新しい創傷治療:ブラッド・パラダイス

《ブラッド・パラダイス》★★★(2006年,アメリカ)


 この映画を見たら,ブラジルへは観光では絶対に行きたくなくなるという「反ブラジル観光映画」でございます。よくブラジル政府がこの映画に対して文句を言わなかったな,と思いますよ。「日本人はイルカ食べる野蛮人」映画なんて,この映画に比べたらおとなしいもんです。私がブラジル人で,この映画が上映されているのを見たら映画館に爆弾仕掛けちゃいますよ。

 ちなみに,この映画は全米発登場でいきなりトップテン入りを果たしていまして,監督はイケメン兄ちゃんとナイスバディ姉ちゃんが沈没船探しをする《イントゥ・ザ・ブルー》の監督さん。《イントゥ》は海の中の様子が息をのむほど美しい映画でしたが,こちらの《ブラッド》も水中シーンはムチャクチャきれいです。


 アメリカ人兄妹のアレックスとビー,その友達のエイミーの三人組はブラジルの田舎をバスで巡って楽しんでいる最中。しかし,バスの運転手の荒っぽい運転でガードレール一つない山道をビュンビュン飛ばしております。と,その時,バスは道をはずれあわや崖に転落しそうになって立ち往生。バスの乗客は何とか脱出しますが,その時バスは崖から真っ逆さま。

 九死に一生を得たバスの乗客はバスの運転手に詰め寄りますが,「次のバスは10時間後に来るよ」とのんびりしたものです。そこでアレックスたちは地元民から,ちょっと向こうに海辺のバーがあると聞き,10時間後にここに来ればいいんだろ,ということで海辺に向かいます。

 そして彼らの目の前に,ここはパラダイスかという美しい海辺が広がります。そこで彼らは水着姿になり(一部トップレスあり),海で楽しんだり,酒場で飲んだり,他のバックパッカーや現地の女性と仲良くなったりして,夜には飲めや歌えの大宴会。あっちこっちでカップルが誕生し,エッチなんぞしまくるわけです。人なつこく親切なブラジルのボニータさんたちに「俺は一生,ここに住むぞ!」なんて口走っているバカもいます。

 そして翌日,荷物も現金もパスポートも靴もすべて盗まれて身ぐるみ剥がされた状態(とは言っても服は着ておりますが)で目が覚めます。こりゃ,あの酒の中に何か入れられたな,ということで警察に向かいますが(もちろん,全員素足ですね),村人はうってかわってよそよそしく,警察の場所を聞いても要領を得ない答えばかり。そうこうしているうちに,アレックスたちは村の子供が自分の帽子をかぶっているのを発見し,この泥棒野郎,と追いかけますが,その子供の父親と口論になって村人たちに囲まれ,這々の体で逃げ出します。

 そこに,昨日親しくなった村の青年キコが親しげに話しかけてきます。そして彼は,ここは危険だから山の中にある親戚の家に逃げた方がいい,とアドバイス。しょうがないので全員キコの後をついていきますが,山道を歩いても歩いても歩いても到着しません。キコは歩いて10時間しかかからないし,なんて言っております。途中で近道になる(?)滝の下の水中洞窟を通り抜け(これが後半の脱出路になるのだ),なんとか道一つない山奥のコテージに到着。誰もいないそのコテージで食料や服を見つけた彼らは人心地ついて休んでいましたが,なんとそこにヘリコプターの爆音が近づいてきて・・・という映画でございます。


 ネタバレというほどのことはありませんので先に書いちゃうと,臓器売買のために生きた人間(=旅行者)から臓器を取り出してはリオの病院のヘリで運び,臓器移植を待って世界中から集まっている金持ちどもに臓器を売りつけている組織の黒幕医者がそのコテージの持ち主だったんですね。海外からのバックパッカーで行方不明になる奴がいるけど,実は臓器を生きながら取られているらしいぜ,という都市伝説(?)をそのまんま映画のテーマにしているわけです。

 人跡未踏の山奥に手術室を作って,摘出した臓器をヘリでリオの病院に運ぶというのは荒唐無稽なんだけど,ブラジル旅行にきている兄ちゃんと姉ちゃんどもは,バカ騒ぎとセックスと酒とドラッグしか頭にないバカですから,まぁ,こいつらの3人や4人が消えても誰にもわかりゃしないよな,という感じで,変にリアルです。

 ちなみに,臓器摘出シーンはこの手の映画としては律儀にリアルに作っていてかなりグロですから,こういう映像が弱い人は絶対に見ちゃダメでしょう。数日間,夢に出てきますよ。

 とは言っても,悪徳医者はポロシャツ姿で手術しているし,取り出した臓器は血管の処置もせずにそこらのタオルでくるんだままだし,クールボックスにも入れてません。たぶん,1時間くらいで臓器移植には使えなくなると思います。ま,学術映画じゃないんだから,そういうところにツッコミを入れてもしょうがないですけどね。


 この映画でなんと言っても素晴らしいのは,水中洞窟のシーンです。暗い水中の中から見上げた時のきらめく水面の輝き,変幻自在に姿を変える魚の大群の美しさ,そして魚たちに混じって泳ぐ若者たちの伸びやかな肢体は,幻想的と言ってもいいほど華麗で見ていて飽きません。
 そして,後半のコテージから脱出し,水中洞窟を洞窟の天井にわずかにたまった空気を吸いながら逃げるシーンは息苦しくなるリアルです。

 ただ,その直前の臓器摘出シーンが余りにリアルで凄惨なため,この水中シーンの美しさは逆にバランスを欠いてしまったような気がします。

 この後半の水中シーンはリアルさを追求してしまったため,画面が暗すぎて(何しろ洞窟の中),誰が逃げているのか,誰が追ってきているのか,どうやって逃げているのか,誰が死んだのかがすごくわかりにくいです。このあたりは「不自然だけどもうちょっと明るい映像」にしてくれると,見ている方が助かります。


 というわけで,この映画からは次のような教訓が引き出せます。

 というわけで,今後,ブラジルの秘境旅行に行こうと計画している人は上記を参考にしてください。

(2010/07/14)

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