41歳男。
2012年9月下旬,左下腿を虫に刺され,掻き壊しているうちに治らなくなり,〇〇クリニックを受診。ゲンタシンクリームとセフゾンを処方されたが治らず,次第に傷が広がってきた。創部の痛みのため,夜も眠れなくなった。
ネットで検索し,当科を受診。
10月17日,当科初診。左下腿外側に直径3センチの深い潰瘍を認めた。創部はプラスモイストで被覆し,ゲンタシンクリームの使用を止めるように指導。プラスモイスト貼付直後から痛みがなくなった。
10月29日,発赤と圧痛があり抗生剤処方。
11月5日,局所麻酔下に肉芽表面を削ってみたが,潰瘍底の循環は良好。潰瘍が拡大したため,壊疽性筋膜炎を疑いプレドニンとオーグメンチン投与。11月13日からは肉芽収縮を期待してリンデロンVG軟膏併用。治療に長期間を要することが予想されたため,創部の被覆は「穴あきポリ袋+紙おむつ」(勝手に鳥谷部先生のサイトにリンク)に変更。
12月4日,痛みは全くなくなったためプレドニン,オーグメンチンは終了。
潰瘍が難治である原因は不明だったが,体重80キロの肥満体型だったため,減量も効果があるのではないかと考え,12月11日に糖質制限について説明し,この日から開始。
2013年1月22日には体重75キロ,3月11日には体重70キロにまで減量。仕事が忙しく,なかなか通院ができないとのことで,異常があったらすぐに受診するように説明。
2014年10月8日,「左下腿は上皮化したが,1ヶ月前に右足背をぶつけて傷ができ,自分で湿潤治療しているが治らない」とのことで受診(体型は見違えるように変身していた)。左下腿は半年くらいまえに上皮化したらしい。下肢静脈系の異常について心臓血管外科に紹介したが,異常は発見されなかった。
2012年10月17日 | 10月29日 | 11月13日 | 12月18日 |
2013年1月22日 | 2013年3月11日 | 2014年10月8日 |
湿潤治療をしているのに潰瘍が拡大する場合,何か原疾患があると疑うべきだ。この症例でも早期に下肢静脈系の検査をしてもらえばよかったと反省している。
この症例では何が奏功して潰瘍が治癒したのか定かではないが,糖質制限による体重減少がうまく作用してくれたのだろうか。
【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/927/index.htm】