膿瘍の原因としての石灰化上皮腫?


 これ以後書くことは,全て私の推論であり,これが正しいかどうかは不明である。


 以前から,「なぜ膿瘍ができるのだろうか?」という疑問について考えてきた。もちろん,感染性粉瘤(明らかな被膜を持つ皮下腫瘍)とか,明らかな異物があっての膿瘍,あるいは犬に咬まれた傷が膿瘍になった,というのはいい。問題なのは,粉瘤でもなく異物も発見されない膿瘍のことだ。この「いきなり原因なしにいきなりできた」膿瘍が発生するメカニズムが説明できないか,ずっと考えていた。
 何しろこれが説明できなければ「異物と細菌で創感染」という大前提が崩れちゃうからね。


 そこでふと思いついたのが,石灰化上皮腫がもともとあり,これに血行性に細菌感染があったのではないか,という理屈。石灰化上皮腫は真皮直下にくっついている良性の皮下腫瘍で,外科外来では日常的に見かける皮下腫瘍だが,もしかしたらこいつが感染源ではないのだろうか?
 実際に,感染性粉瘤だと思って切開したら石灰化上皮腫,ということは日常的によくあることだし,膿瘍切開したとしても石灰化上皮腫が小さければ膿瘍腔内で見逃していることも,いかにもありそうだ。

 しかも摘出した石灰化上皮腫を見ると,表面は多孔性という感じでデコボコしていて,いかにも細菌には居心地がよさそうだ。私が細菌で血液中を流されていたら,絶対にこいつにたどり着き,定住しようと思うだろう。ここに取り付いて隠れていれば,好中球やマクロファージに見つかる心配もないだろう。


 という風に細菌の立場に立ってみると,皮下に存在するもので,これほど細菌の住居として好都合なものもないことに気が付く。今まで気が付かなかったけれど,健康人にいきなり発生した皮下膿瘍のうちのかなりが,この石灰化上皮腫が原因だったのではないか,と考えている。

 このアイディア,どうだろうか?

(2002/11/22)

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