新しい創傷治療:ジュラシック・シャーク

《ジュラシック・シャーク》(2012年,カナダ)


 なんでまた、2012年にこんなサメ映画を作っちゃったんでしょうか。なんでこんなに質の悪い、出来の悪いサメ映画が作れちゃうんでしょうか。多分、死ぬまでに一度でいいからサメ映画を撮影してみたいんだよ、という素人が遊び仲間を声をかけて勢いで作っちゃったんでしょうか。そうとしか思えません。監督も脚本も撮影の俳優も、すべて素人で固めたという感じです。きっと、人件費を削りに削りまくったんだろうなぁ。

 これまで、数え切れないくらいの「クズ・サメ映画」を見てきましたが、《ジュラシック・ジョーズ》とタメを貼るくらいのダメっぷりに、逆に嬉しくなってきます。

 最近の巨大サメ映画では、古代のメガロドンが眠りから醒めて暴れまくる、という設定のものがやたらと多いですが、まさか水深数メートル(としか思えない)の淡水の湖にメガロドンが登場するとは思わなかったよ。もうここまでくると、ツッコミを入れる気力すらなくなる脱力映画でございました。

 ちなみにこの映画の最大の特徴はメガロドンではなく、80分弱の映画なのに最後のエンドロールでスタッフの名前を延々と13分かけて流すことと、ラストの崖のシーンは映画本体と全く関係ないことの二つです。ある意味「驚愕のラスト」です。


 まず最初に、メガロドンの説明(2800万年前に生息していた古代ザメで、体調16メートル)があり、それが終わると湖の畔で二人のビキニのお姉ちゃんが遊ぶシーンになります。どちらも3分後に喰われることがミエミエですが、美人でもないし巨乳でもないしスタイルもよくないフツーの姉ちゃんなので、さっさと死んで欲しいです。

 次いで、どっかの倉庫の廊下にしか見えないショボい研究室のシーン。どうやらカナダの湖の島で石油採掘の研究をしているようです。で、白衣の研究者が上司に「油田の上に氷床があったけど、氷は全部溶かして湖に流したから問題なし。明日からでも石油掘削が始められます」と説明。次のシーンは安っぽい階段で、白衣おっさんに部下の研究者のお姉さんが「あの氷の中に何か未知の生物や細菌がいるかもしれない。環境汚染をしてしまう」と意見しますが、白衣おっさんは聞く耳持たず。採掘を強行します。この研究所のシーンを見ただけで、この映画はどれほど金をかけていないのかよくわかります。貧乏が悲しいです。

 すると、施設のどっかが爆発します。理由はよくわかりません。すると、外で水浴びしていた姉ちゃん二人の耳にも爆発音が聞こえますが、「どうせ対したことはないわ」と判断し、水浴び続行。すると、二人は次々に水の中に引きずり込まれて姿を消します。この時点では、湖面に背びれも見えないし、血が吹き出すお約束のシーンもないため、何が起きたのか誰もわかりません。かろうじて映画のタイトルから「サメに襲われたんだろうなぁ」と納得するしかありません。


 続いて、太めおばちゃん1人と屈強な男4人が登場。どうやら絵画強盗団で、盗んだ絵画を運ぶ最中らしいです。5人組はボートに乗り込んで湖の中の島に向かいますが、その途中で何かがぶつかってきてボートが転覆し、1人が行方不明になります。絵画も湖底に沈みます。ちなみにこの時点では血しぶき一つ見えません。この映画で本当にメガロドンが登場するのか、次第に心配になってきます。

 次に登場するのはアメリカのアホバカ大学生4人組(正確に言えば、いい子チャンのお姉ちゃん、いい子チャンのお兄ちゃん、頭が空っぽな女子二人)。いい子チャンの姉ちゃんが、その湖の島で石油採掘会社が違法な採掘をしていることを調べる目的で来て、他の3人は遊びがてら来たようです。そして、ボートで島を目指しますが、やはり何かがボートにぶつかって転覆し、お兄ちゃんが行方不明になります。

 さっきから「ボートがひっくり返る」⇒「全員が湖に投げ出される」⇒「一人が食べられ、他の人は無事」というパターンが繰り返されていますが、この映画のメガロドンは重度の食思不振か、ダイエット中だったと思われます。


