《フィースト アンレイテッド・バージョン》★★(2006年,アメリカ)


 絵に書いたような低予算B級ホラー系モンスター映画なんですが,なぜかマット・デイモンがちょっぴり絡んでいることでちょっと有名な映画です。なんでも,デイモンとベン・アフレックが主催した新人発掘脚本コンテストというプロジェクトがあり,それで選ばれたのがこの映画の脚本らしいのです。

 ホラー映画の定石をことごとく破った作品,という触れ込みなんですが,実際見てみるとそれほど大したことはありません。全体的な雰囲気は《フロム・ダスク・ティル・ドーン》に似ていますが,映画としては《フロム〜》の方がはるかに面白いです。試みとしては面白いところは部分的にあるんだけど,全体に「小粒感」が漂っているところが残念,という感じですね。というわけで,B級モンスター系ホラー映画が好きな人以外は見なくていいでしょう。

 それにしても,マット・デイモンはこの脚本のどこが気に入ったんでしょうか。それが謎ですね。


 舞台はテキサスの田舎のバーで,いつもの常連が飲んだくれております。そこにいきなり,ショットガンを持った血だらけの男が入ってきて,「怪物が襲ってくる。すぐに扉も窓も封鎖しろ。助かりたかったら俺の言う事を聞け!」と喚きたてます。店の客の従業員たちはイマイチ事情が飲み込めませんが,男は怪物の頭を皆に見せつけます。しかしその瞬間,触手のようなものが窓を破って侵入し,ショットガン男が襲われ,首がねじり取られます。しかしそれは,血の惨劇の幕開けに過ぎなかったのでした・・・という映画です。


 まず,酒場の客と従業員がすごくいいです。一癖も二癖も三癖も四癖もある連中が集っていて,誰が最後まで生き残るのか,映画開始の時点では全く読めません。そして,登場人物が一人ずつ「名前(ニックネーム),職業,寿命」が紹介されるのが面白い試みです。しかも,この「寿命」が全然あてにならないんですよ。「ヒーロー」と紹介された男がいきなり死んじゃうし,誰が見ても「こいつはヒロインだな」と思う女性はしばらく活躍するんだけど,途中で死んじゃって「ヒロイン2」にヒロインの役を譲ります。このあたりはうまいですね。ちなみに,ヒロイン1号,ヒロイン2号ともにかなりの美人さんで華があってよろしいです。

 この映画は誰が見ても低予算映画です。予算をケチるためには出演者を少なくするか,セットをケチるかのいずれしかありません。そういうわけで,この映画ではセットを思いっきりケチッていて,舞台はバーの1階,2階,そして地下室だけです。モンスターさんたちもそういう事情を察して(?),窓を破ることはしても壁を破ったり天井を破ったりしません。モンスターたちも自粛した模様です。このため,映画の始めの方で,この手の映画に慣れきった観客側には「このモンスターはバーの中には入ってこないんだな」と予想がついてしまいます。


 モンスターというかクリーチャーは有明海名物のワラスボそっくりで,特に目新しい姿格好をしているわけではありません。しかも,モンスター君たちの動きは素早いし画像も暗めなんで,何がどうなっているのか,何が起きているのかがちょっとわかりにくいのが難点です。まぁ,B級モンスター映画にはよくあることですけどね・・・・。


これがワラスボ。干したのを焼いて食べると美味いです。

 ちなみに,このモンスター君たちが何者なのか,何が目的だったのか,どこから来たのかは最後まで不明でした。

 そういえば,モンスター君たち同士がエッチして子どもを産み落とすという,シーンもありましたね。エッチ⇒受精⇒体内成長⇒誕生・・・のスピードが半端なく速いのはさすがモンスターといった感じです。このあたりが「新感覚モンスター映画」なのかもしれませんが(オイオイ)

 スプラッターシーンはかなり力が入っています。首はちょん切れるわ,目玉は引っこ抜かれるわ,モンスターの腕が腹部を突き破るわ,顔にウジが湧いているわ,結構グロいです。そして,笑いを取るところではしっかりと笑いを取りに行っていて,このあたりのバランス感覚は非常に優れていて,私は好きですね。


 というわけで,B級ホラー映画を笑って楽しめる人だったら見てもいいと思いますが,それ以外の「良識ある映画ファン」はスルーしてよろしいかと存じます。

(2010/04/06)

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