顔面裂創:テーピングで治療


 4歳0ヶ月男児。自転車に乗っていて転倒し,顔面をハンドルにぶつけて裂傷受傷。直ちに当科を受診。

 母親にこの程度の裂創なら縫合せずに治ることを説明し,過去のテーピング治療例の経過写真を見せて安心させ,患者さん(4歳児)に絶対に痛いことをしないことをまず約束し,その上でテーピングを行い,血腫形成予防のために小さなガーゼを当てて強めの布絆創膏で圧迫した。
 初診は金曜日の夕方だったため,次回は月曜日と日が開いてしまうので,患者さん本人に「絆創膏を取らないでね。取ると血が出て痛くなるよ」と十分に説明して納得させ,何かあったらすぐに救急外来を受信するように母親に説明して帰宅させた。

 月曜日に受診され,創外側はきれいについていたが,内側は完全にくっついていなかった。そこで母親に湿潤治療について説明し,デュオアクティブで2〜3週間できれいに治ることを説明した。
 以後2日間は毎日通院してもらって,母親にキズの処置について繰り返し説明し,母親が処置に慣れた3日目からは週2回程度の通院とした。

初診の状態 ぱっくり開いていることがわかる テーピングの模式図
絆創膏は切って使わない


3日後 10日後 20日後


 テーピングで多少創縁が開いていても,ハイドロコロイドを貼って毎日交換していれば,ほとんど「一本線の傷痕」で治ることがわかる。

 もちろん,形成外科的にはこれよりきれいに縫合することはもちろん可能だが,そのためには全身麻酔が絶対に必要である。親御さんが 「全身麻酔でも入院でもなんでもいいから,少しでもきれいに治して欲しい」 という希望があれば全身麻酔をかけて縫合すればいいし,「多少でも傷痕が目立たなければいいです」 という希望であればテーピングで十分である。どちらを選択するかは患者の希望で決めるのが本筋であり,医者が善意の押し付けをするのは間違っている。

 ちなみに私は過去10年間,小児の顔面裂傷は数え切れないほど治療してきたが,縫合した例は一例もないし,テーピングでなく縫合すればよかったと後悔した例も一例もない。

(2012/12/17)

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