33歳男性。埼玉県在住。
10月6日,仕事中にプレス機に右示指を挟み受傷。直ちに近くの●●病院整形外科で縫合処置を受ける。10月10日の診察で「状態があまり良くないので切断が必要になるかもしれない。切断するかどうかは一番最初に診察した医者に決めてもらうので,13日に受診するように」と説明された。その説明に不安になり会社に相談したところ,会社の同僚が以前,当科で治療を受けたことがあったことが判明し,当科受診を薦められた。
当科ではプラスモイスト(R)で創部を被覆した。
10月10日:背側 | 掌側 | 側面 | XP |
10月12日 | 10月12日 | 10月12日 |
10月19日 | 10月19日 | 10月19日 |
10月25日 | 10月25日 | 11月1日 | 11月1日 |
上記の埼玉県の●●病院整形外科での治療であるが,ツッコミどころ満載というか,突っ込めないところがないというか,極めて杜撰な治療である。最初に縫合したのは若い医者ということだが,「手の外科」についてきちんとした指導者のもとで勉強する機会がなかったのだろう。その意味ではかわいそうな医者とも言える。
まずこの外傷であるが,レントゲン写真を見ても分かる通り末節骨の斜骨折を伴う爪甲裂創である。末節骨には爪床が固着しているのだから,当然,爪床裂傷がある。つまりこの外傷は「爪甲裂創」ではなく,「爪床裂傷を伴う開放骨折」である。ということは,「開放骨折」として治療すべきであることは,骨折治療の初歩中の初歩,基本中の基本だ。
具体的にはどうしないといけないかというと,次のようになる。
さらに,「指の状態が良くないので切断が必要かも。一番最初に診察した医者に決めてもらいます」という説明も最悪である。
10月10日に診察した医者が「手の外科」を不得意としているなら,切断の決断を委ねるのは「手の外科」の専門医でなければいけないはずだが,「一番最初に診察した医者」はこの程度の治療しかできないのだから明らかに専門医ではない。だから,この医者に切断が必要かどうかを委ねるのはおかしい。
ではなぜ,10日に診察した医者は「最初に診察した医者」の外来日に送ろうとしたのか。もちろん,指切断の決断を下す責任から逃げたいだけで,責任を押し付けるなら「最初に診察した医者」としただけだ。要するに,自分でなければ誰だっていいのだ。
このタイプの医者の頭には「患者のために最善の治療をしてあげよう」という発想が抜け落ちている。そしてこの病院では,こういう医者が若い医者を指導するわけだ。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0106/index.htm】