陥入爪の治療


 陥入爪(incurved nail)の手術治療は無駄な医療だと私は思っている。私も以前はよく手術で治していたが,もう今後はよほどのことがない限り,手術するつもりはない。なぜ手術が不要かというと,現在「陥入爪」と呼ばれている疾患概念自体が間違っていると考えているからだ。陥入爪による症状(痛みと難治性の肉芽)と,爪の湾曲が強いということは無関係だからだ。無関係と断言する根拠はもちろんあり,次の2点である。

  1. 爪の湾曲がさらに強い巻き爪(pincer nail,ほとんど丸くなっているくらい湾曲している)には痛みも感染もないこと。
  2. 爪の湾曲が正常でも「陥入爪」の症状が起きていること。

 ちなみに,医者を含めて多くの人が「巻き爪」と呼んでいるが,これは間違った使い方であり,「陥入爪」と呼ぶのが正しい。本当の巻き爪は末節骨末端に骨棘形成があってそれが爪甲を押し上げ,その結果として爪が湾曲したもので,治療としては骨棘切除が必要である。爪の湾曲は高度だが感染を起こしたり痛みの原因になることはほとんどない。一方,本当の陥入爪では骨棘形成はなく,感染や痛みを起こしやすい。


 では,陥入爪(と一般に呼ばれている疾患)とは何だろうか。それは爪郭炎である。ではなぜ爪郭炎が起こるかといえば,足の第1趾に関する限り,その原因のほとんどは深爪,つまり,第1趾の爪の両脇を深く切る,切りたくなる,という生活習慣が原因である。つまり,〔深爪する〕⇒〔爪の先端が爪郭皮膚の中に埋もれる〕⇒〔爪が伸びる〕⇒〔皮膚に食い込む〕⇒〔皮膚に傷ができる〕⇒〔痛みと感染,肉芽形成〕と,このような経過をたどって発症している。

 この発症機序のどこにも「爪甲の湾曲」は関与していないのだ。だから「爪が湾曲しているためにお肉に食い込んでいる」という説明はおかしいことになる。要するに,深爪をしたから爪が伸びる過程で爪郭炎が起きただけのことだ。

 というわけで,陥入爪という病名自体が混乱を招いているのである。これは「深爪爪郭炎」という病名にすべきだ。


 一般的に行われている陥入爪の治療法について私見をまとめる。

  1. 超弾性ワイヤーや形状記憶合金による方法

  2. フェノール法

  3. 楔状切除術

  4. 肉芽切除,肉芽焼灼

  5. 食い込んでいる爪の先端を切る

    (2007/10/09)

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