《赤ずきんの森 Wild Country》(2006年,イギリス)


< 笑うしかないくらいつまらないモンスター映画でございました。「赤ずきんの森」というタイトルの映画はもう一つありますが,このイギリス映画は一般に「つまらない方」と呼ばれております。トホホ度当社比100%増しでございますの,レンタルショップでこのDVDジャケットを見たら,絶対に借りないでください。ドブに金と時間を捨てるだけです。 /P>

 このくらいの映画になると「ネタバレ」なんて高級なことをいう人もいないと思いますので,ストーリーを紹介しながらツッコミを入れていきたいと思いますので,そこんとこは一つ,夜・露・死・苦!


 映画は16歳の高校生,ケリー・アンが出産でいきむシーンから始まります。で,何とか赤ちゃんが産まれますが,すぐに赤ん坊は別室に連れていかれます。そしていきなり,母親と二人になると「神父様が養子に出した方がいいとおっしゃるのよ」ってな会話になっちゃいます。何でアンの父親でなく神父様なのか,そもそもなんで神父様が仕切っているのかよくわかりませんが,とにかく神父様が仕切っています。で,子供はどこかの夫婦に引き取られます。

 で,場面はいきなり6ヶ月後にワープ。アンは母乳を絞って冷蔵庫に入れてますが,何のために保存しているのか説明はありません。すると,神父様運転のワゴン車がやってきて,友人たち(男2人,女子1人)が乗っています。もちろん,アンの同級生です。男子2人は兄弟で,お兄ちゃんは女子1人とラブラブ中であることが後に判明。彼らはどうやら大自然の中で地図の見ながら目的地に到着するオリエンテーリングをするらしいです。そして車中で神父様は「昔,この辺には人喰い一族がいてさ,旅行者を襲っては喰っていたんだ。でも見つかって火あぶりにされたんだけど,人喰い一族の孫が逃げ出した,っていう伝説があるんだよ」と,しなくてもいい話でアンちゃんたちを怖がらせます。

 で,オリエンテーリングの出発地に無事到着し,「目的地の宿泊所は30キロ先だからね,頑張るんだよ」とか言って神父様は車に乗って行っちゃいます。神父様と入れ替わりに一人の若者が合流。どうやらアンちゃんの妊娠のお相手のようです。いろいろあって歩いていきますが,アンちゃんの耳にはかすかに赤ん坊の泣き声が聞こえたりします。

 で,夜になってテント設営。そうそう,これ以降は夜のシーンなんで画面がやたらと暗く,なにが起きているか目を凝らして見てもよくわかりません。何が起きているか意地でも見せないからね,という監督の心意気を感じます。

 で,食事も終わり,女子一人がトイレ(といっても野原だけどね)に向かいますが,物音がして彼女が振り返ると見知らぬ男が立っています。女子,金切り声をあげます。男子たちが救出に向かい,男をおっぱらいます。男,這々の体で逃げます。すると,その男に猛獣のような唸り声が近づき,いきなり襲われて首筋から動脈血がビュービュー吹き出します。

 一方,アンちゃんとお相手男子はよりを戻し,いい雰囲気になりますが,またも赤ん坊の泣き声が聞こえます。声を頼りに古城に到着した二人は先ほどの男の死体を発見し,その傍らで泣いている赤ん坊を発見。アンちゃん,赤ん坊を抱き上げて仲間のところに戻り,死体のことを話し,ここにいたら危ないと言います。そこで全員,出発します。

 女子一人が何かに襲われて足を滑らせ,川岸近くまで転落し,動けなくなります。男子2人が救出に向かいます。すると暗くてよくわからないんですが,今度はアンちゃんに何者かが近づきます。男子二人,暗くてよくわかりませんがアンちゃんを助けようとします。すると,暗くてよくわかりませんが川岸の女子が襲われ,頸動脈から動脈血がビュービュー吹き出します。

