毛巣瘻術後創感染・創離開に対し プラスモイスト が奏功した一例

釧路協立病院 外科 真崎茂法


 症例は20代男性。仙骨部毛巣瘻に対し,2月2日に瘻孔切除を行った。2月8日に退院し,2月13日に退院後初めての外来受診となったが,その際,創感染が認められ,洗浄を行い,ドレナージを実施した。翌日から〔ソーブサン(アルギン酸)+穴あきオプサイト+紙オムツ〕で治療を行ったが,広い創離開となった。
 2月20日よりプラスモイストの使用を開始し,以後はプラスモイスト貼付のみで治療した。なお,治療はすべて外来で行った。


2月20日 2月20日
プラスモイストを貼付したところ

 プラスモイストを創部にあて,未滅菌ロールフィルム(オプサイト・フレキシフィックス)でその表面を覆っている。


3月6日 3月13日 3月20日
小さな潰瘍を残して上皮化した


 以下,この疾患についての情報を少し・・・。

 毛巣瘻(毛巣洞,Pilonidal Sinus)は若い男性に多い仙骨部(お尻の割れ目の始まりのあたり)に好発する。初めは皮下膿瘍として見つかるが,何度切開しても数ヶ月ごとに再発を繰り返し,それで診断が付くことが多い。切除してみると瘻孔内部に毛が入っていて,それがこの病名が由来となっている。
 臀部が毛深い若い男性に好発し,長距離トラック運転手などの長時間座る職業に多いことから,圧迫されて毛が中にめり込み,膿瘍になったのではないかという説もあったはずだ。
 いずれにしても,再発性の臀部の膿瘍ではこの疾患のことを頭の片隅に入れておいたほうがいいだろう。

 治療としては,瘻孔部分が小さな場合は単純切除⇒縫縮でもいいが,再発を繰り返して瘻孔周囲が瘢痕化している場合は,瘻孔切除で大きな組織欠損になってしまうため,有茎皮弁(V-Y Advancement Flapなど)が必要になることも少なくない。私はだいたい,最初からV-Y Advancementを考えるが,傷が大きくなるのが難点であり,また,形成外科的手術手技が必要となる。


 この症例のように大きくて深い組織欠損創(術後離開創)では最初は浸出液が多いため,鳥谷部先生流の〔穴あきポリ袋+紙オムツ〕で処置し,創面が肉芽で覆われた頃からプラスモイストに変更すると,ドレッシングが薄くできるため,日常生活はより快適になるようだ。プラスモイストにはある程度の吸収力があるため,創の面積の2〜3倍程度のサイズに切って張れば,液漏れもほとんどない。

 また,深い陥凹創であっても創内を処置したり,何かを入れたりする必要がないため,素人でも処置でき,かなり大きな創でも外来通院のみで治療できる点も,患者さんにとっては大きな利点であろう。

(2006/03/24)

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