウスが盗んだ時に初めて,生物は熱傷に遭遇したはずです。それ以前には,熱傷は生物史にはほとんど存在しなかったはずです。ごくたまに,火山噴火などで熱傷を負った生物はいたでしょうが,ほとんどは瞬時に死んだと思われます。

 で,あなたが生物創造の神だったら,どう考えるでしょうか。多分,神様も動物が火を使うようになるとは想定しなかったでしょうから,生物の体は熱傷を想定せずに組み立てたはずです(真空状態で生物が生きられないのは,真空で生物が生きるようにできていないから。熱傷もそれと同じ)

 神様はあらかじめ,どういうケガ(皮膚損傷)をするかを想定し,それへの対策をプログラムしたはずです。野生状態(=人類出現以前の状態)の動物が遭遇するであろう外傷をリストアップし,
  • 生命維持機能への損傷(心臓や肺の損傷,脳の損傷)に対しては「これが起きたらどうしようもないから対応しない(修復機能を持たせない)
  • 生命維持に必要な器官の損傷(関節損傷など)に対しても「これが起きたら動けなくなって他の動物に食われるだけだから,自動修復機能は持たせない」
  • それ以外の損傷については「これくらいは自分で治せるようにしよう(自動修復機能を持たせよう)
と考えるはずです。
 そのとき神様は,「皮膚が焼けて苦しむなんて,自然界ではおきるわけがない」と考えたはずです。

 そしてもう一つ重要なのは,皮膚常在菌の問題です。動物は皮膚常在菌に「外来病原菌進入防御システム」の一部を業務委託しています。しかし,表皮ブドウ球菌に都合のいい皮膚環境を作ったとき,黄色ブドウ球菌もくっついてきちゃった。黄色ブドウ球菌は普通の傷(裂傷とか擦過傷とか)を化膿させることはあるけれど,それは既に織り込み済み。対処できるシステムを神様が作ってくれています。かくして,表皮ブドウ球菌(部分的に黄色ブドウ球菌混在)込みの皮膚構造の基本設計ができ,創造神が人類を作ったわけです(・・・多分)
 この基本設計企画書に,熱傷への対処は入っていません。そういう外傷は自然界で起きないからです。起きない外傷への対処を組み入れるのは意味がないからです。起きない外傷を想定するのでなく,起きる外傷を想定してそれへの対処を考えるべきだからです。同様に,皮膚常在菌は「起きるであろう外傷」ではたいした悪さをしないから,常在してもらったはずです。
 人類を創造した神様は今頃天国で,「生物が火を使って火傷するなんて,考えてなかったよ」と,頭をかいているかもしれません。

 とまあ,こんなわけで熱傷にはいろいろな合併症が起きるわけです。皮膚常在菌がいなければ外来病原菌の侵入が起きて生命が維持されないけれど,熱傷のときに一部の皮膚常在菌が生命を脅かす,という現象が起きるのは,そもそも熱傷という状態が人類発生当初には想定の範囲外だったからです。

 車で海の中を走ろうとして,水が入ってきたから目張りをどうしようとか,エンジンが止まったけれどどうしようとか騒ぎになるみたいなものじゃないでしょうか。(2005/10)

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