形成外科とインフォームドコンセント(投稿)


 先日2011年11月9日の更新履歴,「熱傷治療で植皮術を行う前に,皮膚移植後の状態を画像で見せるなどして患者の同意を得ているのだろうか。同意を得てから手術しているのだろうか?」と書きましたが,千葉県の方から次のような生々しいメールをいただきました。このメールに対し,形成外科の先生方はどうお答えになりますか?
 以下,メールを引用させて頂きます。


 わたしは、目下左下肢の慢性皮膚潰瘍のため長期に渡り入退院を繰り返している休職中の高校教師です。
 先生が9日付けの更新記録において、「皮膚移植についてのインフォームド・コンセントはどうなっているのでしょうか?」とお書きになっていましたので、ささやかながら私が最近体験したことをご報告いたします。なお、以下に報告することは総て事実でありますので、必要ならばサイトその他に紹介していただいても構いません。

 私の慢性皮膚潰瘍は、プロテインS欠損症に由来する深部静脈血栓症が原因であると診断されており、これまでに2回、大学病院の皮膚科において植皮を受けましたが、いずれも失敗しています。1回目の手術の時には血栓症にかかる検査も抗凝固治療もなされないまま行われ、2回目の時にはすでに血栓症が発見されていたためワーファリンの服用をしながら行われました。なお、途中で転院していますので、ふたつの手術は異なる大学病院で受けたものです。
 これまでに皮膚科の医師等から何も言われていませんが、現在の症状は、血栓後症候群もしくは複合的なものではないかと患者である私は疑っています。

 ところで今夏のことですが、通院中の皮膚科では手詰まりになってしまい、同一病院内の形成外科に移されました。そこではVAC療法を受けたのですが、退院後の経過が望ましくない。創部が感染し炎症を起こしてしまったのです。
すると形成外科の担当医は、再入院し短期間VAC療法を施した後、植皮をするということに決定してしまいました。このときの担当医の説明は以下の通りです。
植皮をすれば8割以上成功することは保証するが、万一生着しなかった場合には皮弁移植をするから心配ない。
 何が心配ないですか。
 しかも、こういう説明だけはしておきながら、今目の前で患者が激痛による苦しみを訴えている創感染および炎症については、何らの処置も施さず放置したのです。その日を最後に当該大学病院から逃亡したことはいうまでもありますまい。
 そもそも深部静脈血栓症もしくは血栓後症候群が全く快方に向かっていないのに、8割成功するという数字の根拠はどこにあるのでしょうか。
 また、わたしのような素人がみても、VAC療法を行ったにもかかわらず、そして当然のことですが、依然として左足の側部の踝のあたり、すなわち創傷の周辺部には、誰が見ても明らかに静脈瘤が残っています。ということは、他の何よりも優先されるべきことは、開放創に対して移植手術を施すことではなく、むしろ原因疾患に対する根本的治療でしょう。
 これは形成外科の専門外ですから、皮膚科もしくは血管外科に移せばいいのです。病院側にも患者側にも、何の問題も負担も発生しないはずです。
 「メルクマニュアル 診断と治療」には、
《自家皮膚または表皮のケラチノサイトや皮膚の線維芽細胞から作った皮膚の移植は,難治性のうっ血性潰瘍患者に,他の全ての手段が無効であるときに選択肢となるが,基礎疾患の静脈高血圧の管理を行わないと移植片が再び潰瘍化する。》
と書いてあることくらい、私でも知っています。
 当該形成外科医は、この常識を完全に欠いていたのでしょう。また、静脈瘤に気づかなかったのならそんな無能な医師を信頼することはできず、気づいていながら虚偽の説明をしたのなら医師の倫理に反しています。そんな医師が月に1回大学の講義を担当しているというから患者は驚くばかりです。
 下種の勘ぐりをすれば、保険点数の高い植皮で金儲けをするつもりだったか、さもなければ、研修医のための教材に使うつもりだったのかも知れません。

