《ツールボックス・マーダー》 (2003年,アメリカ)


 映画史上,最も怖い映画と言われているのが《悪魔のいけにえ》で,それを作ったのがトビー・フーパー監督。その彼が2003年に作った正統派ホラー映画がこれです。こっちも十分に怖くて痛いです。

 《いけにえ》の殺害手段はもっぱらチェーンソーだったと思いますが,今回はなんと,普通の大工道具です。電動ドリルとか釘打ち銃とか電動鋸とかハンマーとか釘抜きとか,そこらの大工道具箱に入っている物を駆使して(?)殺しまくります。普段見慣れている物だけに,余計に痛いです。


 どういう映画かというと,スティーブ(医者になったばかり)とネル(教師だったかな?)の若い夫婦がボロアパートに引っ越して来るところから始まります。築100年近いだけあって,いろんなところを改修しているんだけど,シャワーは出ないわ,壁は薄くて隣の会話やエッチの声が筒抜けだわと,初日から不満だらけ。修繕係のネッドは長髪で顔を隠していて暗くて,いかにも怪しげ。で,隣の部屋の女の子と話をするんだけど,「時々,いきなり住人がいなくなのよ。それと,夜にどこからか機械を動かす音がしたり,ハンマーで叩く音がしてうるさいのよ」なんて話を聞かされます。

 そしてある日,隣の部屋からものすごい悲鳴が聞こえてきて警察を呼ぶんだけど,どこにも被害者はいないし,血の跡もない訳よ。当然,警察は引き上げます。そのうち,住人の数人と新たに知り合いになるんだけど,彼らも姿を消しちゃう。

 旦那のスティーブに「このアパートは絶対におかしい」と電話連絡するんだけど,彼は新米救急医なんでERから離れられないわけね。

 で,ネルはこのアパートになぜか104号室,204号室・・・と 4 の付く部屋がないことに気が付き,図書館だったか何かに行って,このアパートは20世紀初頭にラスマンという俳優が作ったことを知り,ラスマンと仲間達が集まって黒魔術だったか悪魔崇拝の儀式をしていたことを知ります。そしてアパートの部屋の壁の向こう側に別の部屋があることを知り,その隠し部屋を探し当て,そこでなんと黒魔術に使われた大量の死体の山を見つけちゃうのだよ。道理で,住人が消えても死体が見つからないわけだな。


 まず,殺害方法は前述のようにさまざまな大工道具を駆使していて,犠牲者の数だけ殺し方が異なります。その点はよく(?)工夫していて凝っています。

 また,怖がらせ方のポイントも堂に入っていて,「出るぞ,出るぞ」と怖がらせておいてそこでは何も起こらず,よかったねと安心した瞬間に襲いかかってくる,というパターンが多いですが,その間の取り方がこれまた全部違っている感じで,見ている方も安心できません(・・・安心してみる映画じゃないってば)。ネルちゃんが隠し部屋に迷い込み(というか隠し部屋を見つけ出して入ったものの戻れなくなるんだけどね),そこで次々と見つける死体や人体パーツも手抜きなしで作っていて,それなりに怖いです。

 また,スティーブがなんとかラスマンを倒し,警察に保護され,もうこれでお終いかと思っていたらラスマンの姿が忽然と消え,安心したネルをまた襲ってくるし,それで警察が射殺して外に吹っ飛んでいったはずなのに,外を見ると死体だけなくなっていて,ようやく安心したと思っていたら・・・というしつこさもなかなかよろしいです。


 と言うわけで,いくら家賃が安くてもあまりに安い物件にはいわくがあるんだから,安易に借りてはいけないよ,という教訓をこの映画から得ることができる・・・かな?

(2006/12/08)

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