《エイリアン・インベージョン ENDANGERED SPECIES》★★(2005年,アメリカ)


 絵に描いたようなB級,C級エイリアン映画でございます。作成したのは最近この手の映画でよく目にする「トランスフォーマー」で,どうやら我らがアルバトロスの子会社らしいです。もちろん,アルバトロスの遺伝子はしっかりと受け継いでおります。

 ちなみに "ENDANGERED SPECIES" は絶滅危惧種の意味で非常に意味深いです。映画の作り方はおバカですが,元々のねらいは結構深いところにあったようです。

 トランスフォーマーの紹介文はこうなっております。

ロサンゼルス全域で残虐な大量殺人事件が続発。その犯人は,地球外の惑星から侵入したエイリアンだった!ヤツは人間そっくりに姿を変えて殺戮を繰り返し,密かに人類殲滅計画を進めていたのだ。事件を追っていたFBIの対凶悪犯エキスパート,サリーは,エイリアンとの全面戦争を決意。果たして,この地球史上最大の戦いに勝つのは人間か,それとも…。人類の存亡をかけた戦いが今,幕を開ける!!

 しかもDVDジャケットはこうなっていて,なにやら大がかりな作品かと勘違いしてしまいますが,もちろん大嘘でございます。どうみても映画館用の映画ではなく,テレビ映画のような感じですね(場面転換のたびにフェードアウトするところとか)


 ツッコミどころ満載の映画なんで,ストーリーを紹介しながらツッコミを入れていきますね。

 映画が始まると,サイや爬虫類の画像が流れます。自然を守ろう,動物を保護しよう,という映画みたいで,「俺,間違った映画を借りてきたんじゃないか」と心配になります。でも,心配無用です。
 舞台はアメリカのどっかです。テレビで「最近,終了間際のスポーツジムで大量殺人・死体持ち去り事件が頻発しています」とニュースが流れます。でも,そんなことを知らない人たちはジムで汗を流しています。シャワールームでは巨乳のナイスバディのお姉さんがシャワーを浴びています。ぼかしは入っておりません。「どうせこんな映画,誰も見ないだろうから気が付かないよね」と高をくくっている模様です。こういう画像が好きな人はすぐにレンタルショップに急ぎましょう。

 スポーツジムの入り口から武器を持った男が入り込みます。受付を殺したかと思うと,トレーニングルームの男たちを射殺し,シャワールームの巨乳さんも殺されます。ロッカーに隠れたお姉さんが一人生き残ります。射殺男は死体を小型スキャナみたいなやつでスキャンし,幾つかの死体を詰め込んでお持ち帰り。


 舞台変わって地元警察署。地元警察の刑事さん登場しますが,この人が一応主人公です。残された死体を見て,全ての死体が目玉を打ち抜かれていることがわかります。そこで刑事さん,「剥製のために動物を撃つ際には,体を傷つけないように目を撃つ。もしかしてそれじゃないか」と鋭い推理をします。要するに,犯人が死体を持ち帰ったのは「人体の剥製」を作るため,という推理ですね。この時点では,根拠も証拠も全くないため,「オイオイ,それは考えすぎ」という感じがしますが,気にしないようにしましょう。

 そしてこの刑事さん,残された死体には怪我の痕や手術の跡があったことから,「持ち去られた死体には手術の跡はなかったはずだ」と推理を展開します。なんで無くなった死体に傷跡がないとわかったのかは監督さんに聞いてください。

 ちなみに,彼の上司の警察署長は署長室で観葉植物を育てることにしか関心がないし,同僚のもう一人の刑事はメタボ体型で頭が単純すぎ,主人公とそりが合いません。


 で,主人公とメタボ刑事はロッカーに隠れていて保護された女性の病院に行きます。そこで彼女の口から「さっき,警察の人が来ていましたけど」と聞き,こいつは偽刑事だ,怪しいってんで,病院の廊下に飛び出ます。

 運良く,怪しそうなニット帽男を見つけます。主人公とメタボ刑事,ニット帽を追いかけます。ニット帽,跳躍能力が高いです。ふつうなら走って追いつけないはずなのですが,なぜか主人公は走って追いかけられます。絶対に走れそうにないメタボ刑事もしっかり走って追いかけます。人は見かけによらないものです。芋洗坂係長の踊りを思い出します。「ニット帽,飛びます。刑事,走って追いかけます」という場面が5分くらい続きます。刑事,ニット帽を捕まえます。

 ニット帽の取り調べが始まりますが,身元も分からず,手指はツルツルで指紋もありません。着ている皮服も現存する動物のものではないようです。おまけに,またもやスポーツジムでの大量殺人・死体お持ち帰り事件が起きます。警察署長,ニット帽の釈放を決め,捜査から主人公をはずします。


 ニット帽,小汚い安アパートに戻ります。家具も何もありませんが,木のテーブルをパカっと開けるとそこは何だかものすごい装置が顔を出します。未来の宇宙船で使うような通信機器もあり,どこかと連絡を取っています。誰が見ても,ニット帽は宇宙人だとわかります。