 生き残ったアンちゃんと男子二人(男子一人がどっかで殺されたんだけど,どのシーンだったか記憶にありません)は,なぜか古城が安全だと考え(普通なら,死体が転がっている古城はヤバいと思うところですが,何しろロケ予算が足りないのでこういう判断になります),古城に到着。なぜか,モンスター君は姿を現さず,朝になります。

 明るくなるとモンスター君は全貌を拝ませてくれます。見た瞬間,皆様が「何だ,この不細工なクリーチャーは!」と吹き出すはずです。どっから見ても不細工なイノシシです。この不細工なイノシシ,どっかで見たことがあると思ったら,ゴヤの版画集『戦争の惨禍』に登場する怪物にそっくりです。

 それはさておき,男子二人はモンスター君をおびき出して上から石を落としてやっつけるという大雑把な作戦を立てます。この大雑把な作戦,なぜかうまく行きます。

 これで「めでたし,めでたし」かと思って時計を見ると,上映時間はまだ20分以上残っているじゃありませんか。ってことは,モンスターはもう一匹いるんじゃないか,と誰しも考えますが,その通りになります。残っていた男子二人のうち一人が呆気なく殺されます。お約束で頸動脈がビュービュー吹き出します。

 赤ん坊を抱えたアンちゃんと彼氏は草原を走ります。走ります。走ります。モンスター,なかなか追ってきません。アンちゃん,走ります。走ります。走ります。大きな木があります。二人は木に登ります。モンスター,ようやく追いつきますが,木に登れずに周りをウロウロします。ウロウロします。ウロウロします。アンちゃんと彼氏は「本当はあなたに会いたかったの」なんてかったるい会話を続けます。続けます。続けます。

 朝になり,モンスターが見えなくなります。彼氏,木から降ります。モンスター,近くで隠れて見てて,降りてくるのを待ちかまえています。彼氏,モンスターに襲われます。彼氏,モンスターより頭悪いです。彼氏,「アン! お前だけでも生きろ!」と格好よく叫んでどっかに走っていきます。囮になったみたいです。

 アンちゃん,赤ん坊を抱えて木から降り,野原を走ります。走ります。走ります。モンスター,追ってきません。アンちゃん,野原でバギーに乗った男を見つけ,助けを求めます。そのままバギーに乗せてってくれるかと思ったら,男はバギーから降りて牛の死体に近づき,「BSEかな?」とかノンキなことを言います。死体の腹部が動いたかと思うとモンスターが出現し,男は呆気なく喰われます。

 アンちゃん,バギーに乗って逃げます。逃げます。逃げます。向かった先は神父様の待つ宿です。アンちゃんが到着した時,神父様は宿の女主人とベッドの中です。神父様,慌ててパンツを穿きます。みっともない格好に女主人,「あんた,神父様だったの?」と笑い転げます。

 アンちゃん,神父様に事情を話しますが,神父様は信じようとしません。自分の赤ん坊が奪われてしまったから,どっかから赤ん坊を誘拐してきたものだと思っています。

 宿の女主人,庭に出て仕事をしています。神父様,近づきます。するとモンスター君が登場します。神父様,自分だけ家の中に戻りドアの鍵を閉めます。女主人,モンスターに喰われた模様です。神父様,腰を抜かして這うように階段登り,アンちゃんが赤ん坊にオッパイをあげている部屋に入ります。振り返ったアンちゃんの顔が恐ろしげに変わったかと思うと,突然モンスターに変身し,神父様の悲鳴が聞こえます。

 エンドロールの直前,仲良くスキップしながら遊ぶモンスター親子の様子が映って映画はおしまいになります。めでたし,めでたし・・・ってか?


 ところで,最初の方で神父様が教えてくれる「伝説の人喰い一族」ってどこに行ったんでしょうか。人喰い一族の末裔が変身してあのイノシシ君になっちゃったの? 人間から思いっきり退化しちゃってますけど・・・。

 それにしても,なぜこの映画に《赤ずきんの森》という邦題をつけたのか,最後まで不明です。

(2010/05/02)

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