《mute(ミュート)》(2001年,アメリカ)


 この映画の唯一の長所は70分ほどと短いこと,そして最大の短所は70分も続くこと。ひたすら,意味のないどうでもいいようなシーンが延々と続きます。我慢して最後までみても何も得られるものはありません。だからなんなの,の一言しか浮かびません。何でこんな映画を作っちゃったんだろうと,そればかり考えて見ていました。恐らく,多くの人にとっては暇つぶしにすらならない映画でしょう。

 全編にわたってセリフがほとんどなく,音楽も控えめという,まさに「ミュート」,つまり消音モードの映画です。さすがにこれだけじゃ何が起こっているのかわかりにくいので,全体を8つの章に分け,それぞれ「これから何が起こるのか」を最小限のタイトルで示しています。これがなければ,一体何が起こっているのか,そもそもそれが何なのかが,恐らくわかりません。

 恐らく,理解してもらおうと言う意図が非常に希薄です。わかる人だけわかればいい,というスタンスがありありです。要するに,実験的映画,ってやつですね。

 「セリフがない映画を作ってみよう」ということで映画を作り始めてしまったため,セリフがなくてもわかるようなストーリーにする必要があり,その結果として,陳腐でわかりやすい部分と,セリフなしではうまく伝わらない「何が何だかわからない」部分が混在することになってしまったようです。要するにこれは,初期設計段階のミスでしょう。セリフなしの映画を作るという意図は面白いけど,その制約のために詰まらない映画,訳のわからない映画になってしまっては本末転倒でしょう。


 一応,ストーリーらしいものをまとめると次のようになります。

 森の中の家で一人暮らしをしている老人がいて,ネコと暮らしています。で,そのネコが逃げ出しちゃったために森の中に探しに行きます。ここで,延々と森の中を歩くだけのシーンが続きます。爺さん,シャツにももひき,上に真っ赤なガウンを着ただけの格好で,右手にはコーヒーの入ったマグカップ,左手には,押すとチューチューと音が出るネズミのオモチャを持っています。冬の風景の中のため,すごくシュールです。

 そこで,一人の男が幼い女の子の首を絞めている現場に出くわし,驚いて逃げ戻り,警察に連絡。警察官と村人総出で死体を探しますが,死体は見つかりません。

 次にまたグダグダと爺さんの日常生活シーンが続き,無駄に時間稼ぎをします。ちなみにこの爺さん,省エネという概念が全くないらしく,ポットでお湯を沸かすと沸騰させたまま放置するし,卵をゆでる卵が真っ黒になり鍋が焦げるまで火をつけっぱなしです。何を考えている爺さんなのか,全く意味不明。

 で,森に出かけた爺さん(もちろん,シャツにももひきに真っ赤なガウン姿),今度は子供の死体を発見。前日に殺された子供です。するといきなり,死体の子供が後ろから襲いかかり(?),首はぐるぐる回るわ,頭はガクガク動くわ,いきなりのホラーモードに突入。サスペンス映画だとばかり思っていると,いきなりホラー映画にギアチェンジです。またも警察を呼んできますが,もちろん死体は消えちゃいます。

 で,警察官がなぜか老人に,老人ホームのカタログみたいなのを持ってきます。ぼけた爺さんはホームに入りなよ,という意味なんでしょうか,そのあたりの説明はありません。そのホームを経営する会社は孤児院も経営していて,孤児院の写真を見ていたら,殺された子供の顔が映っていることを発見。

 そこで爺さん,その孤児院に行き,事件の真相を探ろうとするらしいんだけど,孤児院の玄関の前を行ったり来たりするだけで,何もせずに帰ろうとします。だけど,さっきの女の子がまた登場するもんだから,その後を追いかけて孤児院に不法侵入。

 そして,牧師さんが事件の真相の断片を話してくれるんだけど,なぜ男が女の子を殺したのかは,何となくしかわかりません。「見ている人が勝手に想像してね」と言う映画ですからしょうがありません。そして,殺人犯の男はその孤児院の職員で,逃げようとする爺さんを殴って気絶させ,トイレみたいなところに連れ込みます。爺さん,気がつきます。殺人犯が襲ってきそうになったところで,殺された子供が再登場。首がグルグル,頭ガクガクのシーンがだらだらと無意味に続き,何となく一件落着。

 そして,自宅に戻った爺さんは飼っていたネコを絞め殺します。これで映画はお終い。これぞまさしく,衝撃の結末でした・・・,ってか?


 結局,この映画って何だったのでしょうか。

(2007/04/11)

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