新しい創傷治療:ストーン・カウンシル

《ストーン・カウンシル》★★ (2006年,フランス)


 このオカルト系ミステリー映画の最大の欠点は,何が起きているのか,何が起きたのかを観客に伝える努力も工夫もしていない点にあります。確かに台詞では説明されていますが,肝心の映像で全く描かれていないため,不思議さも怖さも全然伝わってこないのですよ。オカルト映画なのに怖くないと言うのは,致命的な失敗です。

 最低限,映画タイトルにもなっている秘密儀式「ストーン・カウンシル」がどういう儀式なのかは画像で見せてくれないと,ちっともわからないのですよ。「魂が動物の形になって」と言葉で説明されても,それだけじゃなぁ・・・。

 それと,人間関係の説明がなんだかわかりにくい。たいした数の登場人物でもないし,それほど錯綜した人間関係でもないんだから,「こいつは前の旦那で,よりを戻そうとしている」とか簡単に説明すればいいのに,もったいぶって小出しに説明するもんだから,変に理解しにくいのです。


 とりあえず,ストーリーを紹介。

 主人公はローラ・シプリアン(モニカ・ベルッチ)で,以前は男性と暮らしていたけど今は別れているみたい。そして,子供ができないとのことで養子をもらっちゃうんだけど(そういえば,彼女も2歳のときに両親を事故で亡くし,施設で育ったと言う過去があります),その子はリウ・サンというモンゴル系の2歳くらいの男の子です。そして,数年後,7歳になったリウ・サンの胸に突然直径5センチくらいのあざが出現。主治医に見せるんだけど,「とりあえず様子を見ましょう」という返事です。そしてその頃から,ローラとリウ・サンは同じ悪夢を見るようになります。

 で,ローラは上司から突然,海外出張を命じられ,彼女の後見人の女性(カトリーヌ・ドヌーヴ。大きな財団の経営者)に息子を預けて行こうとするんだけど,彼はその女性をなぜか嫌がり,母親の運転する車の後ろに乗り込んでいます。それを知らずにローラは車を走らせ,後部座席に息子がいるとわかってビックリ。すると突然,前方から鷲が飛んで来ます。とっさにハンドルを切りますが,車は横転。なんとかローラは抜け出しますが,車の窓から投げ出されたリウ・サンは頭部を激しく打撲し,意識不明。病院に収容されます。

 その病院の駐車場で,なぜかローラの主治医が殺されたり,息子の怪我が数日で治ったりと不思議な出来事が続きます。そして,自宅に戻ったローラは息子の部屋から不思議な声が聞こえているのに気付き,息子が聞いたこともない不思議な言語で喋っていることを知ります。

 そして,リウ・サンは意識を取り戻しますが拉致されます。連れ出したのは,後見人(カトリーヌ・ドヌーヴ)でした。そして,リウ・サンが生後2ヶ月で発見されたときに首につけていたペンダントの形が,ロシアとモンゴル国境にある湖の形であることに気がつき,いろいろあって,そこに連れ去られたことを知ります。リウ・サンは普通の子供ではなく,100年に一人,モンゴルの一部族に出現する「監視者」であり,伝説の儀式「ストーン・カウンシル」でこの少年を殺すと永遠の命が得られるという伝説があったのです。

 しかもその地域は以前,核実験が行われて多数の被爆者を出した場所で,もう何年も立ち入り禁止になっているところだったのです。果たして,ローラは息子を救い出せるだろうか,という映画でございます。


 という具合に,映画のあらすじを紹介しましたが,すごくわかりにくいというか,何がなんだかわからないでしょう? 実は見ている方にも判りにくいのです。次から次へと事件が起こり,人が殺されていくんだけど,誰が何のために誰を殺したのかが描かれず,いきなり死体が転がっている様子が映されるだけなので,「だから何なのよ」と途方に暮れるしかありません。

 ちなみにこの映画の原作の小説の著者は,以前紹介した《クリムゾン・リバー》の原作者と同じ人です。こっちの方も,次から次へと事件は起こるものの,あまりにも都合よすぎることばかりが続くため,笑い出すしかなかった珍品でしたが,今回の映画もそれと全く同じです。


 あまりにしょうもない映画なんで,気がついたことを順不同で書いていきます。

(2009/04/07)

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