 で,ニット帽がどこかに出かけます。それを見た主人公刑事はアパートに令状なしに踏み込みます。もちろん何もありません。でも,古ぼけたタンスの引き出しから大量のサングラスを見つけ,それをかけると「見えないロッカーみたいなの」が見えてきます。


 その頃,冒頭のスポーツジムを襲った男(説明の都合上,無帽男と表記)が今度はストリップバーに襲います。やたらと裸のお姉ちゃんが好きなようです。美乳,巨乳さんたちがポールダンスしています。無帽男,しばらくオッパイを堪能します。観客へのサービスです。十分堪能した後,おもむろに全員を射殺します。でも今度はパトカー3台がすぐに駆けつけます。無帽男,やたらと口径のでかい銃(?)を撃ちます。3台のパトカー,次々と爆発炎上します。恐らく,映画作成費の1/3をこの場面で使ってしまった模様です。

 無帽男,バンに乗って逃走します。主人公刑事とニット帽,車で追いかけます。2台のパトカーも追いかけます。無帽男,パトカーを撃ちます。パトカー,大炎上です。制作費の残り半分がこの場面にそそぎ込まれています。カーチェイスが続きます。

 バンは空き地に入って駐車し,透明になります。やや遅れて刑事君到着。どこに消えたんだ,と空き地を歩き回ります。突然,透明バンが登場して刑事をひき殺そうとします。ニット帽,刑事を助けます。またもカーチェイスが続きます。バンは透明です。主人公刑事とニット帽,例のサングラスをかけます。バンが見えるようになります。

 無帽男,バンバン撃ってきます。刑事,ニット帽に「あいつを撃ち殺せ」といいますが,ニット帽は「それはちょっと・・・」と口ごもります。しょうがないんで,刑事,無帽男のバンを空き地に追いつめます。バン,壁に激突炎上します。ニット帽,外に出ます。無帽男,炎の中から飛び出します。無傷です。刑事,銃をバシバシ撃ちます。額を打ち抜きますがピンピンしています。どうやら,頭部に脳味噌がないタイプのエイリアンのようです。刑事,無帽男の持っていたバズーカみたいなやつを奪い取って撃ちます。無帽男の腕がもげます。


 刑事,腕を警察署に持ち帰ります。観察医が腕を観察していたら,いきなり腕が動いて首を絞め,無帽男が登場し,観察医を殺します。腕を断端に近づけると組織が延びてきて腕がくっつきます。さすがはエイリアンです。エイリアン,一旦外に出ます。そして,警察署の正面玄関から入ってきます。礼儀正しいエイリアンです。そして,両手の銃で署員をバシバシ撃ち殺します。礼節をわきまえないエイリアンです。

 刑事も応戦しますが敵いません。そこにニット帽が登場し,またも助けてくれます。ニット帽,どうしても無帽男を殺しません。刑事とニット帽,逃げます。刑事,病院で目が覚めます。無事だった模様です。

 そしてなぜか,刑事は無帽男が潜んでいるところを見つけだします。なぜ見つけられたのかは映画監督に聞いてください。


 で,ニット帽が正体を明かしてくれます。彼らは絶滅危惧種である人類を保護する活動をしていて,地球を禁猟区にしていますが,密猟者(無帽男)はこっそりと地球人を殺して毛皮(?)にしていたのです。地球の密猟者がサイの角を取るためにサイを殺すのと同じです。でも,監視員(ニット帽)は密猟者を見つけても殺せないのだそうです。なるほど,なるほど。

 ニット帽,密猟者の宇宙船が隣の倉庫にあることを発見(探してもいないのになぜ見つけられたかは映画監督に聞いてください),宇宙船の中に起爆装置をセットします。ニット帽君,こんな面倒なしないで最初から密猟者の宇宙船を見つけてさっさと爆破しとけばいいのに・・・。

 ここで無帽男,参上。ニット帽,スタンガンでやられます。エイリアン,電流に弱いのです。ここで無帽男エイリアンと刑事の対決になります。無帽男,地球人のマスクを脱ぎ捨てます。素顔が安っぽいエイリアンです。なんでここで素顔を出したのか,映画監督しかわかりません。刑事逃げますがエイリアンにすぐに追いつかれます。刑事君,風前の灯火です。エイリアン,アイスピックみたいなのを突き立てようとします。なぜかここで原始的な武器しか持っていないエイリアンです。でもそこにあったのがAC電源のコンセント! 哀れエイリアンはコンセントで感電死してしまうのでありました。でも大変,爆破装置を仕掛けていました。刑事さん,爆破の寸前に逃げ出します。残りの映画制作費用,この爆破シーンで使い果たしてしまった模様です。


 刑事さん,娘たちにねだられていた犬とネズミを買ってから自宅に戻ります。犬とネズミを飼うお金は残っていたようです。めでたし,めでたし。

(2009/11/13)

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