1歳5ヶ月男児。神奈川県在住。
 6月4日,自宅でテーブルの上の熱いコーヒーが入ったカップをひっくり返し,前胸部に熱傷受傷。横浜市内の〇〇病院で治療を受けていたが,主治医の「手術が必要になるかもしれない。ケロイドになる可能性もある」という説明に不安になり,ネット検索をして当科を受診。
 当科では,「植皮は全く必要ないこと」,「痕も残らないこと」,「ケロイドは起こるわけがないこと」を説明し,プラスモイスト(R)での被覆を行った。外来通院で治療した。

6月11日 6月13日 6月28日


 現在の医学の世界では,患者(患者家族)への説明は次のように行うのが常識なようだ。

  • 起こりうる最悪の合併症(例:死亡)を最初に説明する。そうすれば,最悪,死んでも訴えられることはない。
  • 常識的に起こる確率がゼロに近い合併症でも,起こる可能性があると最初に説明する。最悪の合併症が起きても訴えられることはなく成るから。
  • 「治る」という言葉は絶対に使わない。治らなかった場合,訴えられるから。
  • 「いつ頃までに治るか?」と患者に質問されても絶対に答えない。その期日までに治らなければ訴えられるから。
  • 何を聞かれても「よくわかりません。まだわかりません」と答える。「分からない」と答えれば訴えられることはない。
 
 その結果,患者(家族)は不安になり,インターネットで検索して当科を受診することになる。上記のような説明をされて,不安にならないほうがおかしいと思う。
 当科では,
  • これは治らないヤケドではなく,治るヤケドである。
  • 過去の治療例の写真を見せて,どのような経過で,どの程度まで治るかを明言。
  • 発生する確率の高い合併症から先に説明し,発生頻度が極めて低い合併症については説明しない
  • 創傷治癒のメカニズムについて小学生でもわかるように,簡潔明瞭平易に説明。専門用語は絶対に使わない。
 
 というような説明をして,将来の明確な見通しを提示する。将来の見通しさえあれば患者さんやご家族は安心して治療に専念できるし,不安に思うこともない。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/tokyo/case/0050/index.htm】

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