《Shark Attack 3: Megalodon》★★★


 「ジョーズ」を代表とするサメ・パニック映画というジャンルがある(・・・と断言しちゃっていいのだろうか)。ジョーズ・シリーズの他にも幾つか見たことがあるが,これはその中の一つである。"Shark Attack 3" とあるから1と2があったのだろうが,それについてはよく知らない。

 この映画の主人公(?)はメガロドン,つまり古代のサメである。新生代第三期中新世(2600万年〜600万年前)に生きていた巨大なサメで,体長は15メートルと言うから,現在のホオジロザメの2倍以上,マッコウクジラと同じ大きさである。半端でない大きさだ。この時期は海は温暖で,鯨が多種類に分化した時期であり,同時に鯨の数も増えた時代だ。メガロドンはその鯨を餌にしていたらしい(鯨を主食にするサメ,ってのがすごいな)。しかしその後,大陸棚の海水温が低下する。温血動物である鯨は寒冷な海に適応できたが,メガロドン(基本的に変温動物)はそれに適応できず,絶滅したと考えられている。


 とは言っても,このメガロドンが海溝などの深海底で生きているのではないか,という可能性は以前から指摘されていた。これまで何度か,最大級のホオジロザメの歯より大きなサメの歯が見つかっているからだ。そのたびに「メガロドンの生き残りか?」と話題になってきた。

 理由はこうである。海水は酸素を含んでいるが,深くなるにつれて酸素濃度が次第に低くなり,ある深さのところから極めて酸素に乏しい水域(水帯)が広がっているらしい。しかしその下には,酸素を含み,温度も比較的暖かな(といってももちろん比較の問題である)が海水が深海底にかけて存在し,この二つの水域は混ざり合わないらしいのだ(このあたりは,昔読んだ本の知識なんで,もしかしたら間違っているかもしれませんが)。ここにメガロドンが生きているのでは,という説である。実際,シーラカンスはこの水域で数億年,生き延びてきた。

 実は昔,メガロドンがこの深海底に生きていて,それが何かの理由で無酸素水域を突破し,暖かい海で暴れる,という小説を読んだことがある(1980年代の小説だったと思う)。この映画とは設定が異なるが,関連性はあるのかな?


 という無駄話はさておき,この映画だ。ジョーズ級に面白いと言っておこう。海底ケーブル修復作業中の作業員がサメに襲われるという発端があり,それから数ヶ月後,大陸棚に敷設したケーブルも何かに噛み切られ,そこから大きなサメの歯が見つかり,事件が幕を開ける,というのはパニック映画の定番だ。もちろんそれは同時に,海底ケーブルから電磁波が漏れているという伏線であり(サメが電磁波に敏感に反応するのは有名な話),なぜメガロドンが深海底から浅瀬に移動したかと言う理由付け(=海底ケーブル沿いにサメが移動した)にもなっている。

 そこで次第にメガロドンの正体が明らかになるのだが,最初に登場する奴はせいぜい5メートルくらいである(これだって十分に大きいが)。大したことないな,なんて思って油断していると,実はこいつは子供ザメなんだ。すぐに,母親ザメが登場する。

 この母親,半端じゃなくでかい・・・なんてもんじゃない。体長20メートル,口の横径3メートル以上,歯が大人の手掌よりでかいときてる。だから,小型ボートは丸ごと飲み込んじゃうし,5人が乗った救命ゴムボートも一気飲みしちゃう。まさに手当たり次第(・・・サメには手がないから「口当たり次第」か・・・)である。そんなに変なものを食って,食あたりしないか,便秘にならないか,心配になるほどだ。

 映画の前半,子供ザメが活躍(?)する場面はほとんど水中ということもあって画面が暗く,なんだかよく判らない(=何となく迫力に欠ける)画像が続くため,「これで海の怪物か?」とバカにすると思うが,後半になるとお母さんザメが水面に上がってきてパクパク,ガブガブと何でも飲み込んじゃうシーンは迫力満点だ。


 また,電磁波のシールドがしっかりしていない安物ケーブルを敷設して安くあげようと考えている通信会社の社長とか,客の安全のためにビーチを閉鎖すべき,という提言を拒否するホテル支配人とか,パニック映画に必ず登場するタイプの「儲け最優先」の敵役もいるし,まさにパニック映画の王道である。

 そして,最後にメガロドンを倒す方法。なるほど,こういう手があったか。とはいっても,ちょっとうまくいきすぎだけどね。

(2006/01/20)

 

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