『日本人の声』(鈴木松美,洋泉社y新書)
声紋分析の専門家が書いたものだが,声がでる仕組みに始まり,地域,言語による声の違い,時代による声の高さの変化を通して,ついには日本人の特性,日本の文化にまで話が及んじゃうんだけど,これがすごく面白い。
 昨年11月に公開されたビン・ラディンのテープから,これが本人の声であることの証明し,ページをめくるかすかな音から「声から内臓疾患が悪化している可能性はあるが,目は見えている」こと,モーター音と思われるノイズからそれが一般に市販されているカセットテープレコーダーである事,また,警報音が数回聞こえる事から赤外線感知機などで部屋の外を警備している事,そして感知機の配置まで読み取ってしまう。
 さらに美空ひばりの声の「1/fの周波数揺らぎ」がナット・キング・コールやパバロッティ(世界3大テノールの一人ですね)にも共通して見られるととか,エンヤの声の特性,元ちとせの歌に含まれる「こぶし」の特徴,宇多田ヒカルの声の「1/fの周波数揺らぎ」「1/fの振幅揺らぎ」が母親の藤圭子にも見られ,ヒカルの声に日本人にはまれな高周波成分が含まれていることなど,本をめくるのももどかしいくらいの面白さ。
 この著者は,犬言語翻訳機「バウリンガル」の開発にも協力しているが,犬のさまざまな鳴き声から「犬の共通語」を割り出す作業の様子も興味深く書かれている。

(2003/03/10)

 

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