皮膚科治療の常識・非常識


【外用剤の有効性は本当に確かめたのか?】
 前述の安全性の問題と同時に取り上げたいのが,外用剤の治療効果は本当に実験で確かめられているのか,という問題もある。例えば,熱傷や褥瘡,外傷を適応症にしている軟膏はゲーベンクリームアクトシン軟膏カデックスユーパスタなど多数あるが,それらを人工的に作った傷に塗ってみると,どれもこれも「傷を深くする」のである。要するに,適応症(=熱傷,皮膚潰瘍など)に有効は薬は一つもない。これは一体どういうことなのだろうか。一体,どういう実験をして「熱傷治療効果あり」という結果が得られたのだろうか。
 例えば,「熱傷,褥瘡,下腿潰瘍」が適応症となっている薬にフィブラスト・スプレーであるが,この基礎実験のデータを見るとわかるが,その有効性を調べた実験でコントロールにしたのはユーパスタである。つまり「ユーパスタより治療効果が高い」ことを根拠に厚労省は認可したわけだ。
 だが,これはおかしくないだろうか。ユーパスタで実験してみるとわかるが,この外用剤を傷に塗ると確実に傷は深くなるのだ。嘘だと思ったら自分の体に傷を付けて実験してみるといい。ユーパスタを傷に塗ると確実に傷は深くなるのだ。
 ということは,フィブラストの有効性を示す実験はたかだか「傷を深くするユーパスタに比べると治療効果がある」と証明しているに過ぎないことになる。これで果たして「有効性あり・治療効果あり」という証明になるのだろうか。なぜなら,ユーパスタの使用を止めて水道水洗浄のみにするだけでも傷は治ってくるし,少なくとも傷の痛みは直ちに消失するからだ。つまり,ユーパスタに対する有効性でいいのなら,水道水で実験しても「有効性あり」になってしまうのだ。
 要するに,対照薬として「治癒に有害な外用剤」を使っていいのなら,よほど強力な「治癒阻害剤・潰瘍悪化剤」でも使わない限り「同等程度か,それ以上の治療効果が見られた」というデータが得られるはずだ。こんな基礎実験だけで本当に「フィブラストは治療効果あり」と言えるのだろうか?

(2011/08/01)

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