カデックス軟膏(R)を傷に塗るとどうなるのか その2


【目 的】
 前回行った実験の追試である。


【Material and Method】
 方法は前回行った実験と全く方法で,筆者自身の右上腕屈側遠位に皮膚表層欠損創を作り,今回は乾燥部位(ガーゼで覆うのみ)とカデックス軟膏塗布部位を比較した。
 観察は実体顕微鏡Dino-Lite Plusで行ったが,倍率は20倍と60倍で撮影した。


【結 果】

3月21日正午:破壊前 皮膚表層破壊後 破壊部と健常部の境界


4時間後:乾燥部 カデックス カデックスの別の部分

 4時間後の状態だが,ガーゼ覆って乾燥させた部位よりもさらに,カデックス軟膏を塗布した部分のほうが乾燥していることがわかる。乾燥部位もチクチク痛いが,カデックス部はそれに輪をかけて痛い。また,塗布してから時間をおいてから痛みが襲来し,それが長い時間持続するのも同じだった。


9時間後:乾燥 カデックス

 カデックスの方が乾燥化が速いことがわかる。もちろん痛みはひどい。


18時間後:乾燥 カデックス カデックスの別の部分

 肉眼的には乾燥部分もカデックス部分もあまり違いはわからないが,顕微鏡で見ると感創部は皮膚紋理がそれなりに保たれているのに対し,カデックス部分は皮膚紋理がなくなっている。


47時間後:乾燥 カデックス

 カデックスを塗布した部分は完全に乾燥しているが,痛みはひどく,安静にしていても痛い。20倍で撮影したのが下の写真である。


47時間後:
カデックスと乾燥部の境界(20倍)
カデックス(20倍) カデックス部分の周囲の発赤(20倍)

 カデックス塗布部分表面を覆っているのは痂皮と思われる。右の写真でわかるとおり,創周囲に発赤が認められ,明らかに細菌感染を起こしている。痛みが増強したのは感染を起こしたためと思われる。
 そこで,痂皮かどうかを観察するため,この部分を半分だけデュオアクティブETで覆い,融解するかどうかを実験した(crustならば水溶性のはずだから)


56時間後:
デュオアクティブを剥がすと潰瘍になっていた
乾燥痂皮と潰瘍の境界

 半日ほどデュオアクティブで覆った後の状態。左の写真のようにデュオアクティブを貼った部分の痂皮は融解し,痂皮の下の潰瘍が露出している。右の写真は上がカデックスの痂皮,下がこの痂皮をデュオアクティブ貼付で溶かした部分だが滲出液が痂皮の下から漏れ出ていることがわかる。


68時間後:カデックス 潰瘍と痂皮の境界 痂皮周囲の発赤(20倍)

 同じ時刻の,デュオアクティブを張らずにおいたカデックス部分。やはり,創面の乾燥は治癒ではなく痂皮が覆っていることがわかる。右の写真でわかるように,発赤はさらに広がっている。直ちに,全てをデュオアクティブで覆ったが,これくらい感染していると,なかなか痛みは治まらないことを体験した。抗生剤を準備しておくべきだったと後悔した。


【感想みたいなこと】
 「カデックスで傷が治る」というのは治癒でもなんでもなく,アクトシン軟膏同様,痂皮による見かけの乾燥化であることがこの2回の実験で観察できた。このあたりのことがわからないと,カデックスやアクトシンで傷が治ると評価してしまうのだろう。

 これまでの一連の実験はどれも痛い実験だったが,今回が一番痛かった。痂皮が完成してその下で感染を起こし,蜂窩織炎になったためだろう。化膿した傷の痛みも経験しないとわからないものだな,と改めて学んだ。

 それと同時に,水分を吸収するタイプの基剤を持つ軟膏(カデックス軟膏の基剤はポリマー)は,創面を乾燥させて痂皮(crust)を作ることが予想される。恐らく,今回の実験で私の身に起きたことは同様の軟膏を治療に使っている患者さんにも起こりうることだろう。怖いことだと思う。

(2008/03/27)

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