41歳女。
 7月1日夜,自宅でヤカンをひっくり返して左大腿に熱傷受傷。病院に電話をかけたが専門医がいないので朝まで冷やし続けるように言われ,10時間ほど,氷で冷やし続けた。翌日,薬局で軟膏を購入しガーゼで治療。2日後,会社の薬剤師に相談し(傷は見せていない),キズパワーパッドを貼るように言われ,3日間貼り続けた。最初2日は痛みもなく楽だったが,3日目に痛みがあり,心配になってネットで検索し,当科を受診。
 当科ではプラスモイストで治療。

7月7日 7月11日


 この症例のように「何日もハイドロコロイドを貼り続け,最初は痛みがなかったが,途中から痛みが出る」ことはまれならずある。
 痛みの原因は「ハイドロコロイド下の内圧の高まり」であり,内圧上昇の原因は「融解してゲル化したハイドロコロイドと滲出液」である。これらが溜まり過ぎると創面を圧迫するようだ。
 これを避けるためには,最低でも1日1度は貼り替えるしかない。キズパワーパッドの取扱説明書には「5日間貼り続けてもいい」と書いてあるが,これは現実を知らない机上の空論である。

 ちなみに,私はキズパワーパッドが商品化される前からジョンソン・アンド・ジョンソン社からアドバイスの要請を受けていたが,上記の「5日間貼り続けてよい」の記述には最後まで反対した。必ずトラブルが起きるから,この記述はすべきでないとアドバイスしたが,某大学形成外科の名誉教授に押し切られてしまった。著明な先生だが,現実に外傷治療をしたことがないため,ハイドロコロイドを貼り続けてどのようなトラブルが起きるか,ご存知なかったようだ。

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/945/index.htm】

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