《クイーン・スパイダー》(2003年 アメリカ)


 私,こんな宣伝文に騙されました。

ビルの地下から放出される不審な電波を調査した電気技師達が、別な世界へワープしてしまう。その世界を支配するのは地獄からきた巨大な蜘蛛の悪魔だった!

 こういうベタな宣伝文に騙される方が悪いんだろうけどさ・・・。いろんなところが不自然で,安っぽい映画です。第一「巨大な蜘蛛」が出てきません。現実の蜘蛛に比べれば大きいことは大きいですが,人間と同じくらいです。おまけに登場するシーンが二つくらいで,映される時間も短いです。

 さらに,「地獄からきた巨大な蜘蛛の悪魔」という割には弱いです。あんなんで退治できるならもっと早く倒せよ,とツッコミを入れたくなります。なんでこいつに世界を乗っ取られたのか,訳が判りません。


 で,どういう映画かというと,既に廃ビルになって久しい建物から不審な電波だか電気だかが出ている,という通報を受けて,電気会社の電気技師4人がそのビルに入るシーンから始まります。そこで地下の奥で鍵のかかっている部屋を発見。その鍵を壊して中にはいると,放射線管理区域を示す例のマークがついている装置を発見。

 普通ならこのマークを見たらヤバイと思うわけで,触らぬ神に祟りなし,とするのが常識人ですが,さすがは常識知らずのアメリカ人,「訳が判らない機械だから触ってみようぜ」とスイッチを入れちゃう。馬鹿ですね,こいつら。すると,床にある装置から光の柱が出現。普通ならそれを見たらヤバイと思うわけなんだけど,馬鹿なアメリカ兄ちゃんたち,この柱に近寄って2人が吸い込まれ,2人が残されちゃう。

 吸い込まれちゃった二人は見たことがあるんだけど,人影が全くない街に出ちゃう。で,残された二人がその部屋にあるノートを見て,この装置全体が異次元への入り口だということを知っちゃうのだよ。作られたのは1960年頃だったかな? 天才科学者が作っちゃったらしい。


 というわけで,吸い込まれた二人はパラレルワールドのシカゴに移動しちゃったんですね。そしてこの装置を作った博士が同じパラレルワールドにいて,何とか元の世界に戻ろうと研究を続けているうちに別の世界の入り口を開けちゃって,そこから「クイーン・スパイダー」なる蜘蛛の化け物が入り込んだのです。何しろこのクイーンときたら,人間の女はエサにするし,男は食い殺しちゃうか兵士にしちゃう。なもんで,どんどんクイーンの兵士ばかりになってしまい,世界は滅亡の危機に瀕してしまったのですよ。クイーンの方も,もうエサもなくなったきたもんだから,もっとエサ(=人間)のいる世界にワープをたくらんでいるのです。そういう世界に二人の電気技師が紛れこんでしまったのです。

 さあ,この電気技師たちは元の世界に戻れるでしょうか,世界は破滅から救われるのか・・・というモンスター映画です。


 では恒例のツッコミ大会といきましょう。

 まず,クイーンに操られる兵士たちは蜘蛛人間になってもよさそうなのに,牙と大きな爪が生えた程度と,大した変身をしていません。しかも,槍とかナイフとかで簡単に殺されます。弱いです。そんな原始的な武器さえあれば倒せるのに,なぜこのパラレルワールドの住人たちが絶滅寸前になったのか,理由が判りません。背景のシカゴの街を見る限り,巨大なビルを造るくらいの技術を持っているのは明らかですから,もっとましな武器を作れば蜘蛛兵士なんて簡単に退治できたはずです。

 さらに,たまたまパラレルワールドに巻き込まれた電気技師が戦闘に参加するのも無茶といえば無茶。何より,主人公とも言うべき電気技師たちのリーダーは「金八先生」みたいな髪型で強そうに見えません。こういう俳優は,「優男の遊び人で,真夜中のボートで女の子といちゃついて映画開始3分くらいでサメに食われちゃう」役がお似合いなんだけどなぁ。少なくともファイタータイプではありません。


 何より情けないのが,パラレルワールドの天才科学者が,異次元扉(どこでもドアだな)を開こうと苦戦するシーン。苦闘している割には,していることといったら左右の手に持った電線の端をつけたり離したりするだけ。「ううむ,接触に問題が」というんだけど,そんな暇があったら,さっさと電線同士を結ぶとかハンダ付けしなさい。こいつは本当に天才科学者なんでしょうか? 左右の手に持った電線を結線することも思いつかない奴が「どこでもドア」作れるわけないと思うんだけど・・・。

 そういえば,舞台が一つのビル(二人の電気技師が最初に紛れ込んだビルですね)だけというのも減点対象です。最初から最後まで同じビルに出たり入ったりするシーンばかりのため,「世界が破滅の危機」が嘘っぽくなるし,映画そのものが安っぽくなるのです。予算をケチるとこういうことになります。


 と,ここまで書いて気がついたのですが,「クイーン」は一匹だけこの世界に侵入しただけでオス蜘蛛はいません。当然,このクイーンは子孫を作ることはできません。となれば,いずれクイーンの寿命が尽きるはずですから,その時まで待って,クイーンが死んだ時点で蜘蛛兵士を倒せば問題解決したんじゃないでしょうか。

 しかも,クイーンは所詮蜘蛛ですから,クイーンが最初にシカゴに侵入したとしても,海を渡ることは不可能です。それなら「世界の滅亡」になるわけはありません。もしかしたら,パラレルワールドでは,全ての大陸がパンゲア状態だったのでしょうか?


 要するにこの映画の弱点は全て,制作費不足が原因と思われます。制作費が潤沢にあればクイーンももっと大きく作れたでしょうし,ロケも一つのビルでなかったでしょうし,蜘蛛兵士に襲われて壊滅した世界の各都市の様子も撮影できたでしょう。そうすれば,少しはましな映画になったはずです。逆に言えば,そういう予算がなかったからこそ,蜘蛛兵士と生き残った人間たちの肉弾戦シーンばかり長々と続けたのでしょう。

 そういえば,街に生き残って蜘蛛兵士と対決している人たち,食料や水をどうやって調達していたんでしょうか。街は壊滅状態ですから,水道局も機能していないでしょうし,食料を作る人も運ぶ人もいません。博士が動かしている機械の電気もどこから来ていたのでしょうか。トイレもどうしていたんでしょうか。何を食べて生き延びていたんでしょうか。

(2006/03/29)

 

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