38歳男。
以前,左第1趾の爪を剥がしたことがあり,その後から爪が厚く変形しているが,特に治療は受けていない。10月7日夜,会社より帰宅した時に,左第1趾の爪の根元に水疱ができていることに気がついた。翌日,当科を受診。
当科では水疱膜を破って爪根部の爪甲を観察したが,爪甲は全長にわたって浮いていて,創傷から完全に遊離していた。麻酔をすることなしに,ほぼ無痛で爪甲を抜去できた。抜爪後,爪床からの出血はなかったが,帰宅後に出血することもあるため,ヘモスタパッドで爪床を被覆。翌日からはプラスモイストで被覆。1週間で爪床は上皮化した。
2014年10月8日 | 横から見ると | 爪根部は浮いていて | 無麻酔で抜爪 | 出血もなし |
2015年3月24日 |
このような「分厚くて白濁している爪」は高齢者や外傷後によく見られる。皮膚科を受診すればほぼ確実に「爪白癬ですね」と診断され,抗真菌薬を半年くらい服用することになるはずだ(そういう症例をいやというほど見ていますから)。
しかし,これは爪白癬なのだろうか? 爪床の循環不全や爪床の瘢痕化による爪甲の変形であり,白癬菌による変形ではないからだ。だから,こういう爪に爪白癬の薬を飲ませ続けても,変形は治らない。
もちろん,この爪を調べれば白癬菌は検出されるはずだ。白癬菌に最適の状態になっているからじゃないかと思う。つまり,白癬菌は「爪変形の原因」ではなく,「爪甲の循環不全の結果」ではないかと思う。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/1146/index.htm】