指の皮膚欠損創をプラスモイストで覆う際の工夫


 比較的広い指の皮膚欠損の治療をする際のドレッシング,結構難しいです。今回紹介する症例のように,デュオアクティブだとすぐに解けてしまいそうな深さだとハイドロサイトかティエールくらいしか使えません。
 しかし,ハイドロサイトだと厚すぎて指全周を巻こうとするとグローブみたいになってしまいますし,ティエールだとサイズが初めから決まっていて,それが難点です。

 というわけで,こういう時は薄くて柔軟で浸出液も吸ってくれるプラスモイストの出番です。ここでは,指に合わせたプラスモイストの切り方の工夫をちょっと紹介。


 症例は60代後半の男性。作業中に機会のチェーンに右手を巻き込まれ,環指と小指を切断。直ちに救急外来を受診し整形外科医が創縫合を行ったが,創縁の挫滅がひどく,また,小指の皮膚欠損もあったためカルトスタットで創面を被覆し,翌日(2月28日)に当科を受信した。

2月28日の状態 2月28日 2月28日

 環指はかなり縫合できているが,小指は完全に全層皮膚欠損であり,中節部にも皮膚欠損を認めた。プラスモイストを使用することにして患者さんに説明し,同意を得てから使用したが,次に示すようにした。
 ちなみに,カルトスタットとフィルムで処置し,翌日見るとこのように皮膚が白っぽくなっている。これを見て「皮膚が浸軟した。皮膚が死ぬ」と思い込んでいる人も多いようだが,全くの杞憂である。


プラスモイストの状態(下図参照) まずこのように絆創膏固定し 最後はこうなる

ちなみに実線は切るところ,破線は(適当に)折るところです。


3月10日 3月16日 3月23日

 ちなみに,2月28日と3月10日の小指橈側をみて,潰瘍面が拡大したのではないか,やはり皮膚が浸軟した結果ではないか,と考えられる方もいらっしゃると思うが,これも間違い。小指橈側の縫合部の皮膚が内反状態で縫合されていたため,抜糸と同時に傷が開いただけのことである。浸軟で皮膚が死なないことは,それ以外の部分の皮膚が壊死していないことから明らかだ。


3月30日 4月3日


 まだ治療中のため完治とはいえないが,4月12日現在,小指は小さな肉芽を残すのみとなっていて,環指は3月30日で上皮化が完了した。

(2006/04/13)

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