前回,ポケット形成した褥瘡(難治性潰瘍)は切開したほうが速く治癒する理論的背景を示しましたが,その実例を提示します。とりわけ,術後や外傷による「ポケット形成した難治性潰瘍」の場合,これは極めて効果的です。
症例は70代の女性。外科で乳癌の手術(縮小手術)を受け,術後放射線治療を受けましたが,術後,創縫合部が離開し,皮下に瘻孔を形成したものです。外科では術後3ヶ月にわたり,創部の消毒とドレナージ(ペンローズドレーン,ガーゼドレーン)を続けていましたが,全く治癒しないため,当科紹介となりました。
この期間,患者は「入浴してもいいけど,お臍まで。胸部は濡らさないように」と指導されていました。病院の近所に住んでいたため,週3回の通院をしていました。
患者の治療経過の写真を提示します。
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外科の手術後,あるいは各種のドレーン抜去後に,難治性瘻孔が生じることはまれではありません。そしてこれらは極めて「難治性」です。私も何度も泣かされました。
このような「瘻孔」ができて2週間治療しても改善しない場合,それは治療法,治療方針が間違っていたと判断すべきと考えます。2週間続けても改善しないのは,その方法が間違っていたからです。2週間続けて状況が改善していないのに,さらにそれを3ヶ月続けても状態が改善するとは考えられません。こういう場合は,全く違う発想を採用すべきです。
難治性瘻孔を切開するのはとても勇気が要りますが,ここは一つ,腹を決めて切開しましょう。
(2002/03/06)