《Dr. チョッパー》(2004年,アメリカ)


 常識的に言えば「なんだぁ,この映画は。ムチャクチャじゃん。つまんねぇ,金返せ!」という映画なんですが,アルバトロス配給のクズ映画ばかり見ていると,「アルバトロスにしては悪くないじゃん。ストーリーの起承転結はまともな方だし,登場人物も多い方だし,これなら許せるね」という評価になります。私の審美眼,随分下がっちゃったなぁ。

 で,どういう映画かというと,天才形成外科医が不老不死の研究(?)をしていて,実験材料の臓器を得るために人を殺しまくる,というナイスなストーリーです。ま,この時点でどのくらいひどい映画かわかっちゃったような物ですが,ちょっとおつき合いのほどを。


 この映画の紹介をしているサイトでは,主人公の医者を「整形外科医」と表記していますが,これは「形成外科医」の間違いです。ついでに言うと,一般の人やマスコミが使う「美容整形」というのも間違いで,正しくは「美容形成」です。美容外科は形成外科の一分野であり,整形外科とは縁もゆかりもないからです。

 というところで,映画とは無関係ですが,形成外科と整形外科の違いをお勉強をしましょう。


 えーと,何の話を書いていたんだっけ? そうそう,思い出した,《Dr.チョッパー》だ。ちなみにチョッパーというのはバイクの型の名称らしいです。だから,この映画のタイトルは『チョッパー型のバイクに乗っているお医者さん』程度の意味らしいです(バイクのこと,よく知らないけど)

 冒頭からチョッパー先生(はっきり言ってジジイです),パワー全開です。ベッドに縛り付けた全裸のお兄ちゃんとお姉ちゃんを前にして,「よし,手を貰おう」とかいって,いきなり鉈みたいなやつで手首をぶった切っちゃうのです。麻酔なんてなしです。お兄ちゃん,痛がってます(そりゃ,あたり前だって)。全麻が発明される前の外科手術室って,多分こんな風景だったんでしょうね。そういう意味で貴重な映画かもしれません(・・・オイオイ)

 このチョッパー爺に付き添うのがお色気ナース二人組。パンツが見えそうなミニスカートと胸の谷間見せまくりです。ナース・コスプレと勘違いしています。このナース二人がベッドに縛り付けられている全裸お姉ちゃんを前にして「私,この目が欲しいわ」と麻酔もせずに目をえぐり取っちゃいます。でも,えぐり取るシーンは撮影されていないので,グロくはありません。ちなみにこのナース二人組は,これ以上は脱がないので変な期待はしないように!


 さてこの時点で,チョッパー先生の「不老不死の研究」の意味が分からなくなります。実験材料として手や目玉を切り取ったのか,自分の臓器を取り替えるための移植臓器として切り取ったのか,全然説明がありません。後で,別の犠牲者から心臓を取り出した時にナースが,「私たちがきちんと手術をしますから大丈夫です」なんて会話が出てくるので,雰囲気としては臓器移植じゃないかと思うのですが,とてもあのミニスカお馬鹿ナースじゃ無理だろうと思うんだよね。第一,そういう設備がないし・・・。となると,チョッパー先生,何の研究をしていたんでしょうか。

 おまけに途中で,ナース姉ちゃん達が切り取った手首とか臓物にかぶりついているシーンがあったりして,これじゃ単に食糧を補給しているのか,あるいはゾンビなのか訳が判りません。

 ま,こんなクズ映画に医学的ツッコミを入れる方が野暮ってもんだけどね。


 登場人物はこの手の映画としてはかなり多い方です。というより,意味なく多いです。主人公役のニック(母親を失ったばかりの20歳くらいの男)とその恋人のジェシカ。そして彼らの友達が3人(一組のカップルと相手なし男が一人)。ここらまでは順当なラインナップです。そして,なぜか別荘でレズっている女子学生二人組と,別の女子大生5人組。後者はサークルの入会儀式に「森で骸骨を探す」というゲームを企画しています。こいつら,すぐにブラ姿を披露してくれますが,それ以上は脱がないので変な期待はしないように。あとは,森林警備隊の隊長さんとその部下。これで主要な登場人物全部かな?

 なんと,この12人と他数名が90分足らずのうちに次々殺されるわけです。単純計算では5分に一人殺される計算になりますが,最後の方で長々と謎解きシーンがあるため,途中はかなり忙しく殺戮シーンが連続します。特に「骸骨探し女子学生5人組」はブラ姿を披露すると1分後には殺されると言う忙しさです。通常のスプラッターホラー映画を早送りで見ているような感じです。というわけで,この5人組は「胸の谷間」担当係だった模様です。

 それにしても,その地域一帯で過去20年間にわたり,行方不明者とかバラバラ死体が出ているのに,なぜ州警察が動かないの,と誰しも思うのですが,何しろアルバトロスですから・・・。

 そういえば,ジェシカが捕まって採血されるシーンがありましたが,注射器の向きが逆です。それじゃ,採血できないよ。以後,気を付けましょうね。おまけにジェシカちゃんを縛っている鎖が緩んでますよ。ジェシカちゃん,早く逃げろよ。鎖が緩んでいるんだから。


 そしてこの後,この映画で最大の驚愕シーンが続くのですよ。なんと○○と●●は親子だったのですよ。○○は◎◎が□□したあとに●●の秘密に気がつき,●●と連絡を取っていたんだって。となると,○○が20歳くらいで,父親の●●が87歳(映画中でははっきりと言っていた)ですから,●●の生殖能力に拍手を送りましょう。君はピカソの再来だ!

 となると,○○は●●の目的達成のために△△たちを▼▼したということになるんだけど,そうなると□□である◆◆をなぜわざわざ呼んだの,というのが説明つかなくなるし,物語としての整合性が全て破綻してしまいます。
 まっ,アルバトロスだからいいか,このくらいのストーリーの破綻なら。

(2006/11/27)

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