36歳女。
 1歳時に背部の神経芽細胞腫に対し〇〇大学附属病院で放射線治療+化学療法を受けた。
 6〜7年前に放射線照射部位に硬い組織ができ,近医を受診したが経過観察でよいと言われた。2015年8月,同部位が自壊して膿が出たため,△△大学附属病院整形外科を受診。消毒のために通院。11月14日,同科に入院して,背部の腫瘤(瘢痕?)の摘出が行われたが,創が縫合閉鎖できなかったため,しばらくVAC(陰圧吸引)療法が行われた。12月24日に同院形成外科で皮弁形成術(V-Y Advancementと思われる)。傷が一部開いていて,イソジンゲル®を詰め込む治療が行われた。患者の希望により12月30日に退院。
 その後も通院しているが,形成外科医からは「ポケットは感染する危険性があり,感染したら皮弁が全部ダメになってしまうだろう。再手術かVAC療法をしないといけないが,どちらも成功するかどうかはわからないが,とりあえずどちらかを選ぶように」と説明された。
 成功するかどうかわからない治療をどちらか選べと言われてもどちらも選びたくないため,ネットで「術後の傷が治らない」と検索し,当サイトを発見。
 2016年1月15日,当科受診。V-Y Advancement Flap先端に2ヶ所の瘻孔があり内部はポケット状になっていた。いずれも深さは5センチほど。患者さんと母親に,なぜ皮弁のこの部分が開いたのかについて説明し,再手術をしてもほぼ100%失敗するであろう理由も説明。ドレナージが効いていれば感染することはないし,たとえ局所感染したとしても皮弁全体がダメになるということは絶対に有り得ないと説明。
 ナイロン糸ドレナージの方法を指導し,週に一度くらいの頻度で受診してもらうこととした。
 その後,ポケットは徐々に狭くなり,5月ころ,1ヶ所の瘻孔は閉じた。しかし,もう1箇所が深さ2センチ弱の状態でストップした。7月28日に局所麻酔下に瘻孔を切開し,ヘモスタパッドで止血し,開放創とした。翌日からはズイコウパッドで被覆。9月1日には完全に上皮化した。
 全経過を通じて創感染は一度も起きていない。

 1月15日

7月28日:195日後 8月4日:203日後

9月1日:230日後


 ナイロン糸ドレナージに固執せず,もうちょっと早い時期に切開すれば,もっと速く治っだろう症例です。ちょっと反省!

【アドレス:http://www.wound-treatment.jp/next/case/hikari/case/2055/index.htm】

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