 形成外科医が深部静脈血栓症もしくは血栓後症候群の治療に何らの関心も示さず、難治性皮膚潰瘍の開放創に蓋をすることだけを考えることは、あたかも泥棒が家の中に侵入したので、外から鍵をかけるみたいなものです。植皮も皮弁移植もほぼ100パーセント失敗するでしょうし、万一成功しても潰瘍の再発は避けられないでしょう。

 入院中には回診にきた複数の形成外科の医師から、恢復までの期間を短縮させるために植皮をしろと執拗に勧誘されたことすらありました。
 VAC療法の原理については、鳥谷部先生のサイトに書かれていたことを読み私は理解しましたが、どうやら形成外科医はあらゆる開放創を治療できる魔法の治療みたいに考えているようです。
 どうせ失敗する手術のために、時間と経済と体力と精神力とを浪費するのなら、いつ治るとも知れぬ保存治療をこのまま続けていた方がまだマシです。そういえば、VAC療法についても、入院するまではどんな治療をするのかについて、担当医は詳しい説明をしてくれませんでした。知られては困ることがあるのでしょうか。
 また、ワーファリンの投与がつづけられていることを知りながら、形成外科に受診中の3か月足らずの間は、入院時も含めて、ただの1回も血液検査が実施されませんでした。検査をしてくれないことに恐怖すら感じていたくらいです。もし検査結果を読み取ることができないなら、形成外科医がひとりだけで静脈血栓症の患者を抱え込んではならないでしょう。

 さらに、形成外科医からは、初診の際に次のような指示を受けました。
創部を清潔に保つため、毎日必ず石鹸で洗浄すること。
 つまり、創傷治療の際にはやってはならないことばかりしていたことになります。やはり私は実験材料だったんでしょう。

 それはともかくも、先生がお書きになっていた、「皮膚移植についてのインフォームド・コンセントはどうなっているのでしょうか」という疑問に対して、〇〇大学医学部附属病院形成外科ですら上記のごときありさまですから、植皮にかかる形成外科のインフォームド・コンセントなど、到底十分な内容がなされているものではなく、医師の責任逃れのためのお粗末なものに過ぎないと、患者の立場からは申し上げるしかありません。
 また、11月15日には、「こういう治療をしていると患者が治療を拒否して逃げ出す時代がもう来ていますね」という形成外科医の発言を紹介していらっしゃいましたが、患者の立場からは、熱傷に限らず創傷治療全般に関して、絶対に形成外科を受診してはならないといわざるをえません。事実、私は友人知人の多くにこの体験を語り、形成外科の危険性を訴えています。
 勿論、今回の体験は、担当医個人のスキルの問題かも知れませんが、当該担当医は日本形成外科学会の認定医(専門医)なのですから、患者の側からはどうしても日本形成外科学会全体に対する不信感となってしまうことはやむをえません。


 一応,大学名は伏せときますが,日本で最も優れた頭脳が集結している関東地方の国立大学です。
 この告発に対し,形成外科,皮膚科,医療関係者からの反論がありましたら,是非お寄せ下さい。お寄せいただければ本サイトに掲載します。

 いずれにしても,下腿難治性潰瘍に「素人でもわかる下肢静脈瘤」を併発しているのに,それを医者が治療しようともせずに下腿潰瘍の治療を続けるのは,どう考えても異常だと思いますが,いかがでしょうか。また,「VACを魔法の治療と思い込んでいる形成外科医」というのも,「VACをすればなんとかなる(はず)」という形成外科全体の風潮に対する痛烈な批判だと思います。


 同様の,「私もこんな説明を受けて手術になった。文句を言いたい!」という方がいらっしゃいましたら,どんどんメールでご連絡下さい。原則的に全文掲載しようと考えています。


 いずれにしても,医者が嘘で固めた説明をしても,もう通用しない時代になりつつあるということではないかと思います。患者サイドがどんどん理論武装しているのに,医者の方は旧態依然とした知識体系に安住しているだけではないかと思います。

(2011/12/01)

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