『地球の水が危ない』(高橋 裕,岩波新書)
いうまでもなく,人間は水がなかったら数日で死んでしまう。命の基本は水そのものだ。
 しかし,20世紀後半から地球各地で大洪水と大旱魃が続いている。あの広大なアラル海は取水のために干上がる寸前だし,バングラデシュでは飲用水として利用している地下水にヒ素が高濃度で含まれているが,飲み水はそれしかない。そんな危機的状況を確かなデータを元に解説している本だ。

 ちなみに,人間生存権の最低限の生活用水は,一人一日あたり50リットルといわれている。つまり,これだけの水があれば,飲用水,料理用の水,洗濯に使う水,手や顔を洗う水,入浴用の水,トイレの水がまかなえるらしい。
 50リットルの水を思い浮かべて欲しい。2リットルのペットボトルで25本分。重さにして50キロ,かなり多い量だ。
 しかしこれで,喉の渇きを潤し,料理を作り,料理に使ったフライパンを洗い,鍋を洗い,食器を洗い,風呂で垢を落とし,顔を洗い,歯を磨き,うがいをし,シャンプーをし,水割りを作り,コーヒーを作り,紅茶をいれ,小便を流し,大便を流し,トイレで手を洗い,愛車を洗い,床を拭き,家具を拭くのだ。こう考えると,50リットルがいかに頼りない量かわかるはずだ。
 しかし,その50リットル以下の生活用水しか使用できない国が,55ヶ国もある(1998年の統計では)。そして,30リットル以下の国が38ヶ国で,最低はガンビアの4.5リットルだ。つまりこの国では,ペットボトル2本ちょっとの水が命の糧なのだ。

 ちなみに,2000年の日本の生活用水使用量は,一人一日あたり322リットルであり,これはアメリカに次ぐ使用量である。

(2003/03/05)

 

映画一覧へ

読書一覧へ

Top Page