《デビル・リベンジャー 復讐の殺人者》★★(2008年,カナダ)


 サスペンス・ホラー映画というかモンスター・ホラー映画なんですが,可もなく不可もない出来でした。発想そのものは悪くないと思うのですが,事件の背景説明の部分があまりに丁寧すぎるため,ストーリー運びがまったりしすぎ,「オイオイ,いまここでそれを説明する? 説明する前に逃げろよ」というシーンが多かったです。説明不足も困るけど,懇切丁寧な背景説明に固執すると映画としてのテンポが悪くなっちゃうんですよ。

 それと,低予算映画と思われますが,登場人物があまりに少なすぎるため,見ている方が「こんなテンポで最初からモンスターが活躍(?)したら,登場人物がいなくなるんじゃないの?」と心配になってしまいます。もしかしたら,登場人物の少なさを補うために,事件の背景説明を丁寧にして時間稼ぎをしたんじゃんかと思われます。


 舞台はカナダ(?)のど田舎。メラニーはこの町の生まれでしたが,母親の死を契機に父親が彼女を手放したため町を離れ,親戚に育てられていたようです。町のことも父親のことも忘れかけていた彼女に一本の電話がかかってきます。彼女の幼なじみと名乗るジミーという青年から,「父親のハワードが病気にかかって重病だ。娘に会いたがっている」というような内容です。とりあえず,10数年ぶりにメラニーは町に向かい,ジミーと落ち合いますが,実はそれはメラニーを誘い出す口実であり,本当は父親は少女殺しの犯人として追われていて森に逃げていることを知らされます。もちろんメラニーは父親が殺人犯だということは信じられず,父親を助ける手助けをしたいというジミーの言葉を信じ,ジミーとともに彼女がかつて父親と暮らしていた家に向かいます。

 その夜,家に保安官とその助手が現れ,この町にはジミーという青年はいないと告げます。そしてその頃,森の中ではハワードを捜索する男たちが次々と謎の怪物に襲われて殺されていきます。

 その森の怪物の正体は何なのか,ジミーは何の目的でメラニーに近づいたのか,ハワードは本当に殺人犯なのか,なぜ彼は森に逃げたのか・・・などの色々な謎をはらみながら,ついに怪物と人間の最終決戦の火蓋が切られるのでありました・・・ってなお話です。


 怪物の正体は映画の早い段階でわかっちゃいます。「あっ,あなたの手,泥で汚れているわ」,「ちょっと森で仕事をしてきてね」なんて会話,しちゃ駄目だよ。この会話じゃ,「こいつが犯人です」と言っているようなもんじゃないですか。おまけに後でもう一度,同じような「泥で汚れた手」がもう一度クローズアップされます。こういうシーンはですね,画像として映しても言葉で説明しちゃダメなんだってば。このあたりの作り方,馬鹿正直というか下手ですね。

 ちなみに,DVDジャケットも思いっ切り化け物の正体を証しちゃってますね。何でこんなジャケットにしちゃったんでしょうか。普通ならモンスターの姿と恐怖に怯えるメラニーの顔をジャケットにするはずです。DVD販売元がネタバレしてどうするつもりなんでしょうか。

 で,20年前に少女殺人事件があったんですね。そして保安官のハワードはすぐに容疑者を特定するんだけど,こいつがなかなか口を割らないもんだから,ハワードとその仲間4人が森の中にこの容疑者を連れ出してこの男をリンチにかけて殺してしまい,死体を沼に投げ込んでしまったんですよ。そして,それに加担した4人が次々と変死を遂げ,最後に残った一人がハワードだったと言うわけなんですね。もちろん,沼に投げ込まれた男の怨念が怪物になったわけです。ちなみに,ハワードが犯人と疑われた映画冒頭の殺人事件も,この怪物くんが犯人でございます。


 この「森の怪物」はCGです。変身シーンは2カ所くらいあり,ジミーが下を向いたかと思うといきなり肩のあたりにツタや葉っぱがモシャモシャと生えてきて,全身がツタみたいな奴で覆われます。こいつがドシンドシンと歩いてきて腕をギューンと延ばして頭を鷲掴みにして人間を殺す,というのが基本パターンなんですが,巨大というほどではないし,それ以外の殺人技や武器を持っているわけではないため,そんなに強そうにも怖そうにも見えません。

 おまけに,森の精みたいな格好をしているくせに森の中に隠れているハワードを見つけ出せません(だから,メラニーを囮にする必要があったわけですね)。森の怪物なら森のことをすべて把握しけよ,と文句を言いたくなります。要するに,強いんだか弱いんだか,恐ろしいんだかそれほどでもないんだか,ちょっと微妙な感じのモンスターです。

 よく考えてみたら,ジミーはメラニーを騙して彼女を囮ににっくきハワードをおびき出すという作戦なんですが,それだったら,あんな面倒なことをせず,いきなりメラニーを捕まえる,という作戦をなぜとらなかったのかという根本的な疑問を抱くと思いますが,とりあえずは気が付かないフリをしてあげるのが,大人の知恵ってやつです。

 こういうモンスターには弱点があるのが定石です。ヴァンパイアには太陽を浴びせればいいし,ゾンビは頭を吹っ飛ばせばいいし,狼男には銀の弾丸です。ところが,この映画のモンスターの場合,他の説明でモタモタしているため,モンスター自体能力と弱点についてはほとんど全く説明されていません。でも,それではモンスターを倒せないため,唐突に「町の境界を越えられない」と言うオイオイな弱点を持ち出すという反則技に出ます。なぜ町の境界を越えられないのか,適当でもいいから何らかの説明を付けてほしかったですが,この映画を作ったスタッフにそこまで求めるのは酷というものかもしれません。


 というわけで,モンスターさえ登場すればどんな映画でもいいや,という心の広い人だけご覧下さい。

(2010/04/20)

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