原曲はハ短調だがゴドフスキーは半音上げて嬰ハ短調に移調している。試しにハ短調に戻して弾いてみたが、嬰ハ短調のほうが弾きやすい部分、ハ短調のほうが弾きやすい部分があったが、全体的には嬰ハ短調のほうが弾きやすい感じだった。
ショパンの原曲の冒頭部分。27曲あるショパン・エチュードの中で最も弾きやすい曲の一つだろう。最初から最後まで両手のアルペジオがほぼ同じ音型なので、メロディーと和声の変化さえ覚えてしまえば演奏するのは難しくない。

問題はこれをどうやって左手用に編曲するかだ。例えば、原曲の右手のアルペジオをそのまま左手で弾いてみるとわかるがこれだけでは響きが薄っぺらになってしまい、どこかに左手の音を加えて響きを豊かにする必要があるが、そうすると演奏が極端に難しくなる(基本的にテンポの速いアルペジオは8度から10度の音域でしか動けないから)。私は左手用の編曲を作っている側の人間だが、このショパンの楽譜を見て編曲の基本設計が思い浮かばないのだ。
そしてゴドフスキーはこのように編曲している。

左右の最初の音をずらし、さらにアルペジオを可能な限り重音化することで豊かな響きを実現し、さらにある程度のスピードで演奏できるように工夫もしている。だから、左手だけなのに分厚い響きがあり、しかも原曲同様の力感もエネルギーも十分に感じ取れる。実に見事な解決法だと思う。実はこの曲は、私が一番最初に練習したChopin/Gowoskyのエチュードだが、この最初の1小節目でその想像力の豊かさに圧倒された。
ちなみに、2拍目頭の和音(嬰ハ & ホ)は音を外しやすく、その後の音もちょっと弾きにくいので面倒。
15小節目から曲はハ長調になり大きな波濤が砕け散るような雄大な曲調となる。

この部分をゴドフスキーはこのように変える。

1拍目裏に低音を響かせ、アルペジオのピークを半拍分ずらすことで広い音域の動きを可能にし、しかも、16小節目2拍目からの左右のメロディーを時間差で響かせるという技まで見せている(その分、跳躍は半端でないが)。この部分を弾くたびにその響きの豊かさに圧倒される。
そして23小節目からの部分。

ゴドフスキーは原曲の音型を完全無視して響きのみ再現する。24小節2拍目の処理も見事。

44小節からの2小節は主部に戻る前のちょっと目立たない経過的部分。両手が別々に半音階で上昇し、和声的にちょっと面白い部分だ。ちなみに、この譜例はネットの無料楽譜のものだが、左手はト音記号でなくヘ音記号が正しい。

これをゴドフスキーはこのように料理するが、実はこの編曲で最も演奏困難な2小節である。

そして、47小節目以降が再現部となる。原曲は譜面的には最初の部分と全く同じだ。

そしてゴドフスキーはここからギアを一段上げて爆奏モードに突入する。

最低音域から最高音域までを分厚い和音で駆け上がり、その中に中音域で朗々たるメロディーが力強く歌われる。ショパンの原曲の楽譜と見比べてみると、ゴドフスキーの割り切り方と振り切れ方、想像力とそれを支える演奏技工に圧倒される。
そして終結部。原曲はこんな感じ。

一方、ゴドフスキーはここまで割り切っちゃう。原曲の音型は微塵も残っていない。ただただ、圧倒的なクライマックスとカタルシスがあるだけだ。そして何より、左手の跳躍の連続がシフラ編曲の『剣の舞』みたいで難しくて楽しい。

あとは、実際に弾いてみて感じた演奏上の難所について。
まず、19小節の丸印の部分。ここは 「4 → 3 で4度」が難所で私のような普通サイズの手だとかなりの確率で 3 の嬰トを外してしまう。10度が余裕に掴める人なら簡単なんだろうけど。

次の難所が32小節の丸印の部分。この「嬰ト・イ」を [54] でミスなく弾ける人っているんだろうけど、私の手のサイズでは絶対無理でした。

あと、41小節以降は音を覚えるのが大変でしたが、最高音(赤丸)と最低音(緑丸)が3度で動いていることに気がつくと、暗譜がちょっとだけ楽になりました。
|
|
|
| 新しい創傷治療 |
なつい キズとやけどのクリニック |
湿潤治療:医師リスト |