皮膚科治療の常識・非常識


【外用剤の安全性は本当に確かめられているのか?】
 以前,自分の体に傷をつけてゲーベンクリームカデックスユーパスタアクトシン軟膏などを塗ってみるという人体実験を連続して行ったことがあるが,そこで疑問に思ったのは「これらの外用剤についてほんとうの意味での安全性は確かめられているのか?」ということだった。なぜなら,それらを傷に塗ると飛び上がるほど痛いし(特にアクトシン軟膏の痛みは激痛である),日を追うごとに傷が深くなっていったからだ。どう考えても「傷に塗って安全」な薬剤ではなく,むしろ「傷に塗ると危険」な薬剤にしか思えなかったからだ。
 だが,こういう疑問を某大学皮膚科教授に投げかけたところ,「馬鹿も休み休み言え。薬剤として安全性が確認されたデータがあったからこそ厚労省が認可しているはずだ。危険な薬剤を厚労省が認めるわけがない」の一点張りだった。これについて,皆さんはどう感じるだろうか?
 しかし,日本の薬害の歴史を見ても分かる通り,薬害を起こした薬剤のほとんどすべては「厚労省から認可された」薬剤である。厚労省が治療薬として認めたものなのに,実際には薬害が起きてきたのだ。つまり「厚労省が認可しているから安全」という論理は成り立たないはずである。その論理が正しいなら,薬害なんて起きるわけがないのだ。
 もちろん,「アクトシン軟膏ゲーベンクリームは危険な薬剤というのは嘘だ。これらは安全な薬剤である」と反論なさる先生がいらっしゃると思うが,その場合は是非,自分の体に傷をつけて実際に塗ってみてからにして欲しい。ガムテープと勇気さえあれば誰でもできる超簡単な実験である。

 ラーメンが美味いか不味いか,食べずにわかるだろうか。「グルメガイドに美味いと書かれていれば美味いのだ」という人もいるかもしれないが,私は自分で食べてみるまで判断できないのだ。しかも,一口食べれば美味いかどうかはすぐにわかる。だったら,グルメガイドという教科書を調べるより,自分で食べた方が手っとり早いのだ。
 だったら,薬も同じだろうと思うのである。

(2011/07/29)

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