臍の緒の処置


 よく寄せられる質問の一つに「臍帯の消毒はどうしたらいいのでしょうか?」というのがある。一般にはイソジンで消毒するのが普通で,最近だとエタノール消毒も勧められているようである。

でもこの問題,既に掲示板の方でも討議されているし(ご興味をお持ちの方は「索引」から「臍の緒の処置」を探してみてください),そういう討論を知らなくても,消毒薬が生体に及ぼす影響(このサイトで再三指摘してますよね)さえ知っていれば,臍の緒を消毒していいものかしなくていいものかは,結果は自然に導き出せるはずで,何も私に意見を求める必要はないはずだ。これくら,自分で考えれば答えは誰でも出せると思うがいかがだろうか。


 大体,消毒と言う概念が医学に登場したのは約130年前である。エタノール消毒と言う概念に至っては40年くらいのものじゃないだろうか。
 人類の歴史は200万年前ともそれ以上古いとも言われている。つまり,200万年以上の歴史の中で,臍の緒を消毒してもらえた赤ん坊はたかだか,最近100年くらいの間に生まれた赤ん坊だけなのである。現代においても,臍の緒を消毒している赤ん坊より,していない方が多いはずだ。

 それなのに,「新生児が臍炎を起こして敗血症になり,新生児が全滅した」という記録はないのである。人類の歴史を見ても,臍の緒を消毒しなくても,元気の育った赤ん坊の方が多いはずである。でないと,人類はとうの昔に滅びてしまったはずだ。

 つまり,「臍の緒を消毒」するようになったのは,消毒薬が普通に手に入るようになった時代に始まった儀式に過ぎないのである。


 ちなみに以前から指摘されているが,「臍の緒のイソジン消毒」で新生児が一過性甲状腺機能低下症になる例が報告されている。一過性とはいえ,新生児に好ましくない事はいうまでもないはずだ。むしろ新生児の臍の緒のイソジン消毒は禁忌と考えるのが医学的に正しいと思われるがいかがだろうか。

(2003/11/27)

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