 先ほどの窃盗団の女ボスは手下の一人に「潜って絵を持ってこい」と命令しますが、手下はあえなくサメの餌になります。ここで初めて、サメのお姿(CG)を見せてくれます・・・が、どう見てもメガロドンではなく、そこらにいる普通のサメのようにしか見えません。しかも完成度が低いCGです。どうやら、まともなCGを作るだけの予算もなかった模様です。貧乏が憎いです。

 で、島に何とかたどり着いた女子学生3人は、先に到着していた窃盗団に出会いますが、女ボスはとりあえず「一般人」のフリをします。で、とりあえず明日の朝、明るくなったらあの研究所に行く計画を立て、その日はおしまい。

 翌朝、3人+3人は石油採掘施設に向かい、森の中を歩きますが、このシーンがやたらと長いです。このシーンを短くしたら、60分映画になったんじゃないでしょうか。悪党の3人組は後ろの方でなにやら悪巧みの相談をしております。無事に施設に到着しますが、誰がどう見てもただの廃工場跡というか廃倉庫跡にしかみえません。これを「研究所」と言い張る信念がすごいです。


 無線機を探すという当初の目的を忘れた女子学生は、なぜか建物の外に出て、血塗れの白衣で倒れている男を見つけます。もちろん最初に登場した博士です。南下の事故が起きたようですが、一切説明はありません。ここで悪党3人組は本性を現し、3人組と博士に銃を突きつけ、博士に「脱出用の乗り物はないか」と質問しますが、乗り物がないと知ると「あの絵画を取ってこいと博士に命令します。

 博士はしょうがないんで湖に入りますが、すぐに喰われます。その好きに女子学生は逃げ出しますが、呆気なく捕まって、一人が湖に放り投げられメガロドンの胃袋に直行。

 で、女ボスは女子学生に「今度は二人が湖に入って絵画を持ってくる番だけど、教はもう暗いから明日にする」と命令し、その晩は休みます。やたらと夜になると休むパニック映画です。ちなみにここで、女子学生のいい子ちゃんと女ボスの長々とした会話があり、盗んだ絵の作者とか、盗みの手口を丁寧に教えてくれます。この説明シーンを切ったら、50分映画になったと思います。

 で、悪党の一人が施設からダイナマイトを見つけだし、これでメガロドンを追っ払うから二人は湖に入れと命令。ちなみに、絵画が沈没したのは岸から300フィート(つまり90メートルくらい?)のところですが、どう見ても岸から5メートルくらいのところで潜っています。二人は絵を見つけますが、砂に埋もれて持ち上がりません。


 で、なんかゴチャゴチャした展開があって、悪党の一人がダイナマイトの誤爆で死にます。女ボスは女子学生に銃を突きつけますが、このとき、メガロドンが近づいてきて、女子学生をパクパクしちゃうかなと思ったその瞬間、宙を飛んで女ボスに噛みつき、女ボスは両足を残して胃袋へ直行。依然として、出血も何もありません。マネキンみたいな足が残っているだけです。ここで初めて、血糊をドバドバ使うだけの予算がなかったことに気が付きます。もちろん、人間が喰われちゃう様子のCGも作れなかったのです。あぁ、貧乏が憎いです。

 そして女子二人が残り、サメと決着をつけることにします。いい子チャンが湖に入ってサメをおびき寄せ、サメが口を開けたその瞬間、火の点いたダイナマイトを投げ入れるという、大胆不敵というか大雑把な作戦です。しかも、なかなか導火線に火が点きません。でも大丈夫。空気が読めるメガロドンは大口を開けてタイミングを計ってくれます。そこにダイナマイトが投げ入れられ、見事にメガロドンは倒されます。

 そして二人は脱出方法を探しますが、脱出できたかどうかは不明です。


 ここでお終いかと思ったら、なぜか岩場の上で釣りをしている親子(父娘)と父の友人の会話のシーンになり、ちょっと「深いい話」みたいになったそのとき、メガロドンが飛び出して二人をパックンチョして姿を消します。何なんだよ、このシーンは? 多分、最初の方で使う予定で撮り貯めていたけど、本編の方では使い道がなくなり、しょうがないのでエンドロールの前に入れちゃったのかな。いかにもこの映画にふさわしいエンディングでございます。

(2013/11/01)

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