84歳男。
 2014年1月からASO(閉塞性動脈硬化症)で左第1,2趾が壊死してきたが特に病院は受診せず,訪問看護師に処置してもらっていた。6月に近くの〇〇病院整形外科を受診。直ちに膝下での下肢切断しないと命が危ない,と説明されたが,高齢で手術も心配だし,何よりこの足で普通に歩いて生活していることから,足を切断されたら寝たきりになってしまうと家族も考え,訪問看護師に相談。切断しないで治療している医者をネットで調べ,2014年6月30日に当科を受診。ちなみに,訪問看護師は「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)で創部を被覆していた。
 左第1趾と第2趾はMTP関節部で壊死し,融解していたため,外来で無麻酔で壊死組織のみ切除。出血はなかった。同行した家族に同様症例の経過写真を見せて保存的治療で傷が治ることを説明。通院が難しいことから褥瘡パッド(穴あきポリ袋+紙おむつ)の治療法を指導。何か異常があったら受診してもらうこととした。

 その後,認知証がひどくなったため,数カ月後に施設に入所。往診の皮膚科医が最初3ヶ月はゲーベンクリーム®,その後はカデックス軟膏®が処方されたが,それから傷が治らなくなり,骨が露出した状態となった。
 2015年3月25日に△△病院に入院し,前医の治療を継続したが,一度診てほしいとのことで6月8日に当科を受診。
 創面からカラカラに乾燥した骨が露出していたため,露出している骨を無麻酔でリウエル骨鉗子でかじり取るように切除。止血を兼ねてヘモスタパッドで創部を被覆。同行した家族に「褥瘡パッドの作り方と使い方」の説明書を渡し,紹介状の返事に処置の方法とともに「絶対にカデックスもゲーベンも使わないこと」と書き添えた。

2014年6月30日   切除後

2015年6月8日(343日後) 骨露出 骨切除後

 9月8日,「潰瘍が広がり骨が見えている。骨髄炎ではないか」という紹介状を持参して受診。潰瘍が拡大したというより,皮膚軟部組織が萎縮してきたためにその下の骨が露出し,腐骨化したように見えた。露出している骨はピンセットでつまむと容易に除去できた。

9月8日(435日後) 腐骨が露出


【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/〇〇/index.htm】

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