《ホットゾーン》 (2001年,アメリカ)


 アルバトロスと思うとあまり腹は立ちませんが,一般的に言ったらB級ですね。アルバトロスによくあるハチャメチャな部分がなく,そこそこ真面目に作られているんだけど,ストーリーの展開があまりに大雑把すぎて,途中からは見るのが苦痛になってきます。

 内容は〔動物パニック〕+〔感染症パニック〕映画です。今回登場するのは,軍が生物兵器として遺伝子操作で作ったガラガラヘビ。攻撃性が高く,気性が荒いときます。それだけでも厄介なのに,人に感染する致死性のウイルスを持っていて,咬まれた人は確実に死んじゃうのです。このヘビが軍の研究室を逃げ出して,洞窟みたいなところに集まっていたところ,頻発する地震でびっくりしたのか洞窟から逃げ出し,街はヘビだらけになり,咬まれた人が続出してはバタバタ死んでいきます。

 主人公(ヒーロー)はその街の病院の医者で,ヒロインは彼とかつてつき合っていたことがある感染症の研究者(こういうヒーローとヒロインの関係,アメリカ映画に多いよね)。彼女の方は国防省に勤めています。この二人が,これはヘビが媒介する新型のウイルスだと気がついて,何とか手を打とうとするんだけど,軍事機密がばれることを恐れた軍司令部が秘密を守るために,住人ごとヘビとウイルスを抹殺してしまえと街を爆撃しようとします。ま,そんな話です。


 まず,感染症パニック映画なんだから,医学知識の部分は最低でももっともらしくしないといけないはずなのに,医学的におかしな部分がたくさんあります。

 例えば,「ガラガラヘビ自体はこのウイルスに感染しているのに生きているってことは,抗体を持っているってことだ。だからヘビを捕まえ来て血清を作れば病人が助けられるはずだ」とという説明。そこで主人公がヘビを捕まえて来るんだけど,採取するのは血液ではなくて牙から出る毒液です。毒液から抗体を抽出することは不可能だ思うんだけど・・・。

 そうやって作った抗体をウイルスに感染したヒロインに注射する場面。駆血帯も巻かずにいきなり肘正中静脈のあたりを刺します。多分これじゃ,血管内に入りません。しかも,死にかかっているというのに点滴一つ入れていません。まず,点滴のルートくらいは取っておこうね。

 そういえば,空気感染するという設定なんですが,なぜかマスクもせず手袋もせずに患者の処置をしている主人公の医者だけは感染しません。


 ヒロインの妹の自宅はヘビが潜んでいる様子が映し出されているのに,なぜか彼女が咬まれるのはシャワーを浴びているときです。どうやらヘビ君たちは彼女が裸になるのを待っていた模様です。彼女の息子の部屋にもヘビ君がウジャウジャ入ってきますが,なぜか彼の飼っているネコを一匹殺したあと,姿を消します。攻撃性が高いんだか低いんだか,よくわかりません。

 「こんな病院にいても病気が治らない。兄貴は俺が連れ出して隣町の病院につれていく」と患者を連れ出す兄思いの男が登場します。彼らの乗る車を軍のヘリが追跡し,機関銃なんかで撃たれて立木に衝突し走れなくなります。するとこの男,いきなり車のトランクを開けてロケットランチャーを取り出し,追ってくるヘリを撃墜します。どうやらアメリカでは,車のトランクにロケットランチャーを積んで走るのが普通みたいです。それにしても,軍のヘリを一発で撃墜する腕前,ただ者ではありません。アメリカ人,すごいです。

 証拠隠滅のために街の爆撃に飛び出すのはなんとステルス爆撃機。なぜ普通の爆撃機でなくステルスだったのか意味不明。しかも飛び立つのはたったの一機です。そのステルスに向かって主人公の医者がピストル型の信号弾みたいなのを撃ちます。あれって何だったのでしょうか?

 最後は結局,爆撃は回避され,ヘビが集まっているところを爆破して,めでたし,めでたし。全てのヘビ君たちが一カ所に固まっていてくれたおかげでやっつけられたわけですが,なぜ,ヘビ君たちが一箇所に集合していたのかは説明なし。ヘビ君たち,寂しがり屋だったので,みんなで集まっていたのかな?

(2006/07/20)

 

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