65歳女性。
2月15日,突然右母指が腫れて痛くなったため,近くの整形外科クリニックを受診し,翌日,当院整形外科を紹介されて受診。整形外科より皮膚科紹介となり,切開をして大量の膿が出た。皮膚欠損があるため,当科紹介となった。
当科初診時,爪甲は欠損し,末節骨と軟部組織が離れて浮いている状態であったが,水道で洗浄し,ボックス状にしたプラスモイスト(R)で創面を被覆した。
2ヶ月ほどで,変形を残さず治癒した。
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2月18日 | 軟部組織は末節骨から 剥がれている |
2月21日 | 2月25日 | 2月25日 |
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3月1日 | 3月1日 | 3月6日 | 3月6日 |
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3月14日 | 3月14日 | 3月18日 | 3月18日 |
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4月1日 | 4月1日 | 5月2日 | 5月2日 |
初診時,末節骨は露出していたが,全経過を通じて感染を起こすこともなく治癒している。要するに,骨が露出していても全く問題はない。
それなのに,一部(?)の整形外科の先生は,「骨が露出している」⇒「骨髄炎だ!」と大騒ぎする。骨膜や骨皮質が露出しているだけなのに,なぜ骨髄炎になると大騒ぎするのだろうか。もしかして,骨髄と骨皮質の区別もついていないのだろうか?
こんなことを書くと,決まって「手の指の骨と長管骨は別だ」とか,「お前は本当の骨髄炎の恐ろしさを知らないから呑気なことを言っていられるのだ」と文句を言ってくる整形外科医がいるが,この先生がかつて経験した「骨髄炎」は本当に骨髄炎だったのだろうか?
私は整形外科の先生から「慢性骨髄炎」の患者を多数称して頂いているが,その大多数は骨髄炎ではなく,単なる骨の露出であった。骨髄が露出している例もあったが,骨髄炎は起きていなかったし,局所にも全身的にも炎症症状は認められなかった。
そして,一番多かったのが「骨髄炎が起きては大変だから,強力な抗菌薬が必要」とゲーベンクリーム(R)を延々と塗り,それで皮膚・軟部組織が破壊されて骨露出がさらに悪化した症例であった。