新しい創傷治療:ファイナル・デッドコースター

《ファイナル・デッドコースター》★★(2006年,アメリカ)


 「ファイナル・デスティネーション」というシリーズもの映画があります。第1作目は飛行機事故をテーマにした《ファイナルデスティネーション》(2000年),第2作目はハイウェイ事故を描いた《デッドコースター》(2003年),そして今回のジェットコースター事故を扱った第3作目が本作品です。私は第1,第2作目は見ていないのですが,どうやら「運命は変えられない/宿命とは何か?」というのをテーマにしているシリーズのようですが,この第3作目はかなり悪趣味のスプラッター・ホラー映画です。

 アメリカの映画には,「運命は最初から決まっていて,運命から逃れようとしても変えようとしても無駄な努力である」というのが結構ありますが,これもキリスト教の影響なんでしょうか。何しろこの宗教は「最後の審判」という最終ゴールが最初に決めていて,それが必ず訪れる,あらがいようのない未来であることを大前提にしています。最後の審判が来なかったら,ユダヤ教もキリスト教も困っちゃいますよね。そういう宗教が文化のベース・規範だから,「運命は最初に決まっていて,逃れようとしてもどこまでもどこまでも追いかけてくるんだよ」というストーリーの映画が多いんじゃないかと愚考するわけです。「黙示録にこう書かれているんだから,そうなることは決まっておるのじゃよ」という論理になってしまうのかな,ってね。


 というわけで,とりあえずストーリーを紹介。

 主人公はちょっとかわいい女子高生のウェンディ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。遊園地での高校の卒業パーティーに参加して皆の写真を撮影していますが,なにやら不吉なものを感じます。そしてジェットコースターで大事故が起こる幻覚(?)を見てしまい,コースター出発直前にパニックを起こし,コースターから降ります。一緒に乗る予定だった7人も渋々降りますが,ウェンディの恋人は別のコースターに乗っていて,出発します。そして,大事故が起こり全員死亡します。

 恋人を助けられなかったウェンディは悩みますが,彼の友達のケヴィンが同じような不思議な出来事が起きていることを教えてくれます。飛行機が出発する直前に飛行機が落ちることを予知した乗客が降り,飛行機は墜落して全員死亡し,飛行機から降りて助かった数人もその後,飛行機の座席順に不可解な死を迎えた,という事件です。

 そして数日後,ジェットコースターから降りて助かった女子生徒2人が,日焼けサロンで炎に包まれて死亡します。彼女たちは,ジェットコースターの一番先頭に乗っていたのです。

 やがてウェンディは,卒業パーティーで撮影したデジカメ映像に死因が予告されていることを知り,彼らを救おうとケヴィンとともに奔走しますが,誰も二人の警告を信じようとはせず,彼らは無惨な死を迎えていきます。そして,残りはウェンディとケヴィンとなり・・・という映画です。


 とにかく,殺され方がグロくてエグいです。日焼けサロンで焼け死ぬわ,トレーニングルームで頭が潰されるわ,ドライブスルーでトラックがぶつかってくるわ,杭が飛んできて串刺しになるわと,やりたい放題です。たぶん,この手のスプラッター・ホラーに慣れていない人は絶対に見ない方がいいよ,というレベルです。

 ただ,惨殺場面を次から次へと,それこそジェットコースターのように見せられると,なんだか玩具箱をひっくり返しているような感覚になってきます。だから,怖いという感じはなく,ただただはグロいだけです。スプラッターも度を超すとホラーというよりギャグになっちゃうんですね。要するに,やたらとうるさいだけのお化け屋敷みたいなもんです。


 それにしても,アメリカ映画に登場するハイスクールのお兄ちゃん,お姉ちゃんたちのうるさいこと,うるさいこと。同級生たちがジェットコースターの事故で死んでいるというのに,卒業パーティーだ,花火大会だと遊び回ることしか頭にありません。お前等,少しは死者を追悼しろよ。
 おまけに,ジェットコースターの生き残りが次々と怪死を遂げているのは事実なのに,それをおかしいと感じてもいません。要するに,ケヴィンとウェンディ以外は死亡フラッグ立ちまくりのおバカさんばかりです。だから余計に,彼らの死に方は無惨だけど自業自得じゃないの,という感じが強いです。感情移入ができないおバカさんが3人死のうと5人死のうと,知ったこっちゃないよね,という感じですね。


 この映画で面白いのは,やたらと「ピタゴラスイッチ」みたいな仕掛けが登場すること。要するに「小さな玉が一個転がってきて,それが立てかけている棒を倒し,その棒が・・・」と連鎖を生み,最後に首をチョンぎったりするんですが,これがバカバカしくも楽しいです。多分,作っている側も楽しんで仕掛けを考えたんでしょう。

(2012/06/08)

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