指DIP関節背側切開の小工夫


 マレット骨折や伸筋腱断裂でDIP関節の背側を開けることはよくあることですが,教科書に書かれている展開法は視野が悪かったり,皮膚の循環が不安定だったりして,どれもいまいちという感じがします。そこで,簡単でよい視野が得られる皮膚切開法を紹介。

 ちなみにこの切開法は,私の恩師の一人がよくやっていた方法で,彼のオリジナルなのか,あるいはどこかの論文に書いてあったのを見つけたのかについて聞きそびれてしまいました。とても簡便で有用な方法ですが,手の外科の教科書にも余りかかれていないようですからちょっと紹介します。
 指の巨細胞腫の手術を例に出しますが,もちろん,指中節部から末節部背側の手術ならどれにも適応できます。

 教科書には書かれていないTipsだと思うのですが,もしも書かれているようでしたら,それについても教えてください。

切開線 切開線 展開したところ 爪の解剖


 展開手技は次の通り。

  1. 爪上皮の端からDIP関節側正中に向かって直線を引き,そこから対側のPIP関節側正中に向かって線を描く。角は直角にせず,上の2枚目の写真のように緩やかなカーブにする。
  2. 皮下脂肪層上層まで皮膚をメスで切開。
  3. 爪上皮を眼科剪刀で端から端まで完全に切開し,鈍的に爪甲上を剥離する。
  4. 爪上皮と皮膚切開の交点の部分から剥離を始める。爪甲の上をたどっていけば,自然に伸筋腱の上に達し,あまり出血させずに剥離できる(もちろん,上記の巨細胞腫のような場合には,腫瘍直上で皮弁を剥離する)
  5. 完全に剥離したら,皮弁を反転してその先端をナイロン糸で指腹部に縫合固定する。これでほぼ完璧な視野が得られる。
  6. 手術終了時は皮膚切開部を縫合するのみでよく,爪上皮は縫合する必要はない。

(2008/02/01)

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