《パニック・フライト RED EYE》 (2005年,アメリカ)


 この映画,超お勧めです。最後までハラハラドキドキ,緊迫感が緩みません。なぜこの映画が話題にならないかが不思議になるくらいの上質のミステリー映画です。


 主人公は一流ホテルの女性マネージャー。彼女が父親の家に戻ろうと飛行機に乗るんだけど,ここで事件に巻き込まれて・・・という映画です。ですが,これ以上はストーリーは書きません。知らないで見た方がいいし,この映画に関してはネタバレは御法度と思うからです。この映画のこと,みんなに教えてあげたいんだけど,その内容について書けないのですごく辛いです。レンタルショップでこのDVDを見掛けたら,迷わず借りましょう。絶対に損はさせません。

 原題は "Red Eye" です。「夜間飛行」という意味だったでしょうか。邦題の《パニック・フライト》とは異なり,航空機パニックもの(飛行中に事故が起きて緊急着陸を余儀なくされるんだけど,そこにさらに事故が・・・ってな映画)ではありません。


 とにかく,ヒロインのこのマネージャー,リサがすごく格好いいです。もちろん美人なんだけど,知的で精神的にタフで,頭が良くて機転が効き,絶望的な密室状況にありながら,自分にできる最善の方法はないか,常に頭脳を働かせます。

 例えば冒頭,彼女が飛行場に向かう時に代理のマネージャーがうるさい客に苦情を言われ,リサに電話で助けを求めるんだけど,その時のリサの対応が素晴らしいのですよ。「興奮しているお客様に,興奮しないでというのは逆効果」とか,予約していた部屋が取れていなかった場合の対処法とか,見ていて惚れ惚れします。そして彼女の電話による指導で代理役のマネージャーの女の子もまた成長していくのがまたいいです。

 また,彼女と偶然,同じ飛行機に乗る合わせることになった男(チョイ・キモワル系?)との会話もまたお洒落です。こういう風にしてナンパすればいいのか,というお手本みたいな話題の持って行き方ですし,それに対するリサの対応もお見事です。

 そして,父親に迫る危機を必死で知らせようとするリサの行動力と決断の素早さ,状況判断の分析力もすごいです。もうここまで来ると出来過ぎなんですが,リサ役の女優さんの演技力の前ではそういうことはどうだってよくなります。


 その他にも多種多様な登場人物がいて,彼らは皆,端役なんだけど,それぞれに登場する意味があって,何気ない会話に意味があって,無駄な登場人物は一人もいないし,無意味な会話もありません。そういうところもいいです。

 それと,前半は飛行機の機内という密室状態での緊迫した心理劇が続き,そして後半では一転してリサの父親の自宅での襲撃・アクションシーンになるのもよく計算されています。前半の手も足も出ない状況から,リサが空港の中を走って逃げるシーンになった時の爆発的な開放感のコントラストがいいです。この時は犯人と共に空港警備員達もリサを追ってくるわけですが,彼らを出し抜くリサの機転も見事です。

 それにしても,これだけの話を80分ちょっとの映画にまとめた脚本も素晴らしいです。リサの過去,父親との関係,彼女のこれまでの仕事ぶりを全て完璧に説明しちゃいます。「あのシーンの会話,どういう意味だったの?」というところが一つもありません。


 というわけで,全面手放しに褒めちゃうのでありました。ジョディ・フォスターの《フライト・プラン》よりずっと面白いよ。

(2006/10/19)

 

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