《パラサイト 殺人寄生虫》 (2004年,アメリカ)


 内容は邦題そのまんまの巨大寄生虫パニック映画。ちなみに原題は "Larva" で,こちらはカエルなどの幼生,あるいは昆虫の幼虫の意味です。

 アメリカのミズーリ州の田舎に赴任してきた獣医が,家畜の奇怪な死で呼ばれるところから始まります。次第に小動物とかも被害が拡がり,沼地にも変な芋虫みたいなのが発生します。

 この田舎町は酪農で食っている町なんですが,HTMとかいう会社が牛耳っているわけね。つまり,この会社が飼料を無償提供し,そのエサで育ててくれた牛を買い取る,というシステムです。だから,保安官も町の実力者もこの会社社長の言いなりです。そういう町で上記の新任獣医が異常に気付き,この会社で無料配布している飼料が原因で牛に元々いる寄生虫が変異したことを突き止め,皆に飼料の使用を止めるように説明するんだけど,もちろん,会社が儲けのためにそれを阻止するのはお約束。

 しかし,初めは普通のウジ虫くらいの大きさだった寄生虫が動物や人間の血液を吸ってはどんどん巨大化し,人間の体にとりついては腹を食い破って飛び出てきます。なぜか飛行能力も獲得してコウモリみたいに飛んだりします。
 おまけに,住民たちが毎日食べている牛肉は寄生虫で一杯で,それをレアで食べているもんだから住人たちにも犠牲者が出始めます。この化け物寄生虫を阻止しようとする獣医さんとその協力者,彼らに真実を知られてはまずいと邪魔する会社社長,町を飛び回る巨大寄生虫たち,さあ,彼らの運命やいかに・・・という映画です。


 映画会社は "NU Image" です。ご存じの方はおわかりの通り,この手の映画ばかり作っているところですが,大体は低予算B級ものばかりです。そのNUにしてはこの映画はかなり丁寧に作っている方でしょう。

 それと無駄なお色気シーンがない点(オッパイポロリはあるけど1カ所のみ)と,主人公とヒロインのラブシーンがない点は評価しておきましょう。

 それと,牛肉を顕微鏡で見たら寄生虫がウニョウニョしているシーンは,ある意味怖いです。これをみたら,しばらく牛のたたき,ユッケ,レアステーキを食べる気が起きなくなるはずです。「アメリカの牛で狂牛病発生」の恐ろしさを伝える映画になっています。

 と,褒める点はこの3点くらいかな? 残りの部分はやはりB級そのものでした。


 まず,「寄生虫が巨大化」と言っても,せいぜいカラスくらいの大きさで,それ以上は大きくなりません。形は「多角形のコウモリ」といった感じで,薄気味悪いとか,生理的におぞましい,という雰囲気はゼロ。ちなみに,最初はウジ虫,つまり節足動物の幼虫ですが,血液を吸って大きくなる過程で椎骨を獲得し,飛行能力と運動能力を獲得したんだってさ(・・・飛行といっても,せいぜい飛びかかってくる程度だけどね)。先生,説明にかなり無理がありまーす。

 それにしても,無脊椎動物がいきなり椎骨を持つのは凄い進化です。この会社の配合飼料はこれだけでノーベル賞級の発明といえましょう。

 最後は,飼料を溶かした水(?)を道路にまき散らしながら寄生虫たちを下水道におびき寄せ,一網打尽にする計画を立て,めでたしめでたしで終わりますが,あれで全滅するとは思えないんだけど・・・。それと,なぜ寄生虫たちが飼料に引き寄せられるのか,その理由も説明不十分。


 そういえば,最初の犠牲者が運ばれた病院ですが,病人の腹を食い破ってコウモリみたいなのが飛び出し,そこら中が血の海になり,悲鳴が上がっているというのに,医者も看護師も誰もやってきません。余程人手不足の病院と見えます。また,逃げた寄生虫を追って獣医たちが病院内を追うシーンでも,廊下には人影がありませんし,銃声がしても警備員も駆けつけてきません。大丈夫なんでしょうか,この病院。

 最後のシーンも意味ありげな感じで,もしかすると "Part 2" を作る気かも知れません。作らない方がいいと思うけど・・・。

 あっ,そういえばこの最初の犠牲者のレントゲン写真がシャウカステンに映されていましたが,胸部写真は左右反対でした。チェックが甘いぞ,映画監督!


 というわけで,この手の映画ならなんでも見てみたいマニアなら,是非見るべきです。それ以外のまともな映画ファンは近寄らないほうがよろしいかと・・・。

(2006/05/12)

 

 新しい創傷治療   なつい
キズとやけどのクリニック
 
 湿潤治療:医師リスト