ポケット形成した難治性瘻孔は切開しよう


 まぁ,今更言うまでもないことかもしれませんが,ポケット形成した褥瘡は悩まずに,さっさと切開したほうが速く治ります。そしてこの考えは,難治性瘻孔やポケット状になった難治性皮膚潰瘍にも応用できます。

 なぜ切開したほうが速く治るのか,「私の理論」で説明します。


「ポケット形成」とは図のように,入口が小さく,奥(というのかな?)が広い状態を指します。

よくある間違いは,「この入口さえ閉じてくれればいいんだけどなぁ」と考えること。気持ちはよくわかりますが,左の断面図で見るとわかるように,治るべき部分は入口ではなく,ポケットの内面全てなのです。

そして,ポケットが小さくならない,創が治らない原因は,「入口」にあるのでなく,ほとんどの場合はポケットの最深部,つまりドン詰まりのところに隠れています。「治らない」のには「治れない」理由があるのです。

そこで,私の「ポケット切開理論」が登場します。要するに,上の図の状態から,下の図のようにして「ポケットの天井」を取っ払っちゃえ,ということです。こうすることで創はポケットを放置したのに比べ,比較にならないほど速く治癒します。

なぜかというと,結果的に「傷が小さく」なるからです。

前述のように,ポケットの内面全体が「治らなければいけない創」ですが,天井を取り払うと,下の図のように「天井の裏」の部分の創がなくなったことになります。つまり,この分だけ,創は縮小,つまり小さくなり,治癒も早まるのです。

この効果は,入口が小さく,ポケットが大きいほど顕著になります。「入口」がピンホール大で,「天井」が薄い場合,この「天井取っ払い」作戦で,創の面積はほとんど半分になります。

しかも,こうすることでポケットの状態が一目瞭然,ポケットの最深部に隠されていた「治れなくしている原因」も明らかになります。

そしてこのあとは,肉芽が盛り上がるような治療(フィブラストスプレー,オルセノン軟膏,ハイドロジェルなどの被覆材)を行い,肉芽が盛り上がったら上皮化を促進する治療(アクトシン軟膏,あるいはポリウレタンなどの被覆材)を続けていけば,創は上皮化するはずです。


 なお,「天井全て切除」すると時に出血が多くなることがありますので,この場合は,天井に4方向に切開を加えるだけでも効果があります。このようにすると,切開された天井部分は瘢痕拘縮で縮み,2週間くらいで「天井全て切除」した状態になります。

 また,このようにして切開したあと,アルギン酸塩を使うと,術後の出血の予防にもなります。

 さらに付け加えると,切開して出血が収まった頃から,プロスタグランディン(プロスタンディンなど)の点滴を併用すると,急速に肉芽の増殖が起こり,非常に効果的です。

(2002/02/27)

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