《キラー・シャーク 殺人鮫》(2004年,アメリカ)


 「キラー・シャーク」というタイトルを見ると,そのまんま「ジョーズ」のような巨大人喰いザメ・パニック映画を想像するはずです。ところがですね,原題を見ると "Shark Man" です。なんか変でしょう?

 Shark Manとなると,人が満月の夜にサメに変身するとか,ショッカーがサメ人間を作ったとか,そんな感じですよね。要するに「キラー・シャーク」というとサメそのもの,一方の "Sahrk Man" といえば人間がメインでサメの要素が加わった怪物という感じになります。

 ちなみに,この映画を作ったのは "NU Image" で,この手のB級ホラー映画ばかり作っています。原題が "〜Man" だと,十中八九,この映画会社が作ったものです。


 というわけでこの映画では,幹細胞の技術を使って人間にシュモクザメの遺伝子を組み込んで作られた怪物が登場します。怪物と言ってもサイズは人間と同じです。つまり,人間の胴体に寸詰まりにしたサメの頭を付け,サメの背鰭と尾鰭を付けた形をしています。着ぐるみだということがバレバレです。初期の仮面ライダーでショッカーが繰り出してくる怪人より出来が悪く,おまけに水中で人を襲うシーンのCGも安っぽいです。

 太平洋だったか大西洋だったかの孤島が舞台で,島全体でロケしているようですし,ヘリコプターでの追跡シーンもあるし,爆破シーンもあり,結構それなりにお金はかけているようなんですが,肝心の "Shark Man" に金をかけてないもんだから,失笑ホラー映画になっちゃいました。


 このサメ人間を作っちゃったのは科学者で,末期の腎臓癌の息子の命を救おうと,専門の遺伝子工学,細胞工学の知識をフル動員して,シュモクザメの遺伝子を息子の幹細胞に組み込んだらしいです。何でも「サメに癌は発生しない」というのがその理由とのことです。シュモクザメを選んだのも,サメの中で最も進化しているからなんだってさ。

 シュモクザメといえば頭のてっぺんがT字型をしていて,その先端に目玉がついているサメで,Hammer Head Sharkと呼ばれています。もちろん,極めてどう猛です。で,Shark Manですが,目玉が左右に飛び出していてはさすがにお笑いだということに気がついたらしく,「寸詰まりのサメの頭部」の両脇に眼がへばりついて,両眼視の能力は高そうです。

 で,サメの生命力を獲得し,癌を克服したのはいいけれど,体が変身して「サメ付きの人間」になったわけです。おまけに,脳味噌もサメ並になり,食欲だけで生きている模様です。しかも「サメ人間」なんで,水の中でも陸上でも生きられます。こういう息子の様子を眺めて,「新しい人類の誕生だ」とのたまうマッドサイエンティストの父親,かなり痛いです。


 で,この幹細胞の技術を買い取るために,バイオ系の会社社長やら研究者やら6人ほどがこの孤島を訪れるんだけど,なんだかんだでサメ人間君に襲われるわけです。サメ人間に変身する前に,彼と婚約していた女性科学者がヒロインですが,ぽっちゃり唇とか眼の感じが井上和香にちょっと感じが似ていて色っぽいです。もちろんグラマーで水着姿のサービスシーンもあります。この映画で見る価値があったのはこのお姉さんだけでした。


 で,実験施設内でサメ人間に襲われた一行が命からがら逃げ出し,サバイバルになりますが,この科学者ご一行様が強いのなんのって。特に,ヒロインの現在の恋人の「IT関係の主任研究員」の強さは並大抵ではありません。デブのくせに銃を撃てば百発百中,乱闘になっても腕っ節は強いし,サバイバル技術にも長けています。

 同様に,会社社長やヒロインの射撃の腕も凄いです。相手を冷静に撃ち殺していきますが,敵の弾は一発も当たりません。アメリカのバイオ関係の研究者というのは,重火器が自在に扱え,射撃の腕は特殊工作部隊顔負けなんですね。さすがはアメリカです。

 おまけに,敵側の攻撃が実に中途半端です。ヘリからミサイルみたいなのを打ってきてヒロインたちのそばの車が炎上するシーンがあります。普通ならここでめった打ちにして殺せばいいのに,一発撃っただけでその後は攻撃を仕掛けてきません。だからまんまと逃げられます。どうやら,中途半端な人道主義者と思われます。


 ま,どっちみち大した映画じゃないんでストーリーの不合理さなんてどうでもいいですが,せめてサメ人間の着ぐるみくらいはもうちょっときちんと作って,それから映画撮影に取りかかりましょうね。

(2006/05/04)

 

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