新しい創傷治療:ヒューマノイド

《ヒューマノイド》(2006年,イギリス)


 評価できる点がただの一つもないという,ゴミくず映画。DVDジャケットもダサダサなんで「もしかしたら隠れた傑作SFか?」と騙される人もいないと思うけど,間違っても手に取らないようにしましょうね。逆に言えば,クズ映画ファンとしては,よくぞ見つけたな,嬉しくなる逸品(?)ですね。

 配給会社は次のように宣伝しているみたいです。

イギリスに不時着したのは,なんと人間型宇宙人(=ヒューマノイド)だった。父は不時着時に人間の民兵組織に捕らえられてしまったが,逃げ延びたステルは英国特殊部隊とタッグを組んで,盗まれたトップシークレットファイルを追う! しかし,最強ともいえる覆面兵士がシークレットファイルを守っていた。悪党の手に売り渡される前に,彼らはファイルを取り戻すことができるのか? そして人間の民兵組織にとらえられた父親を,ステルは救い出すことはできるのだろうか? イギリスで作られた映画だが,DVD発売は日本とブラジルが早く,アメリカが続く形となった。


 一応,設定からいえばアクション系SF映画なんですが,見ている方もSF映画であることを忘れてしまいます。SFっぽいのは最初の方と最後の方でちょこっと円盤型UFOが登場場面しかありません。おまけに登場するエイリアンは見たまんま地球人(白人)です。だからヒューマノイドなんですけどね,あまりと言えばあまりです。これまでも数え切れないほどのクズ・エイリアン映画を見てきましたが,地球人しか登場しないエイリアン映画というのは新機軸と言えます。もちろん,エイリアンを作るだけの金がなかっただけですけどね。

 そして,あとはひたすら格闘シーンが延々と続くだけです。しかも戦っているのは地球人と地球人型エイリアンですから区別が付けにくいです。そういう欠点を補うために「エイリアンと対決する地球人の服装を場面ごとに決める」という工夫をしています。地球人は最初の方は特殊部隊の服装で統一,最後の方ではネクタイとスーツ姿で統一,エイリアンはジャンパー姿とわかりやすいです。もちろん,エイリアンをエイリアンらしく造形していれば,もっと分かりやすかったですけどね。

 武器を持って襲ってくる地球人に対してもエイリアンは素手で格闘技だけでバッタバッタと倒していきます。どうやら動きが凄く速くて力も強いからですが,特殊な技があるわけではないので,見ていると次第に飽きてきます。誰が誰と戦っているのか次第にどうでもよくなってきて眠くなって困ります。逆に,不眠症の人にはとてもいいかもしれません。


 冒頭,「エイリアンには2種族あって,地球にはどちらも手を出さないと言う協定を結んでいたんだけど,地球の有力者が一方の種族と手を結んで優れた技術を提供してもらった。その見返りとして地球の有力者は地球人をエイリアンに生体解剖の材料として提供した。それに反対する地球人の勢力があって・・・」という背景紹介があるんですが,これがその後の展開に全く絡んできません。特に,エイリアン同士の争いなんて,全く関係ありません。多分,映画を作り始めた最初の設定を監督自身が忘れてしまった模様です。クズ映画にはよくある展開ですね。

 そうそう,そもそもこの映画は「一方のエイリアンの指導者が地球偵察中に地球人に捕まって監禁され,彼を救うために息子と娘が地球に潜入した」ということから始まります。監禁場所を記した秘密ファイルを巡ってエイリアン息子と娘が地球人と戦うんですが,息子はめでたくファイルを入手し,それを手に自分の惑星に戻っていくんですよ。オイオイ,それでおしまいかよ。父親を助けるんじゃなかったの? というか,父親を助けるの,すっかり忘れてない?

 その他にも,何のために出たのかよくわからない暗殺者お姉ちゃんとか,顔を隠したままの「人造人間」とか,特殊部隊に初めて参加した男とかその家族とか,よくわからない人間がたくさん出てきます。無駄に人間が多いです。そして,ストーリーはそれに輪をかけて何がなんだかよくわかりません。ストーリーを理解しようとすると努力をいっさい拒絶するストーリー展開が続きます。もしかしたら,この映画を作った人の頭には「ストーリー」とか「物語」という概念が欠落しているんじゃないかと思います。


 そういうわけで,久しぶりの清々しいほどのクズ映画でございました。眼福,眼福。

(2010/10/01)

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