指尖部損傷はここまで再生する


 症例:30代男性。作業中にローラーに右手を挟まれて受傷。直ちに当院救急室を受診し,アルギン酸塩被覆材とフィルムで治療を受け,翌日,当科外来を受診した。当科では,水道水で創部を洗浄し,プラスモイストで創部を被覆して治療した。

当科初診時 3日後 13日後 26日後 38日後 55日後


 当科初診時,創部にアルギン酸塩被覆材が固着していたため,これは無理に除去せずにプラスモイストで覆うのみとした。翌日,アルギン酸塩被覆材は容易に除去できた。

 当科初診時の診察では爪母が残っているかどうかは不明であり,患者さんにも「爪はダメかも知れない」と説明した。しかし,26日目には爪らしき組織が出現し,55日後にはほぼ完全に爪が再生し,指尖部も完全に再生した。左右の示指の長さの差は2ミリ程度だった。人間の体の再生能力には驚くばかりだ。

 それにしても,このような状態からも爪床は再生するのだろうか。爪床が再生しなければ爪甲は形成されず,爪甲は生着しないからだ。爪甲変形の問題のほとんどは爪床変性にあるが,これほど損傷を受けている指尖部でも爪床が再生しているのだから,驚嘆するしかない。

(2011/10/05)

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