《デビルズ・ストーム》(2004年,アメリカ)


 竜巻映画といえば『ツイスター』が有名。やたらと竜巻シーンがすごく,結局どういう内容だったか誰も覚えていないという映画ですが,この『デビルズ・ストーム』もそういう正統派竜巻パニック映画だと思って借りたら大間違い。こちらは〔悪魔崇拝系オカルト〕と〔竜巻パニック〕を合体させた,単なるゴミ映画でした。


 まず,褒めるところからね。主人公の男女(カメラマンとニュース・アナウンサー)のラブシーンがありません。普通のアメリカ映画だと,こういう二人は必ず無意味につがいになりますが,それがないのはいいです。

 それと,竜巻のCGはそこそこ迫力があります。車がビュンビュン飛んでいくし,人も宙を舞います。立木も引っこ抜かれます。

 あ,それとロマ(ジプシー)の少女は美人じゃないけど可憐で眼が綺麗でした。

 ・・・うーむ,他に褒めるところが見つからないなぁ。困ったなぁ。


 どういう映画かというと,アメリカの中西部あたりで,気象学者で竜巻マニアが竜巻に巻き込まれるところから始まります。彼は竜巻の撮影に夢中ですが,彼の息子もオヤジのまねをしてカメラを構えて竜巻を撮影しようと外に出ます。親子揃って竜巻馬鹿にしか見えません。何しろ,竜巻を撮影しながらこのオヤジ,笑ってますから。そして竜巻オヤジが息子にお守りのペンダントを渡したところで竜巻に吸い込まれてどっかに飛んじゃいます。

 で,それから30年後,息子は成長してカメラマンになるんだけど,「ルーマニアに行ってロマ(ジプシー)の世界大会を取材しろ」と命令が出て,ルーマニアに旅立ちます。そこでいろいろあって,彼が身につけているお守りのペンダントが,大天使ガブリエルがロマの守護神かなんかに与えたペンダントだということが判明。

 一方,ロマ族を劣等民族と見なす悪魔崇拝教団がいて,悪魔の化身である竜巻を呼び起こし,ロマ世界大会にぶつけて全滅を図ろうとしていることがわかるわけね。


 ここですぐに世界ロマ大会の画面にすると間が持たないもんだから,普通はカメラマンとアナウンサーのラブシーンを入れるわけですが,この映画ではそれがないため,パーティーシーンとか,回想シーンとか,精神病院に収容されている父親の親友に会いに行くとか,図書館で古文書を調べるとか,捜査に無駄足を踏むとか,とにかく無駄なシーンをつないで時間を潰します。

 で,その悪魔教団のアジトを見つけるんだけど,簡単に捕まったり,簡単に逃げ出したり,格闘したり,カーチェイスをしたり,世界ロマ大会会場で竜巻にあったり,皆を地下室に誘導して命を救ったり,悪魔の竜巻を呼び出した張本人と殴り合ったり,最後はお守りペンダントの力で竜巻を消して,めでたし,めでたし。


 では,本格的にけなします。

 まず,ロマの世界大会という割には,集まっている人間はせいぜい50人程度という小規模な大会です。これで「ロマ族全滅」はちょっと無理だと思います。それと竜巻を起こして一つの民族を滅ぼすという計画,そもそも効率が悪すぎます。もうちょっと,考えた方がいいですね。

 映画の最初の竜巻(竜巻オヤジが死んじゃうやつ)ですが,お守りペンダントを持っていた少年ジョシュアが助かった点と,竜巻の様子からすると,どうも例の悪魔教団が発生させたものと思われます。でないと後の竜巻と整合性がありません。となると,この竜巻はなんのために発生させたものなんでしょうか。竜巻オヤジがロマなんでしょうか? それとも,この悪魔教団の本店がルーマニアで,アメリカに支店があるんでしょうか。

 それと,せっかくロマを登場させているのに,政治的にも文化的にもどうでもいいような扱いです。わざわざロマを絡ませているのに,必然性が感じられません。

 そもそも父親があの悪魔払いのお守りペンダントを持っていたのはなぜ? 彼ってロマ族の何なのさ。

 そうそう,このカメラマン,やたら滅多強いです。格闘技のプロです。両腕を固められていても前の敵を足技で倒し,ついでの両脇の男たちを一撃で倒します。なんでこんなに強いんでしょうか? カメラマンというのは世を忍ぶ仮の姿かもしれません。


 こういう悪魔崇拝オカルト系映画を見ているといつも思うんだけど,私のような敬虔な仏教徒(・・・一部に虚偽記載があります)にとっては怖くも何ともないというか,むしろお笑いなんだよね。お祈りしたり,聖書をかざせば退散するような悪魔なんて,全然怖くないじゃん。  聖書といったって,民話や言い伝え,お伽噺が書いてある本です。日本で言えば古事記と同じですよ。だから,その聖書とかお祈りで退散する悪魔というのは,古事記をかざすと消える怨霊と本質的に同じですな。

 それと,何かわからないことがあるたびに,図書館で古文書を探したり,言い伝えを調べたり,黙示録の一節を引用するのっておかしいよね。こういう映画を本気で作っているとしたら,馬鹿じゃないかと思うよ。

 そうか,こういう連中が「エビデンスがあるか」と言い始めたんだな。そんなに黙示録に未来のことが書かれているんだったら,新聞なんて要らないってことじゃないの? 「今日起こる出来事の予定一覧」だけで十分じゃん。


 結局,こういう悪魔映画ってのは,聖書の記載を頭から信じているおめでたい連中向けなんでしょう。

(2006/05/05)

 

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