《ミートマーケット ゾンビ撃滅作戦》(2001年,カナダ)


 B級映画マニアの間ではとても有名な映画です。といっても,出てくるゾンビが怖いとか,血みどろシーンがたまらなく凄いとか,SFXが見所満載とか,そっちの方面の評価ではありません。マイナスにマイナスをかけるとプラスになるよね,といった類の評判なんですね。あまりにひどいから,マニアなら後学のために一度は見た方がいいよ,面白くないけど・・・という映画です。

 これは要するに,「どうせ予算がないもんね。だから凝った映画なんて作れないもんね。好き勝手に作っちゃったから,見たあとで,なんてひでぇ映画,なんて文句を言うなよ。史上最悪のゾンビ映画を狙って作ったんだから,そこんとこはひとつ,夜・露・死・苦!」と開き直っている映画です。その開き直りが負のパワーをまき散らしているため,無茶苦茶でつまんなくて退屈なんだけど,無下に切り捨てるのも何となくためらっちゃうな,という絶妙のスタンスを得ています。

 というわけで,正統派映画,怖いゾンビ映画,しっかり作られたホラー映画が好きな人にはこの映画を薦めません。「しょうもない映画を見ちゃったよ」と笑い飛ばせる心の広い人だけご覧下さい。


 まず,画面がしょぼいです。家庭用ビデオで撮影した感じです。学園祭かなんかで上映する仲間受け狙いの映画みたいな感じの画像ですね。何しろ冒頭,ゾンビの群れに追いかけられてデブねーちゃんがドタドタと逃げるシーンから始まりますが,背景をよく見ると路線バスが走っていてバス停に止まるところが映っていたりします。ちょっと可哀想になります。

 その後にも,街の中をゾンビ一人が歩いているシーンがありますが,その周りは普通の通勤のサラリーマンで,なぜか誰一人としてゾンビに気がつきません。というか,相手にしていません。この映画の低予算ぶりから考えて,まわりの通勤客がエキストラとは考えられませんので,皆さん,職場に向かうのに忙しくてゾンビに気がつかなかったようです。哀しすぎます。


 そういえば,シーンが数分でブツブツ切れ,数秒の真っ暗な画像があって次のシーンに替わる,という作り方なんで,そのブツ切れがたまらなくうざったいです。「数秒真っ暗シーン」をスキップすれば,引き締まった画像になりそうです。

 そういう安っぽい画面に合わせたように,日本語吹き替えが異様に下手というか,素人の中でもとりわけ下手な奴を選んだと言うか,ほとんど台本棒読みです。もしかしたら,日本人ではなく,日本語を学び始めてまだ半年ですが頑張ります,という外国人の方かもしれません。それくらいイントネーションが変です。吹き替えにも金をかけてません。このあたり,徹底してます。


 かと思うと,いきなりインタビューシーンになり,「ホームレスにはうんざり。ホームレス受け入れセンターを作るから,ホームレスやガキやチンピラ,娼婦まで集まってくるんだ。センターは犯罪者生産工場だ。その点,病気持ち(ゾンビのことらしい)は社会のクズどもを一掃してくれるから,社会浄化に役立っているんだ」と答える青年が映されちゃう。こいつもすぐにゾンビに喰われちゃうんだけど,そこまで言っちゃうか?

 あるいは机に突っ伏した死体を前にした謎の会議シーン。「これは満場一致で可決だな。次は新アリーナの建設の問題だが・・・」と議長が喋り続けるんだけど,ここにもゾンビ登場。議長は何事もないかのようにゾンビを撃ち殺して,「それでは議論を進めよう。アリーナの建設場所だが・・・」と続けます。なんだこりゃ・・・面白いけど・・・。

 そして,何の脈絡もないお色気シーンが多いです。たとえば,ラジオで「至急逃げて下さい」という放送を聞きながら,のんきにシャワーを浴びる若い女性。オッパイ見せまくりのサービスシーンと思われます。映画が詰まらないからこういうところでサービスしているようです。


 ゾンビ狩りをする男女2人を助けに入るお姉さん3人がなんと吸血鬼です。ゾンビの血がまずいから人間を助けるのよ,という理由がナイスです。このお姉さん方,吸血鬼なんで日の光に弱いですが,その割には昼間に外に出ています。しかも肌露出しまくり,胸の谷間が見えまくり,おまけにノースリーブです。日光に弱いなら肌の露出を避けましょうね。

 しかも吸血鬼だけでは非力だと考えたようで,おかまのプロレスラーまでゾンビ退治に参加し,おねえ言葉で喋りながらゾンビにヘッドロックをかけたり,エルボー・スマッシュを決めたりします。エルボーを叩き込まれたゾンビの頭がグシャっと潰れるシーンが素敵です。ちなみにこのおかまのレスラー君,この監督が前に撮った映画にも登場しているらしいですが,よくわかりません。
 プロレスラーにしろ吸血鬼にしろ,登場する必然性はありませんが,気にしないようにしましょう。


 ダメ映画を見るのが趣味な人以外は見ちゃダメ,という映画ですが,見たと言うだけで話のネタになること,間違いなし!

(2006/04/06)

 

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