37歳女。
3月初旬に両側第1趾の陥入爪・爪郭炎で,〇〇大学病院皮膚科を受診。肉芽に対し液体窒素の焼灼を両足第1趾3回,左第2趾1回受けた。治療のたびに傷が大きくなり,爪が剥がれそうになってきた。痛みもひどいため,医師に傷がひどくなっていると訴えたが,「まだ液体窒素の治療が足りないためで,もっと液体窒素で治療しないとだめだ」と説明され,液体窒素の治療が行われ,さらにゲーベンクリーム,イソジンゲル,アクアチム軟膏が処方された。両足の痛みがひどく,歩行も困難になって初めて治療に疑問を持ち,ネットで調べて当科を受診した。
初診時,爪甲は白濁し,爪床から剥離している状態であり,観察できる範囲では爪床は瘢痕化して乾燥していた。爪甲剥離の原因は爪床の瘢痕化であり,その原因はゲーベンクリーム®とイソジンゲル®による組織破壊のためと患者に説明。併せて,液体窒素で肉芽焼灼する治療がいかに無意味で陥入爪の病態を知らない馬鹿げた治療であることを説明。
浮いている部分の爪甲を切除すれば痛みは楽になると説明したが,触られるだけで飛び上がってしまうため,局所麻酔もできず,プラスモイストで被覆するのみとした。6月10日には痛みは多少良くなったが,爪甲縁がぶつかっている部分に圧痛があった。皮膚の状態が安定してからテーピングの治療を,と考えていたが,6月10日以降は受診していない。
6月2日 |
言っちゃあなんだが,〇〇大学病院皮膚科の医者はバカじゃなかろうか。「陥入爪は液体窒素で治療」という大昔からの伝承的治療に疑いを持つこともないし,目の前の爪郭炎が治療のたびに悪化しているのに,「これは液体窒素治療が間違っているからではないか」と考えることもせず,「まだ液体窒素の治療が足りないからだ」と考える。ラーメン店で客が「このラーメン,しょっぱすぎて食べられない」と文句を言ったら,「しょっぱすぎるというのはまだ塩が足りないからです」と塩をドバドバ加えるようなものだ。これをアホを言わず,何をアホというのだろうか。多分,この医者の首の上にのっかっているのは中身が空っぽのカボチャだろう。
「大学病院は最高の治療をしている」と考えると,こんなアホ医者,アホ治療にぶつかってしまうことがある。確かに,大掛かりな治療では大学病院は最先端で最高の治療をしている(こともある)が,陥入爪・爪郭炎のように「どうでもいい病気」では医者が個人の知識で治療することになり,その医者が間違った知識で治療をすることが多いからだ。
ちなみに,このように消毒薬や組織破壊軟膏を繰り返し使われてしまうと,爪床が破壊され,最後は瘢痕化して治らなくなる。瘢痕治癒は肝硬変や肺気腫と同じ「最終像」であり,それ以上改善することがない。瘢痕化した爪床の表面には血流はなく,血流がないため,爪甲は生着せずに剥離したままだ。つまり,この患者さんの爪は一生このままである。
このような「爪床の瘢痕化に伴う爪甲剥離」では浮いている爪甲だけを切除(つまり全抜爪はしない)するだけで痛みがなくなることが多い。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/925/index.htm】