新しい創傷治療:セクシー・キラー リベンジ・オブ・ザ・デッド

《セクシー・キラー リベンジ・オブ・ザ・デッド "SEXYKILLER, MORIRAS POR ELLA"★★★★★(2008年,スペイン)


 いやはや,これは面白かった。アホバカ・ホラー映画なんだけど,映画が始まったとたんにジェットコースターが走り出し,息つくまもなく,あれよあれよという間に感動のエンディング! シリアルキラーのお色気姉ちゃんがパカパカ殺しまくるわ,様々な名作映画のパロディーはあるわ,スプラッターシーンは満載だわ,次から次へと美女は登場するわ,SFっぽい機械は登場するわ,ゾンビは暴れるわと,オモチャ箱をひっくり返したような面白さです。しかも,最初から最後までパワーが全然落ちないときてるから,もう感動するしかありません。

 もちろん,とてもじゃないけど万人にお勧めできる作品じゃないし,良い子は絶対に見ちゃダメシーン満載の悪趣味映画だけど,グロでも悪趣味でもいいからパワフルなおバカ映画が見たいという人にだけお勧めするスペイン映画です。ま,要するに,バカ映画ファンのための極上のバカ映画ですな。

 こういうアホバカB級映画に最高級評価を与える私も私だが,私一人が面白ければそれでいいのだ。他の人の評価なんて知ったこっちゃないのだ。


 ストーリーはこんな感じ。医科大学のキャンパスで次々に殺人事件が起きて,学生や教官が次々に犠牲者になるんだけど,実はそれは小悪魔系女子学生のバーバラ(マカレナ・ゴメス)の仕業でした。彼女は殺人衝動に駆られると我慢できないのです。

 一方,解剖学教室(と映画にはあったけど,たぶん法医学教室だろうな)でバイト(?)しているオタク系学生トーマス(セサール・カミーノ)は次々とかつぎ込まれる遺体の解剖で大忙し。同じ教室で働く友人のアレックスは「死後1時間以内の脳が記憶している映像を取り出す実験」なんぞをしております。

 そんな,人殺しで大忙しのバーバラと遺体解剖で大忙しのトーマスがパーティーで出会い,バーバラはトーマスを自分と同じシリアルキラーだと勘違いし,一方,トーマスはバーバラを自分のことを理解してくれる唯一の女性と勘違いし,勘違い二人組は恋に落ちます。

 そしてトーマスは警察の命令で死にたてホヤホヤの遺体の脳を蘇らせますが,なぜか死体も蘇り,猛烈に腹を減らしたゾンビとなってバーバラとトーマスのいるパーティー会場に向かうのでありました・・・ってな,ムチャクチャ映画でございます。


 とにかく,冒頭,ピチピチ姉ちゃんのお着替えシーンから始まります。いくつか美乳が拝めますが,実はオッパイシーンはここだけでございます。そういうお着替え姉ちゃん一杯の更衣室に忍び込んでいるのはあの《スクリーム》仮面の男ですが,実はこいつ,単なる覗き見野郎です。最初から笑わせてくれます。


 そして,殺人鬼のバーバラちゃんが登場します。細身で巨乳ではありませんがスタイルはよろしいです。しかし,美人系の顔立ちなのになぜかあまりかわいくありません。メイクがきつすぎます。そのため,どう見ても『スリラー』のマイケル・ジャクソンに見えてしまいます。実はこれ,マイケルにわざと似せたと思われ,後半の「トイレでゲロを吐く美女」を殺すシーンでは,もうもろにマイケルその人です。なるほど,このための伏線だったのか。ここまでやるんだったら,途中のミュージカルみたいなシーンではムーンウォークを踊らせてもよかったかもしれません。

 また,最後のパーティー会場で両手に銃を構えて押し寄せるゾンビを次々に撃ち殺している(・・・ゾンビだからもう死んでるけど)シーンも格好良く決まっているし,連続殺人のシーンも手を変え品を変えて次々と「殺しのテクニック」を華麗に披露してくれます。

 ちなみにこのバーバラを演じるマカレナ・ゴメスさんは,画像検索するとわかりますが,本格派の美人ですので,この映画だけ見て「マカレナ・ゴメスってさ,マイケル・ジャクソンに似ているよね」なんて知ったかぶりをしないようにしましょう。


 それと,《羊たちの沈黙》のコネタとか《タイタニック》のワンシーンのパロディーも笑わせてくれました。そうそう,《羊たちの沈黙》の殺人犯はハンニバル・レクレーじゃないし,「タイタニックのあのデブ女がディカプリオと死ぬなんて許せない。デブは一人で死んじゃってよ」というバーバラのセリフにも大笑い。あの映画を見た女性の心を代弁しております。その他にも《13日の金曜日》ネタとか,《死霊のはらわた》ネタとかが随所にばらまかれています。

 仮装パーティーの会場にゾンビが押し寄せるシーンでは,会場内のゾンビメイク(=素人のメイク)と会場外の本物ゾンビのメイク(=プロのメイク)が全然違っていて笑わせてくれますが,こういう小技がいいです。


 ちなみに,解剖実習(?)のシーンをはじめ,スプラッター度はかなり高めで,ゾンビ映画お約束の「お食事シーン」もかなり気合いを入れて作っていますから,こういうのが苦手な人は見ちゃダメだぞ。

 そして,すべてのゾンビを退治した後,トーマス君の死体をお姫様抱っこして月に向かって歩くラストシーンは,バカバカしくも感動的です。無理矢理感動に持って行く力業がすごいです。力業と言えば,そもそもゾンビが登場する理由も無理矢理なんだけど,余りにテンポがよすぎるため,全然気にならないんですよ。やはり脚本がいいんでしょうね。


 というわけで,過去3年間に見たおバカ映画の中では,一,二を争う大傑作でございました。

(2012/06/21)

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