新しい創傷治療:パラノーマル・エンティティ

《パラノーマル・エンティティ "Paranormal Entity"★★(2009年,アメリカ)


 ちょっと前に「すげえ低予算なのに,すごく怖い映画」ということでちょっと話題になったのが《パラノーマル・アクティビティ》という映画でしたが,こちらの方はタイトルも設定もすべてパクっちゃった映画らしいです。「らしい」と書いたのは,本家の《アクティビティ》は見ていないからでございます。そんなわけなんで,《アクティビティ》とここは同じ,ここは違っている,なんているような比較はできませんので,あしあらず。


 舞台はアメリカのどっか。冒頭,ある一家で殺人事件が起こり,兄が妹をレイプして殺し,兄が逮捕されたが・・・と,最初に結末が明かされます。

 1年前に父親が交通事故で亡くなったフィンリー一家というのがいて,母のエレン,息子のトーマス,娘のサマンサの3人暮らし。エレンが40代半ばくらい,サマンサは20代初めでしょうか。夫の突然の死からまだ立ち直れないエレンはある日,文字を書くことであの世の霊と交信できると教えられ,それを始めます。しかしその頃から,一家の暮らす家では不思議な現象が起こり始めます。

 不安になったエレンは心霊学者の指示で,家の各所(サマンサの部屋,母親の寝室,居間など)にビデオカメラを設置して録画を開始し,同時にはトーマスはハンディカメラでその家で起きたことを記録していきます。

 当初,壁に掛けてあった十字架が落ちたり,夜,突然テレビのスイッチが入ったりという程度でしたが,そのうち,サマンサが襲われるようになり,エレンとサマンサはホテルに避難しますが,なんとそいつはホテルにまで追ってきてホテルでも母娘は異常現象に見舞われます。

 そして,それまで旅行に出ていた心霊学者がついに合流し,その霊の正体を明かしますが・・・という映画でございます。


 純粋にホラー映画としてみるとそこそこ楽しめますし,箸にも棒にもかからないパクリ作品というほどひどくはないです。

 確か,本家の《アクティビティ》の方は部屋の片隅に置いた固定カメラに写っていた映像だったと思いますが,こちらの方は,家の各所にビデオを設置し,さらにお兄ちゃんのトーマス君が終始ビデオを回してくれているため,視点という点ではちょっと工夫しているようです。

 ただ,悪霊さんが襲ってくるのは夜だけ(多分,昼は寝ている悪霊なんでしょう)なので,日中のトーマス君のビデオにはいろいろな作業をしている様子が映っているだけなんで,基本的には単調さは否めません。


 悪霊さんも最初はいたずら程度の現象しか起こしませんが,次第にエスカレートしていき,最後にはサマンサちゃんを殺しちゃうのですが,「ここで物語は一気に加速するはずだよね」と思っているところで朝を迎えるため,そこで物語は一気に失速しちゃいます。低予算で作ったために映像的に加速できなかったという舞台裏の事情はわかりますが,もうちょっとどうにかして欲しかったです。

 それと,超常現象が起き始めてからサマンサちゃんが死ぬまでに20日以上かかっているのも,間延びした原因でしょうね。そんなに時間があるんだったら,普通ならいろいろな対策をとるとか,頼りになりそうな人に片っ端から相談するとか,開き直ってテレビ局にネタとして売って「怪奇現象が起きている家」ということで取材させるとか,いろいろなことができるはずです。それなのに,ひたすら心霊学者からの連絡を待って20日間,というのはあまりにもマヌケすぎ。


 それと,心霊学者が登場してからが余りにも急展開すぎますね。学者先生,登場して悪霊君の正体を説明したと思ったら,その数分後には絶命だもんなぁ。しかもその数十秒後にはサマンサちゃんまで! 今までのノロノロ展開を一気に挽回しようと急転直下の殺しまくりです。学者先生,もうちょっと頑張って欲しかったです。

 そういえば,この学者先生,「霊はこの家に取り憑いていて,サマンサに興味を持ち・・・」と説明してくれます。なにやら地縛霊みたいな感じがするのですが,それならなぜホテルに避難したサマンサちゃんを見つけ出せたのでしょうか。エレンとサマンサは昼に逃げ出していますから,午前2時過ぎにしか出勤してこない悪霊君は見つけられないと思うんだけど・・・。


 あと,サマンサちゃんは超美人ではありませんが普通に美形で,かなりお見事な巨乳さんです。特に,最初の方で真横から映すシーンではセーター姿ですが,ちょっとした迫力でございます。その後,夜に寝るシーンが繰り返されるたびに次第に薄着になっていき(悪霊君がやってくることがわかって君はなぜこんな薄着で寝られるわけ?),最後の殺されるところではオッパイ披露となりますが,仰向けの死体さんですので,そちら方面を期待して最後まで見た人には,「ちょっと当てが外れちまったぜ」かもしれません。

 それにしても,ビデオにはいろいろな怪奇現象が録画されていて,それをエレンもサマンサちゃんも見て知っているはずなのに,よくまぁ,こんな「怪奇現象付きベッド&部屋」で暢気に寝てられるもんだよ,と逆に感心しちゃいました。普通なら逃げ出すんじゃないでしょうか? 少なくともサマンサちゃんは,パンツとブラだけでなく,いつでも逃げ出せるような格好で寝た方がいいと思うよ。


 というわけで,本家の《アクティビティ》をまだ見ていない方限定の映画と思われます。ちなみに,この映画,生意気に続編《パラノーマル・エンティティ2》も2010年に公開されているようですが,《1》より更につまらなくなったらしいです。これもそのうち見てみようかなぁ?

(2011/04/15)

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