《SHOCKER ショッカー "SEED"》 (2007年,カナダ)


 久しぶりに最悪ゲロ映画を見てしまいました。まぁ,監督ウーヴェ・ボル,というのを見ただけで見るのを止めればよかっただけなんですけどね。この監督さん,ホラー映画界では「がっかりボル君」として有名でして,しょうもないクズ映画ばかり量産している監督のようです。

 それと,犬が大好きな方,動物が好きな方,動物愛護関係の方は絶対にこの映画は見ないで下さい。冒頭,半端でない「犬撲殺・犬虐殺」シーンが延々と続きます。こいつ,本当に犬を殺して映画を撮影したんじゃないの,というくらい酷いシーンです。もちろん,その他の残虐シーンもハンパない酷さですから,普通の人は絶対に近寄らない方がよろしいかと思います。


 幼い頃,火事にあって重症のヤケドを負った少年がいた。そして彼は後に,不死身の殺人鬼,シードとなり,数百人が犠牲になっていた。捜査官ビショップらはシードの隠れ家を突き止めて踏み込むが,シードの返り討ちに会い同僚が次々と犠牲になる。そしてついにビショップはシードを逮捕し,死刑が宣告される。

 電気椅子での処刑が執行されたが,機械が旧式のため,2度通電してもシードの心臓は動いていた。州の法律では「3度通電しても死ななかった場合,死刑囚は自由の身になる」と定められていた。そのため死刑執行官らは3度目の通電をせず(それで死ななかったら彼を自由の身にしなければいけない),嘘の死亡診断書を作成した上で生きたままシードを埋葬する。

 しかし,シードは墓場から脱出し,自分を生きたまま埋葬した死刑執行官を探しては次々に殺し,ついにビショップの家族にも魔の手が・・・という映画でございます。


 あらすじを読んだだけで,ツッコミどころ満載の映画だとわかります。というか,突っ込めないところを探した方が早かったりします。

 まず,冒頭の犬虐殺,動物虐待シーンが意味不明です。どうやら逮捕したシードの家から押収したビデオらしいのですが,死んで死体にウジが涌き骨だらけになるまでを克明に撮影しています。その後のビデオでは,誘拐した乳児や成人のお姉さんを放置して(餓死させて?)死なせ,その死体にウジが涌いて・・・というシーンも撮影しています。このあたり,本当に死体を使ったんじゃないの,というくらいよくできています。
 ボルさんはドイツ人とのことですから,このあたりはドイツ人らしく,緻密に徹底して作っていて,彼のこの作品に込める気合いが感じられます。ま,無駄な気合いというか,無意味に徹底,という感じですけどね。


 なぜシードが大量連続殺人をするようになったのか,全くわかりません。どうやら,幼い頃のヤケドが原因とほのめかしていますが,それだけじゃ誰も理解できないっすよ。
 しかもこのシード君,やたらと強くてほとんど不死身です。高圧電流でも死なないし,墓から蘇ったばかりというのにいきなり遠泳だもんなぁ。

 わからないといえば,このシード君,どうやって生活しているんでしょうか。だって,四六時中,スダ袋みたな袋を目出し帽みたいに被っているんですぜ。恐らく,ヤケドの痕が醜くて・・・という理由付けをしたつもりなんでしょうが,これじゃ人目に付き過ぎで目撃されまくりでしょうから,「そういえばあの事件の前,顔におかしな袋を被っていた大男が歩いていましたね」なんて証言する人がいたら一発で重要参考人になってしまいますよね。


 それにしても,2度の通電で死なないシードも凄いけど,「3度目で死なないと困るなぁ。なら死んだことにして埋めちゃえ」っていう解決法はあり? 普通なら「こいつを野放しにするくらいなら殺しちゃえ」ってんで棺桶に銃弾を打ち込みますよね。あるいは,生きたまま埋めるなら,もっと深く穴を掘って埋めないとダメでしょう・・・まだ生きてるんだし・・・。

 それにしても,死刑に立ち会って生きたまま自分を埋めた人間に次々復讐していく,というのはいいとしても,そいつらをどうやって割り出したんでしょうか。事前に職員リストを手に入れていたんでしょうか。訳が分かりません。


 そういえば,後半の「バスルーム一杯の手足の山」は誰の手足だったの? あれは確かビショップさんの自宅ですから,彼の奥さんと娘さんかと思ったけど違いますよね。どっからか大量の手足を持ち込んで入れといたの? 一体,何のために? 訳が分かりません。

 そういえば,途中で,椅子に縛り付けた中年おばさんをトンカチみたいなので殴っていって殺すシーンはひどいです。ネチネチ・ジワジワと殴って頭部・顔面を少しずつ破壊していくんですが,このシーンがしつこくて長いです。ドイツ人,変なところで熱心です。
 ・・・というか,そもそもこの犠牲者は一体誰なんでしょうか。

 そうそう,ひどいといったら画像の暗さもひどかったな。特に,シードの自宅を警官たちが捜索するシーンは薄明かりだけなんで,一体なにが起きているのか目を凝らしてみても全然わからなかったぞ。

 そうそう,ひどいといったら,シードに妻子を誘拐されたビショップがいきなり警察署を飛び出してくる間を飛ばし,以前シードを逮捕したあの建物に行くシーンですね。「以前,そこにシードがいたから」という理由しかないんですけど・・・。

 最後の終わり方もひどいですね。後味の悪さは最大級です。普通なら妻子が殺される寸前にビショップが反撃にでる,あるいは子供の危機に母親が反撃にでる,なんてのがこの手の連続殺人鬼ホラー映画の常道なんですが,そのどちらでもないんですよ。
 見ている方としては,「これまではひどかったけど,最後はスカっとしたシーンで終わるはずだよね。それがお約束だよね」と思って我慢してみているのに,それを裏切っちゃうのです。これほど希望も救いもないエンディングは久しぶりだな。後味の悪さは《ミスト》とタメを張るな。
 映画としての格は《ミスト》と比べちゃ駄目だけど,いずれにしても,こういうタイプの映画は最後は因果応報というか,勧善懲悪というか,最後の最後に窮鼠猫を噛むというか,そういうエンディングにしてもらわないと見ている方が困るんだよね。


 というわけで,この映画だけは絶対にスルーして下さい。ほとんどの人にとってはトラウマの原因になるだけです。また,間違って見たとしても,いい子はこの映画の真似をしちゃ絶対にダメだぞ。

(2010/02/23)

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